June 1, 2022

EUR/USD: FRB"つまらない" FOMC議事録 

  • DXYドルインデックスは6週の上昇で5月13日(金)には数年ぶりの高値 105.05 となりました。前回のこのような上昇は20年前です。しかし、その後、反落、既にちょうど2週間前の101.50 水準にまで下げています。一般的な傾向でEUR/USD も5 月 13 日から上昇を続け、5 月 27 日には 1.0764 の高値となりました。この間ユーロ‐はドルを415ポイント押しました。なお、これはすべて欧州通貨側ではなく、アメリカ通貨側によるものです。特に米連邦準備制度理事会です。

    5月25日(水)に発表された前回の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録は驚かされることは何もありませんでした。既に知られている事だけが記載されていました。議事録の内容は政府が単に今後の2回の会合でそれぞれリファインナンス金利を0.5% 引き上げるということでした。FRBの幹部も6月1日から現在9兆ドルある資産ポートフォリオの削減を満場一致で承認しました。FOMCの議事録に想定外がなかったことでドルは打撃を受けましたが株価は助かりました: S&P500株価指数、ダウ・ジョーンズ、ナスダックは急上昇しました。

    先週のユーロ圏のマクロ経済指標カレンダーでは、ほとんど何もありませんでした。米国の統計については、むしろ多方面からありました。今週の新規失業保険申請件数は21万件に減少し、予想の21万5千件を下回りました。耐久財受注は0.4%増で経済成長の主な推進力である消費活動がさらに伸びていることを示しています。しかし、その一方で、米国GDPの第1四半期はマイナス1.5%に下方修正され、これは前回予想のマイナス1.3%、予想のマイナス1.4%をともに下回るものでした。

    中期的な要因では、米中央銀行の積極的な政策がドル側に働きかけ続けています。ジェローム・パウエル議長はインフレを抑制と景気過熱防止のために利上げの意向について繰り返し認めています。米国の年間インフレ率(CPI)は4月に8.3%となり、目標の2%の4倍以上です。同時に、アナリストによれば、記録的なエネルギー価格の上昇が今後インフレ率をさらに押し上げます。そして、これが徐々にFRBによるさらなる金融引き締め策へと向かわせることになるかも知れません。

    米国通貨も資産保護としての立場で支持され続けています。ロシアとウクライナの武力衝突の激化が予想される中、欧州のスタグフレーションの脅威を懸念する投資家の需要は引き続き大きくなるでしょう。中国と台湾の緊張感の高まりも安全資産への切望となっています。

    EUR/USD は先週、1.0701で終わりました。このレビュー執筆時の5月27日の夕方、アナリストの意見は次のとおり: 30% のアナリストが下向きへ逆戻り、50%のアナリストが上昇の継続、残りの20%が中立の立場。 D1インジケーターについては統一感がありません。オシレーターは80%が緑、 10% が赤、10%がニュートラルグレーです。なお、"グリーン" の4分の1が買われ過ぎ圏内です。トレンドインジケーターは同じ比率: 50% が上昇支持、50%­が下落支持。直近のレジスタンスは1.0750-1.0800。これに成功すれば、強気筋は1.0900-1.0945を突破しようとしながら、1.1000 と1.1050に向かい、その後、1.1120-1.1137圏内のレジスタンスに直面するでしょう。 弱気筋については、第一の課題が1.0640のサポートを突破、そして、1.0480-1.0500、その後、5月13日の安値1.0350の更新です。成功すれば、2017年の安値1.0340の嵐となり、20年前のサポートを下回るだけとなります。

    今週は、ドイツ(5月30日、6月1日)とEU(5月31日、6月3日)の消費者市場に関する多くの統計が発表されます。6月1日の水曜日発表の米国製造業景気指数ISM も注目です。同日に、米国の非農業部門雇用に関するADPレポートの発表があり、労働市場からは失業率や非農業部門新規雇用者数(NFP)など重要な指標が10月8日金曜日にあります。

GBP/USD: イギリス政府の"つまらなくない" 決定

  • ポンド高とGBP/USDの上昇の主な要因はユーロと同じく、総体的に米国通貨が安くなったことでした。DXYドルインデックスのこの2週間の下落は2021年12月以来の最悪の連続した下落となりました。しかし、ユーロと異なり、英国通貨は2つ以上の要因で助けられました。まず一つは、強い労働市場のデーターです。二つ目は4月に40年ぶりの高水準となったインフレ率が投資家にイングランド銀行のさらなる金融引き締めと利上げの期待をもたらしたことです。

    先週、イギリスのボリス・ジョンソン首相は同国の経済懸念を表明しました。首相は5月27日のブルームバーグTV のインタビューで"今後は困難な時期が予想されます"また、"1970年代の賃金価格スパイラルへ戻ることを目のあたりにしたくありません"と述べていました。

    この前日、イギリス政府は、FRBの"つまらない" 議事録とは対照的で市場は非常に驚かされました。イギリスのリシ・スナック財務大臣は物価上昇のため低所得世帯に£650 を一時的に支払うことを発表しました。この財政救済の総額は150億ポンドになります。なお、スナック財務大臣は、この救済措置がインフレに対して与える影響を “最小限の影響” であると主張していましたが、多くのアナリストはこの投入が今年と来年の経済予測に修正を与えるかもしれないとした見方です。イギリス経済のインフレ圧力を抑えるために、政府がよりタカ派的な姿勢を決定する可能性があります。

    その一方で、今のところ、大西洋の反対側よりイギリス経済の見通しは非常に低いままです。そして、これは多くのアナリストにポンドがGBP/USD と伴った中期的に安定した成長を成し遂げることができるかという疑念を抱かせる原因となっています。特に、北アイルランド議定書をめぐる緊張が高まればなおさらです。この議定書がイギリス、北アイルランド、欧州連合の間での特定の貿易、関税、移民問題を規制するものであることを思い出してください。

    先週の取引終了の鐘は1.2628で鳴りました。 アナリストの55% がさらなる上昇、35%が下落、残りの10% が横ばいの見方です。

    D1 のインジケーターの状況はEUR/USDに似ています。トレンドインジケーターでは、50%がこのペアの上昇、残りの同数が下落を示しています。 オシレーターでは、若干違ってきます: 10% だけが下向き、ほかの10% は中立、80% は上向きですが、この4分の1は既に買われ過ぎ圏内です。サポートは、1.2600-1.2620、1.2475-1.2500、1.2400、1.2370、1.2300、1.2200、そして、 1.2154-1.2164と 1.2075。このペアの強力なピボットポイントは心理的重要レベルの1.2000。さらに上昇するには、1.2675のレジスタンスを克服しなければならず、その後は1.2700-1.2750、 1.2800-1.2835 、1.2975-1.3000が控えています。

    イギリス経済に関する来週の予定では、6月1日に予定されている5月の製造業景況指数(PMI)が注目です。6月2日(木)と3日(金)はイギリスでは銀行の休業日になります。

USD/JPY: 日本は独自の方法。しかし、どちらでしょうか?

  • 日本の岸田文雄総理大臣は"円の最近の動きには様々な要因"があり、政府の最優先課題がさまざまな政策措置を通じて家計や企業への圧力を軽減することであると付け加えました。

    "最近の円の動き"の言葉に隠されているものには興味深いものがあります。2021年1月以降、USD/JPYは 102.58 から131.34へ急騰、 日本通貨は2,876ポイント安なのでしょうか? つまり、これはただの “動き”のではなく、国民がうめき声をあげている本当の崩壊なのです。

    国内のインフレ率は上昇を続けており、やがて国民不満へとつながります。消費者物価の上昇は8カ月連続となっています。4月には前年同月比で2.5%上昇、2014年10月以来の高い上昇率です。ダウ・ジョーンズで注目のとおり、2008年9月以来の初めて2.0%の大台となりましたが、これは消費税の影響が考慮されていません。しかし、これに対して国の指導者たちは、どう反応しているのでしょうか?

    米国と英国では、金融引き締め策で対応していますが、日本は逆です。前述の岸田文雄総理大臣によれば、政府の構造改革、財政政策、日銀の金融緩和によってインフレ目標の達成を目指すとのことです(円の金利が長期マイナス水準で、マイナス0.1%であることを思い出しましょう)。

    その一方、黒田東彦日銀総裁はエネルギー価格の急落がなければ、日本の消費者物価指数 (コアCPI) は今後12ヵ月の間に2% 近くに推移すると説明しています。

    同時に、両高官の発言を分析すると、経済情勢に対するある種の不一致が明らかになります。前述の岸田文雄総理大臣が賃上げを含むインフレ圧力の緩和が政府の優先課題であると述べている一方で、黒田東彦日銀総裁は、こうした国民への賃上げを含むインフレ圧力を減少させることが着実にインフレを上昇させる可能性があると述べています。つまり、政府と日銀がどのあたりで折り合いに達するのか、国内の経済政策が今後数ヶ月でどのようになるのかは明らかではないままです。

    外国人投資家をはじめとする多くの投資家は、政府は金融緩和政策の断言にかかわらず、利上げを余儀なくさせられると予測しています。そして、この予測は、明らかにDXYの下落を伴った円の支持となります:先週、 USD/JPY は127.11で終わりました。

    現時点では、アナリストの60% が弱気側でこのペアのさらなる下落を予想しており、15% が上昇への返り咲き、残りの25% が横ばいの見方です。

    D1のインジケーターに関しての表示は次のとおりです。オシレーターでは、60% が赤、そのうちそのうち3分の1が売られすぎを示しており、10%が緑、30%がニュートラルグレーです。トレンドインジケーターでは50% 対 50%の比率です。直近のサポートは126.35、126.00と125.00、123.65-124.05が控えています。強気筋の目標は 127.55を超えての上昇であり、128.00、128.60、129.40-129.60、130.00、130.50を克服して、5月9日の高値131.34の更新です。最終目標は、2002年1月1日の高値135.19 のようです。

    今週は、日本経済状況に関する重要な情報の発表はなさそうです。

暗号資産: 状況は良くないが、まだ希望はある

2022年5月30日‐6月3日のFXと暗号資産の予想1

  • ニュースが2つあります: 良いニュースと悪いニュース。良いニュースからいきましょう。ARK Invest のキャサリン・ウッドCEOなどの多くの専門家は文字通り、ビットコインがS&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックの株価指数に従うことを止め、 独自の道を進む “脱却”を望んでいます。 ついに、この2週間に似たような状況が見られました。株式市場のボラティリティにもかかわらず、5月13日から5月27日に強気筋はBTC/USD が$28,620のサポートを下回ることを防ぎ、$30,000 ゾーンを守り抜いたのです。良いニュースはこれで終了。次に悪いニュースです。より正確に言うなら、悪いニュースの方がかなり多くなります。

    暗号資産のNo. 1 が8週連続、史上はじめてマイナス圏内での取引です。この推移での重要な役割は、5月にこの20年間のBTCが株価指数との直接的相関関係を破ったことです。

    ゴールドマン・サックスのアナリストは、FRBの積極的な政策が米国景気の後退を招く恐れがあると指摘しました。このような予想は暗号資産を含むリスク資産から機関投資家を逃避させることになります。

    全体的な取引は減少しています。この2週間の暗号資産投資ファンドからの資金流出額は、2021年7月以来の最高レベルとなります。ファンド運用の総額は380億ドルに減少しています。取引数も下落です。暗号資産取引所のコインの総数は250万BTCに減少でビットコインがコールドウォレットに流れています。

    このような状況に対して、ビットコインについてのネガティブな意見がさらに多くなっています。ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は5月22日に暗号資産には安定したセキュリティがないと発言しました。翌日、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁も加わり、ビットコインには本質的な価値がなく、決済手段には適さないとのことです。

    Guggenheim Partnersの投資ディレクターであるスコット・マイナード氏は中央銀行の総裁たちと同意見です。“通貨は価値を貯蔵すべきでものあり、つまり、交換手段や価値の尺度でもあります。ここには、このようなものがなく、 [暗号資産]には一つの根拠もありません” と同氏は結論付けてドットコムバブルと暗号資産市場の状況を比較しました。同氏によると、ほとんどのデジタル資産は “ガラクタ”ですが、イーサリアムは長期化する暗号資産の冬を乗り切れることでしょう。 “$30,000を破れば、 $8,000が最終的な安値です。つまり、特にFRBの厳しい姿勢により、まだ、下落余地があります” とスコット・マイナード氏は予測しています。

    ギャラクシーデジタルのマイク・ノボクラッツCEO も金融市場全体の見通しは厳しいと見ています。同氏は市場高値からの大幅下落でも、アルトコインはその価値の半分以上を失うリスクがあるとしています。しかし、弱気筋傾向のマクロ経済の状況にもかかわらず、ギャラクシーデジタルの代表は楽観的のままで将来的には暗号市場は回復すると信じています。ギャラクシーデジタルの代表によると、“暗号資産コミュニティには回復力があり、市場は早期参入のチャンスを提供できるままであると見ています”。

    確かにソーシャルネットワークを調べてみると、機関投資家とは異なり、ユーザーは将来的には、より良くなると信頼を寄せていることがわかります。そのため、分析会社のSantiment がソーシャルネットワークの資産に関するネガティブとポジティブのコメントを計算した加重インジケーターのデーターを公開しました。この情報を基に、暗号資産コミュニティのムードが決定されます。この測定値では、既にビットコインはグローバルな底値であり、数週間で上昇する可能性があります。"今こそ、ビットコインが急上昇するチャンスです” とSantiment のアナリストは信じています。

    最も尊敬されているソーシャルメディアアナリストの一人、通称クレディブルも全般的に市場が弱気ムードにもかかわらず、 BTC が上昇しそうであると考えています。クレディブルはテクニカル分析に波動で群衆の心理を基にしたレートの推移を予測するエリオット波動理論を使用しています。この理論では強気市場のサイクルが第2波と第4波の調整と第1、第3、第5波の上昇波を伴った5つの波を通過することが仮定されています。なお、それぞれの大きな波には、さらに小さな5つの波があります。

    アナリストによると、ビットコインは現在2019年にはじまった大きな5波の真ん中です。さらに、BTCは現在小さな第5波のままで、資産を史上高値である$100,000台に押し上げる可能性があります。 “私のアプローチが議論の的になることは知っています" とクレディブルは記述しています。“多くが、2024年の次の半減期まで史上最高値を更新しないと予想していますが、私はもっと早く、数ヶ月以内だと予測しています”。

    ツイッターで30万人以上のフォロワーのいるRekt Capitalは一時的であるもののビットコインが200週移動平均線を28%下回る可能性があると警告しています。同氏は、このSMAが常に最新のサポートの役割を担っていると説明しました。ビットコインは過去にこのラインを下回りましたが、下回っていた期間は非常に短いものでした。週足は未だにこのSMAを下回っていませんが、陰線は 28%にも及んでいました。今、再びこのようなことがあれば暗号資産のレートは$15,500水準になるでしょう。200-週移動平均線は現在$22,000圏内にあります。

    ラガーという別の暗号資産アナリストによると、 “BTCの価格が下落して過去の弱気サイクルのように200週移動平均線から反発すれば、よい兆候になります。最大で68% の下落にとどまるでしょう” 。しかし、同氏の計算では、このような下落は以前84% にもなり、"現状では、84% の下落は$11,000へとつながります" 。そうは言っても、2014年と2018年のBTCの弱気サイクルの長さを考えると、底を打つまでに6ヵ月から8ヵ月かかります。

    ラガーは短期的にはビットコインの価格は米国の株式市場の上昇や下落に左右されつづけると考えています: “BTC は現在、若干上向き傾向ですが、株式市場が堅調となるまでは上昇しないでしょう”。

    グラスノードによると、BTCのオープンプットオプションとコールオプションの比率が50%から70%に増加しており、投資家が継続する下落推移からポジションを守りたい動きが増えていることを示しています。

    今年の7月に満期を迎えるコールオプションの建玉(OI)は$40,000前後に集中しています。しかし、参加者は $25,000、 $20,000 、 $15,000へ下落した時に利益をもたらす プットオプションを非常に好んでいます。言い換えれば、年中まで市場はヘッジリスクに焦点をおくか/もしくは、さらなる価格下落に思いを巡らします。

    楽観主義者は期間の長いものに多くなります。年末満期を迎えるほとんどのオープンポジションは$70,000から $100,000になります。プットオプションでは、最大建玉が$25,000 から$30,000に集中しており、つまり、現在の価格帯になります。

    今日は、ここで良いニュースと悪いニュースのレビューを終わりにします。このレビュー執筆時の5月27日(金)夕方では暗号資産の時価総額が1兆1940億ドル(1週間前は1兆2480億ドル)であることだけに注目しておきます。ビットコインのFear & Greed インデックスでは、非常に恐怖のところで定着しており、12ポイント付近です (5月17日に8ポイントまで下落し、2020年3月28日以来の最低水準になったことを思い出しましょう)。 BTC/USD はもみ合いの状況で奮闘しており、$28,800で取引されています。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: これらの内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場での取引には、リスクが伴うため投資資金すべてを失う可能性もあります


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