February 26, 2022

EUR/USD: 戦争は血を流すだけでなく、ビジネスでも

  • 欧州通貨の動きは今やウクライナの状況で決定されます。この間は、あらゆるマクロ統計に関して忘れることができます。ロシアによる隣国への侵攻で誰がどれだけ稼ぎ、誰がどれだけ損をしたかについては、最終的に状況が落ち着いた時にだけ明らかになることです。そして、すぐには落ち着くことがなさそうです。

    ロシアによるウクライナへの侵攻については、数週間前から議論されていました。ただ、世界は、この国の2つの地域、東部のドネツクとルハンシクだけだと推測していました。しかし、ロシアは2月24日(木)早朝、首都キエフを含むこの国のすべての主要都市にミサイルと爆弾による攻撃をはじめ、その後、地上軍による攻勢を開始しました。

    誰も(ロシアのプーチン大統領と側近以外)は、このようなことは想定していませんでした。市場は大きなショックを受け、リスク資産のみならず、欧州通貨からも資金流失が押し寄せました。

    主にバルト海沿岸のヨーロッパ諸国の多くは、ウクライナに続いてロシアによる領土侵攻があるのではないかと恐れています。しかし、このような恐怖がないにしろ、既に、ヨーロッパ経済に深刻なダメージを与えました。

    ユーロ圏は隣接していることから、アメリカよりもロシアのエネルギーにはるかに大きく依存しています。EUへのガス供給の約40%、石油供給の30%はロシアが占めています。また、主要なガスのパイプラインの一つは、戦闘がおこなわれているウクライナ領域を通過しています。このような状況から、天然ガスの価格は直ぐに驚異的に高騰し、アメリカでの同様の価格の8倍にもなりました。

    西ヨーロッパにとって、これは深刻な不況あるいはGDPの成長が非常に低く、インフレ率が極めて高いスタグフレーションに陥る前兆以外の何ものでもないことは明らかで既に5.1%の記録的なレベルです。

    EUがウクライナ支援のためにロシアに対して行った経済制裁は、ネガティブな見通しを強めています。現在の産業の輸出入に対する大きな制限や金融部門の締め付けです。このような状況で、ECBが金融緩和策を縮小して、利上げをするとは考えにくいです。米国連邦準備制度理事会に関しては、計画を断念する可能性は低いでしょう。ただ、株式市場を支えるために、少なくとも今後については、実施を多少遅らせる可能性はありますが。

    EUR/USD は、2月10日に1.1494で取引されていました。東ヨーロッパでの戦闘により、たった2週間の後、1.1106 の底値をつけ、 388 ポイントを失いました。

    市場は、2月25日金曜日の週終わりには大きなショックから少し回復しました。ナポレオン・ボナパルトの時から知られている古典的な原理、“血が流れている間に買え” が作用したのです。株価指数は上昇し、欧州通貨を支えました。調整の後は、1.1270で今週を終えました。

    このレビューの執筆時点の2月25日現在は、ウクライナでのロシア軍が、どのように攻撃を終了させるのか不明です。紛争が終了しない場合、EUとアメリカがロシアに対してどのような新たな制裁措置を取るかもわかりません。したがって、来週の正確な予想ができるのはプーチン大統領だけです。現時点では専門家の意見と指標を記録することしかできません。

    来週のアナリスト予想は、とてもわかりづらくなっています: 65% は、2021年11月中旬以降のピボットポイントである1.1300圏内を示しています。残りの35% は強気で、このペアが、また、1.1100のサポートを試みることを排除していません。D1のトレンドインジケーターでは90%が赤、10% が緑です。オシレーターでは、80%が赤、20%が緑です。

    現在のボラティリティの高まりを考えると、直近のレジスタンスは1.1285-1.1390と幅広くなります。強気筋がそこで止まらない場合、次のターゲットは1月13日と2月10日の高値1.1485、次に1.1525、1.1570、1.1615。サポート圏内は、1.1185-1.1200 と1.1085-1.1120。その後は、2020年の夏のレベルが続きますが、現在のような不安定な政治情勢では注目する意味がほとんどありません。しかし、弱気筋が少なくても象徴的な1.1000台を目指すことが想定されます。

    来週の経済指標カレンダーについては、かなりあります。ウクライナ情勢とEUとアメリカの制裁措置が主な焦点になることは明らかです。

    また、3月1日(火)にはドイツの消費者市場、米国の製造業景況感指数(ISM)のデータが発表予定です。3月2日(水)にはユーロ圏の消費者市場に関する統計、アメリカではADPによる民間部門の雇用に関するレポートがあります。連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長のスピーチが同日にあります。米国サービス業のISM景況感指数は木曜日にわかります。また、ユーロ圏の小売売上高のデーターに加え、毎月第1金曜日恒例の非農業部門の新規就業者件数(NFP)などの米労働市場からの一部統計発表が3月4日にあります。

GBP/USD: イギリスもヨーロッパ

  • イギリスは欧州連合から抜けましたがヨーロッパの一部には変わりありません。つまり、EUやユーロ圏について言われていることは、イギリスにも関連します。唯一の違いは数字です。つまり、今週のGBP/USD の最大のボラティリティは、366ポイント(1.3272から1.3638へ下落)、調整後に1.3410に下落で取引を終えました。これで、1.3600の調整は忘れることができます。

    EUと同様にイギリスもいち早くロシアに制裁を加え、首相はウクライナでの軍事攻撃を非難する非常に強い怒りの声明を発表しました。このような措置の結果、ロシアだけでなく、イギリス経済もかなり深刻な状況になるでしょう。ブリティッシュ・ペトロリアムは、ロシア最大の外資企業の一つであり、ロスネフチの株主であると言えば十分かも知れません。また、イギリスの銀行は、ロシアの大手企業や個人と非常に密接です。また、両国ともお互いの領域での国営エアラインの飛行を禁止しています。

    GBP/USD のアナリスト予想は次のとおり: 40%が上向き、 40%が下向き、残りの20% が横ばい傾向の支持です。D1に関しては、ほとんどのインジケーターが赤です。トレンドインジケーターでは100%、オシレーターでは85%です。 15%だけがこのペアの上方修正に反応しました。サポートは、1.3400、1.3365、1.3275-1.3315 、その後、1.3200 で2021年12月8日安値1.3160。レジスタンスレベルは、1.3485、1.3600、1.3645、1.3700-1.3740、1.3830、1.3900。

    2月の結果に続いて、今週はイギリス経済関連のマクロ統計のかなり大きなパッケージです。製造業購買担当者景況指数(PMI)は3月1日(火)、サービス部門の購買担当者景気指数が木曜日に、建設部門が金曜日に公表されます。3月2日に公表されるイギリスの年間予算も注目でしょう。

USD/JPY: ヨーロッパでない日本

  • 日本はウクライナ紛争に特に影響されなかった国です。これには納得です: キエフと東京は8205キロメートル離れています。もちろん、日本はロシアに対する制裁に加担していますが、USD/JPY の動きには、ほとんど影響を与えませんでした。むしろ、この国の経済がかなり依存しているエネルギー源の価格上昇で影響を受けました。その結果、2月24日(木)に114.40水準で反発、115.75の高値をつけ、取引終了の鐘は、やや低いレベルでの115.52で鳴りました。今週の結果を要約すると、このペアの相場の動きは、かなり、小さく: わずか 57 ポイント (115.03-115.60)に過ぎなかったことがわかります。

    来週のアナリスト予想は次のとおり: 55% が上昇、35% が下落、10% が横ばい傾向の支持です。D1オシレーターでは、65% が緑、20% が赤、15%がニュートラルグレー。 トレンドインジケーターでは、65%が上向き、 35%が反対の立場です。 直近のレジスタンスゾーンは115.70。強気筋の主な目標は、116.34の高値更新で2017年1月以来の上昇です。 サポートレベルは、115.00、114.80、114.15、113.75、113.45、113.20、112.55、112.70。

    来週の日本では、主な経済イベントがありません。

暗号資産: ビットコインとイーサリアムは株より信頼できると証明される

2022年2月28日‐3月4日のFXと暗号資産の予想1

  • 暗号資産市場に圧力をかけている主な材料は、先週の米中央銀行の利上げ予想でした。ロシアのウクライナ侵攻の推測は2番目の材料でした。それが今では、推測から事実になり前面に出てきます。

    これに伴う政治情勢の悪化がリスク資産からの投資家の流れを増加させ、株価指数とデジタル資産相場をさらに下落させました。ビットコインとS&P500の90日相関は、2020年10月以来の高値水準になりました。これは、Arcane Researchの分析リポートに記載されています。対照的にバーチャルゴールドとリアルゴールドの統計的な関係は、 ビットコインと違い金が低リスク資産なのでマイナスとなりました。Arcane Researchは、中央集権的な取引所でのビットコインのスポット取引の量が2020年12月上旬レベルに下がっていることも記載しています。

    ビットコインは、インフレに対する保険と呼ばれ、ドルと対立するのが一般的です。しかし、先週のチャートを見ると、ビットコインは市場でのリスク資産の保険的役割が高くなっています: 株価はウクライナ紛争勃発以来、ビットコインやイーサリアムなどの主要な暗号資産に比べ瞬く間に下落しました。S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックの株価指数は、ロケット弾の攻撃が開始された2月24日に一ヵ月前の安値を下回りました。ロシアIMOEX指数について言うまででもありません: わずか数時間で50%近くを失い、その後、取引停止になりました。これらと違い、 BTC/USDETH/USDは、1月24日の安値を上回る勇気あるポジションを保持しました。

    もちろん、これは喜ぶ理由にはなりません。米連邦準備制度理事会の基準金利の利上げや政治情勢の緊張は今後もビットコイン投資家の悲観論を煽り続けるため、不採算のコインが売却される可能性は増加する一方になるでしょう。これがGlassnode のアナリストによる結論です。弱気傾向は、オンチェーンインジケーターで確認されています:アクティブなビットコインアドレスの数は下限境界まで減少しています。これは、資産に対する需要が減少していることを示しています。ビットコイン投資家の利益のシェアは65.8% から76.7%になります。

    短期投機家(コイン保有期間155日未満)は256万BTCを購入しています。平均取得コストは$47,200。 含み損は約17%で価格は$39.000前後。現在、同等の需要がない中で売り圧力の源になっています。Glassnodeは、価格が上昇した場合、売り圧力が増え、損失がないうちに、あるいは、最小限の利益で市場から去ろうとする動きがあるという見方をしています。

    暗号資産取引所のHuobi のデュ・ジュンCEOによれば、過去の価格サイクルはビットコインの新たな強気相場が2024年後半から2025年前半までない可能性を示しています。同氏によると、ビットコインの価格サイクルは半減期に密接に関係: アルゴリズムに組み込まれた周期的なブロック報酬の半減期は、およそ4年に一度です。

    前回の半減期は、2020年5月で、その1年後にはビットコインの相場は$68,000超えの史上最高値を記録しました。2016年の半減期後にも同様の値動きが見られました: ビットコインは2017年12月に記録的なレベルに達しました。

    その後、どちらの場合もビットコインの価格は大幅に下落しました。

    この流れから、HuobiのCEO は “現在、弱気市場の初期段階”であると考えており、ビットコインの強気トレンドが来るのは、次の半減期である2024年以降だと予想しています。それと同時に、同氏は“紛争などの政治的課題やコロナウィルスのパンデミックなどの市場が影響を受ける多くの材料があり、現実には、的確に見通すことは難しい”とも付け加えています。

    ビジネスリアリティ番組のシャークタンクのスターであるケビン・オリアリー氏も自身の予想を発表しました。同氏は、政府が問題解決に至っていないため、多くの機関投資家はビットコインに投資できないでいると言及しました。

    オリアリー氏は、$100,000, $200,000, $300,000のビットコインの価格で投機したい人は、機関投資家が規制基準に従って暗号資産を購入する機会を得た場合のみに可能になることを理解するべきであると指摘しています。同氏は、自らが"政府系ファンドや年金基金 " の仕事をしているからこそ、自信をもってこのことが言えると述べています。なお、現在、ビットコインのまわりは非常に話題になっていますが、これらの1つのトークンも持っていません。また、この資産に投資する計画すら、まだ、ありません。

    オリアリー氏によれば、ビットコインをコインとしてではなく、ソフトウェアとして考えた方がはるかによいとのことです。上述の機関はマイクロソフトやグーグルの株を保有しているので、ソフトウェアとして暗号資産をみなしやすいと言及しています。暗号資産部門がすべての要件を満たし始めた時点に、金融機関は資本の1%から3%をビットコインに投資することができるようになります。これは今後2-3 年のうちに可能になるでしょう。

    このようなあまり喜べない背景に対して、イーサリアムの共同創業者であるヴィタリック・ブテリン氏のブルームバーグのインタビューは楽観的な見方の頂点とも言えます。まず、同氏は “暗号資産の冬” が到来したかどうか、まだ、確信がもてないとのことです。 

    ブテリン氏は事実、人々が“暗号資産産業にどっぷり浸かっている” と弱気市場の期間を歓迎しているとインタビューで強調しました。これにより、弱気プロジェクトを取り除き、"誇大広告"のレベルも低くすることができます。多くの弱く有害なプロジェクトが消え、よく考えられたビジネスモデルと緊密なチームをもつ信頼できる重要なプロジェクトだけが残るのが冬であると開発者は考えています。

    短期的に見るとArcane Researchアナリストは、"2021 年の夏が弱気市場の底" であるため、$28,000-$30,000 圏内に強力なサポートがあるとした見方をしています。重要なレジスタンスレベルとして$40,000を指しています。

    このレビューの執筆時点(2月25日、金曜日夕方)、BTC/USD は$39,000で取引されています。Crypto Fear and Greed インデックスは1週間で30ポイントから27ポイントまで下がり、恐怖のゾーンにやや入り込んでいる一方で、暗号資産市場の時価総額は7日前の1兆815億ドルから1兆755億ドルに減少しています。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: これらの資料は、金融市場への投資推奨でもガイドラインでもなく、情報提供のみを目的としています。金融市場での取引には、リスクがあるため投資資金を全て失う可能性があります。


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