December 11, 2021

EUR/USD: FEDECBを目前に

  • 先週のレビューのタイトルは、“雇用とインフレがすべてを決定”でした。現在の状況における中央銀行の金融政策を決定するのがこの2つのパラメーターです。米連邦準備制度理事会の次回会合は12月16日(木)に開催されますが、市場は政府が刺激策縮小の手続きを迅速におこなうために、おそらく利上げもあるうると予想しています。間違いなく、この決定には最近発表されたマクロ統計が影響します。

    12月9日に発表された米国の労働市場からのレポートは、全体的にかなり良い感じです。新規失業給付申請件数は、3,000件の増加が見込まれていましたが、4万3,000件減の18万5,000件でした。これは、1969年以来、半世紀以上ぶりの最低件数です。一方で、再申請件数は7万2,000件の減少ではなく、3万8,000件の増加で予想よりも悪い結果でした。しかし、両方の指標を合計すると、申請は5,000件減少しており、労働市場が回復傾向にあることが確認されました。さらに、求人件数は3万1,000件の増加で、アメリカではもはや労働不足の状態です。

    インフレ率に関しては、高ければ高いほどFRBの金融引き締めがさらに加速する可能性が高くなります。また、資産買い戻しを減らすだけでなく、基準金利が上がることで、さらなるドル高につながる可能もあります。

    アメリカのインフレ率は、40年ぶり以上の記録的な水準であり、12月10日に発表されたデーターから判断すると上昇は続いていきます。消費者物価指数(CPI) は、年ベースで10月の6.2%から11月の6.8% へ上昇です。コア指数(Core CPI)については、前年比4.9%で、先月よりも、さらに高くなっています(10月は4.6%)。そこで、市場は次回のFRBの会合でのこの数値における反応を待っているところです。この組織のトップであるジェローム・パウエル議長とメンバーは、積極的な金融規制を行う用意があることをまず投資家に説明しました。

    フィナンシャル・タイムズの専門家の約70%は、コロナウィルス以前の状態に金融政策が非常に順調に戻っており、金利は2023年末までに1.5% (現行 0.25%)になると予測しています。同時に、第1段階の利上げが2022年第1四半期であるとするのは調査対象のアナリストのわずか10%で、50%は第2四半期だと予測しています。また、1,200億ドル規模の量的緩和(QE)プログラムの縮小については、回答者の半数以上が来年の3月末までに実施されると見ています。

    次回の欧州中央銀行会合は、12月16日木曜日のFRB会合と同じ日に開催されます。FRBとは異なり、ECBが最初の一歩を踏み出すのは2023年になることは既に記述したとおりです。それまでは、ユーロ圏の国々での記録的な物価上昇を冷静に見守ることになるでしょう。しかし、それでもなお、欧州の政府が米国の例に従い加速させることを決定し、ハト派からタカ派へと変わる可能性もあるでしょう。これは、EUR/USD の強気筋には嬉しいサプライズになります。特に、イザベル・シュナーベル氏のような権威ある政府関係者からタカ派的な発言がECBの内部から聞こえ始めているため、否定することはできません。

    こちらのECBの運営理事会のメンバーは、先日、資産購入は市場のショックや不況時には重要な手段であるが、経済成長期にはQE の長所と短所のバランスが崩れ、金融の不安定さが高まると述べていました。なお、一般的にシュナーベル氏のこのような発言には拘束力はありませんが、市場は短期的とはいえ、ユーロの上昇に影響しました。

    FRBとECBの会合を控え、EUR/USDは2週連続でピボットポイント1.1300を中心とした動きです。 今回は、1.1316のこのライン付近で5日間を終了しました。専門家によると、75%はドル高、 20%がユーロ高を支持しています。残りの5% は中立の立場です。

    しかし、2週間の横ばい傾向によりD1のインジケーターは、混沌とし統一感がありません。トレンドインジケーターでは、60% が赤、40% が緑です。オシレーターについては、40% が下向き、30%が上向き、残りの30%が横向きです。 レジスタンスレベルは、圏内で1.1355、1.1380、1.1435-1.1465、および1525。直近のサポートレベルは、1.1300、次に1.1265、1.1225、1.1185、次に1.1075-1.1100。

    来週のイベントとしては、中央銀行の会合やその後の運営陣によるコメントに加え、12月15日(水)の米国の小売売上高の統計データーや12月16日(金)のドイツとユーロ圏の企業活動に関するデーターの発表が注目されます。なお、欧州理事会は、木曜日と金曜日に開催されます。

GBP/USD: FEDとイングランド銀行を目前に

  • 12月16日は、FRBとECBに加えてイングランド銀行の金融政策と金利決定があるので投資家は、この日を非常に注目しています。同日は、英国サービス部門におけるMarkitの企業活動指数の値が明らかになります。また、12月14日(火)は失業率のデーター、12月15日(水)にはイギリスの消費者市場におけるインフレ率が発表されます。

    コロナウィルスの新種株により新たな規制をイギリス政府が導入したことで先週はポンド安でした。統計によると、オミクロン株の感染者数は2‐3日ごとに倍増しています。このような推移の単純計算だと、月末までの感染者数が100万人を超える可能性があります (パンデミックがはじまって以来、1,060万人の国内感染者を記録しています)。この状況は投資家にとっての懸念材料であるため、景気刺激策の縮小計画におけるオミクロン株の影響についてイングランド銀行からの情報を知りたいところです。

    GBP/USD の強気筋にとっては、予想より悪かった弱いマクロ統計は不満です。また、ブレグジットの影響や北アイルランド議定書をめぐるEUと英国の大きな意見の相違でポンドは引き続き圧力を受けており、英国政府関係者によるとイギリスでは商品不足や供給の混乱に直面しているとのことです。

    その一方で、40%のアナリストは、このペアの上昇を期待しているままです。しかし、イングランド銀行が、また、利上げをしないようであれば、彼らの期待はロンドンの朝の霧のように消えてしまうでしょう。なお、規制をとる政府の立場からは、少なくとも2022年2月までは金利据え置きの可能性が高いです。アナリストの多く(60%) がこのような会合結果を予測しています。

    政府当局の決定を待って、GBP/USDは1週間前と同じように1.3265圏内での取引でした。しかし、これにも関わらず、D1のトレンドインジケーターの75%は、依然として弱気筋を支持しています。オシレーターでは、80%で、残りの 20% は上向きに転じています。

    強気筋の第一の課題は、1.3285-1.3300圏内の重要なレジスタンスを克服することです。ただ、これは、12月16日にイングランド銀行が利上げをすれば問題にはなりません。 次のレジスタンスは、1.3360、1.3410、1.3475、1.3515、1.3570、1.3610、1.3735、1.3835のレベル。直近のサポートは、1.3210-1.3220の圏内であり、続いて1.3195、1.3160、1.3135、1.3075のレベル。これを突破すれば、このペアは1.2960台まで下落する可能性があります。

USD/JPY: 円は防衛維持。これまでのところ維持

2021年12月13日-17日のFXと暗号通貨の予想1

  • EUR/USD が2週目を1.1300付近での推移 であるとすれば、USD/JPY も同様で113.30付近での推移に過ぎません。市場に戻ってきたリスク選好により株価指数は押し上げられましたが、日銀の鈴木人司審議委員の発言で示唆されたとおり日本通貨には大きな影響はありませんでした。同氏は、コロナウィルスの状況について、アメリカのFRBが量的緩和政策の縮小を始め、予想より早く利上げに踏み切るなら、日銀も長期金利を引き上げる可能性があるとコメントしています。鈴木人司氏によれば、コロナウイルスの不安が消えれば、すぐにでも利上げの可能性があり、これにより日本経済の回復が続くとのことです。12月17日(金)に開かれるの次回の会合での利上げ予想が得策でないことは明らかです。金利は、前回のマイナスレベルである-0.1%に据え置かれる可能性が高いでしょう。

    日銀の雨宮正佳副総裁は、投資家に楽観的な見方を示そうとしました。この国の経済は停滞していましたが、政府の計算によると、2022年にはオミクロン株に関わらず、回復するはずです。この政府のコメントは、12月8日に日本のGDP第3四半期の非常に弱いデーターが発表された後にありました。前回の0.8%減とプラス予想の0.4増に対し、0.9%の落ち込みでした。

    前回の予想では、多くの専門家がUSD/JPYは113.40-114.40の流れに戻るだろうと予想していました。 まさに、その通りでした。ドルは上昇を始め、12月8日には113.95の高値を付けましたが、その後は、反転、下値支持線の 113.40で終わりました。

    来週の見通しについては、専門家の80%が、米連邦準備制度理事会の影響により、おそらく、113.40-114.40 の上値抵抗線を突破するだろうと思っています。レジスタンスレベルは、113.70、114.00、114.40、114.70、115.00、115.50で、強気筋の長期目標は2016年12月の最高値118.65。 専門家の20% だけが、弱気のシナリオを支持です。直近のサポートレベルは、112.55、次に112.00と111.65。

    D1オシレーターでは、60%が未だに下向き、残りの 30%が中立にとどまっており、残りの10% が上向きです。トレンドインジケーターでは50対50で同じくらいです。

暗号通貨: イーサリアムに賭ける投資家たち

  • 12月4日の夜にビットコインが$42,000 を下回った理由は、まだ、明確ではありません。しかし、暗号通貨市場の下落が、株式市場の下落や投資家のリスク資産回避のために生じた事実には注目に値するでしょう。そのきっかけとなったのは、中国最大の不動産開発会社の恒大集団のニュースでした。メディアは、創業者が政府に召喚されたのは、この会社が破産の可能性があり、世界経済に深刻な問題を引き起こすかもしれないと報じました。

    ギャラクシーデジタルのアナリストは異論を唱えています。彼らの見解では、崩壊のきっかけは、新型コロナウィルスのオミクロン株の一般的な懸念と量的緩和政策縮小が早まる可能性に関するFRBのジェローム・パウエル議長の発言だとしています。

    それはともかくとして、11月10日に$68,780の史上高値をつけたビットコインは、5週連続の下落です。そして、専門家や投資家の楽観的な見方もその価値に伴い低くなっています。

    ビットワイズ・アセット・マネジメントの最高投資責任者であるマット・ホーガン氏は、ビットコインが2021年末までに高値更新や$100,000 にとどく可能性は今のところ非常に低いと考えています。“このレベルは2022年の目標になると思います” とブルームバーグのインタビューで語っていました。彼の意見では、上昇は機関投資家の強い支持によって動かされるものであり、このためには、 “基本的な原動力”が必要となります。

    有名な投資家であり経済学者でもあるルイス・ナベリア氏は、反対に“原動力”は下落に向かうと考えています。株式市場で大きく膨らんだバブルは、リスク資産の強い調整につながる可能性があり、その結果、ビットコインは$10,000に下がることもありえます。

    ナベリア氏は、ビットコインの深刻な下落も2020年の2月‐3月の同様な調整の後に起こったと述べています。同氏の見解では、今回の状況は、さらに悪く、ビットコインは最大で価格の80%を失う可能性もあります。そして、これは米国FRBの金融引き締めによって促される可能性があります。

    “$46,000 (200日移動平均線)を下回れば、下落の兆しです。ビットコインがダブルトップパターンを完成させるためには、$28,500に下がらなければならず、このような下落は、$10,000に下がる可能性を示しています。これは80%の減少であり、ビットコインはすでに似た動きを示しています” とこちらの投資家は、2017年の年末と比べて述べました。

    当時、$19,270へ目まぐるしく上昇した後、下落が長期化したことを思い出してください。これは、1年ほど続き、暗号通貨の冬と呼ばれ、その間、BTC/USD は、約85%を失いました。

    急激な下向きは、2017年だけでなく、2019年の後半でも起こりました。そして、もちろん、ごく最近の例では、今年の4月‐7月を思い出さずにはいられません:3カ月間でビットコインの価格が55% にまで落ち込みました。

    この下落の波は、投機家のポケットと財布に激しく直撃し、暗号通貨市場の完全なる最終崩壊の可能性について、再度、話題になりました。99bitcoins の計算では、今年は、まだ、終わっておらず、ビットコインには既に41回目の死が予期されています。このコインの反対派は、2017年と2018年だけは、さらに活発でした: 資産の早すぎる死は、この時、124回と93回報告されました。

    現在の死亡記事は、エコノミストのビル・ブレイン氏によるものです。ブレイン氏は、ビットコインを貨幣としての機能を果しないネズミ講と呼び、暗号通貨はインフレを加速させると主張しています。さらに、多くのほかの暗号通貨批判者とは異なり、ブレイン氏はブロックチェーン技術にも疑問を呈しています: “時々、私は暗号化の根底にあるブロックチェーン、数学、計算論理の天才を装った無数のごみを調べています... 10%は魅力的で 90%は完全に無意味です” と記述しています。

    著名なアナリストであり、トレーダーのトン・ワイス氏はビル・ブレイン氏やルイス・ナベリア氏と異なり、暗号通貨を埋葬するには、あまりにも早すぎるとしています。同氏の見解では、ビットコインが現在の暴落の後で年内に史上最高値更新をする可能性が高いとしています。強気派が主流になるには、コインが$53,500以上で足場固めをする必要があります。 “V字の戻りのようになると思います。$50,000以下でビットコインを買うチャンスはもうないでしょう” とワイス氏は考えています。

    ネガティブな状況下でも下落が続くようであれば、確実に長期保有者の関心を集めることになるでしょう。引き戻しがある度に、投資家は新たな価格上昇を見込んで下落時に購入するので、暗号通貨市場は無秩序な崩壊での下落ができないのです。

    そのため、先週、大口のビットコイン保有者( 100 から10 ,000 BTC) は、既に67,000 コインを購入しています。もちろん、これは多くはありません。したがって、強気トレンドについては、まだ、話す必要はありません。それどころか、BTC/USDを200日移動平均線が通過する$46,000-48,000 圏内に押し下げようとする弱気筋が有利のままです。

    このレビューの執筆時点(12月10日から12月11日の夜)で、暗号市場の時価総額は2兆2,150億ドル(11月10日の史上高値と比較してマイナス25%)です。The Crypto Fear & Greed Indexでは、24ポイントで非常に恐怖 (Extreme Fear)の範囲内のままです。しかし、ビットコインドミナンス指数は、 39.88%に落ち込み、さらに、多くの"領域" を市場シェアを占める競争相手のイーサリアムに引き渡しています (ちなみに、年初の時点では、BTCが71.86%、ETHが10.63%)。

    ETH/USD チャートは、イーサリアムが12月4日の下落後、ビットコインよりも大幅に回復していることを明確に示しています。また、 BTC/USD がこの5カ月間で55%強上昇したのであれば、 ETH/USD は130%以上の上昇でした。

    この数か月間の上昇の主な誘因は、ネットワーク取引のコイン燃焼と生産よりも燃焼速度が上回っているということです。イーサリアムネットワークでは、既にロンドンのハードフォークが実施されて以来、100万枚以上のコインを焼失しています。

    暗号通貨ファンドのブロックタワーキャピタルのマネージャーであるラウール・ライ氏は、イーサリアムブロックチェーンの多様性が開発者と投資家の両方を引き付ける主な要因になると考えています。同氏は、イーサリアムがグローバルな金融システムを再開することに成功した場合、将来、その市場はビットコインの市場よりもはるかに大きくなると確信しています。そして、こちらの暗号通貨のミリオネアは、それが早ければ2022年半ばになるかもしれないと予測しています。ETH は、資本の観点でのビットコインになるでしょう。

    アメリカの投資銀行JPモルガンのアナリストは4月に同様の発言をしています。彼らの見解では、ビットコインは消費者向け商品です。貴金属と競合し、価値の貯蔵庫とみなされることもありますが、長期的には暗号通貨経済の柱であるイーサリアムに道を譲ることになるでしょう。

    ビットワイズ・アセット・マネジメントのディレクターであるマット・ホーガン氏は、2022年の予想でも"イーサリアムを基本とした爆発的な動き" としています。“投資家はイーサリアムやソラナ、ポリゴンに注目するでしょう。彼らは、暗号通貨がビットコインだけではないことを知っています” とホーガン氏は述べています。

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