March 11, 2023

EUR/USD: 米労働市場がUSDを止める

  • 先週はジェローム・パウエル議長がドルを刺激しました。もちろん、FRB議長は市場が次のFOMC(連邦公開市場委員会)で25ベーシスポイント(bps)の利上げ予想であることを知っています。しかし、FRBはインフレ抑制のため、もう一歩踏み出し3月22日に一気に50bpの引き上げについても検討から外していません。しかも、ピーク時は5.00-5.25% と以前から予想されていました。現在、議長と理事会メンバーは最高で5.50%も否定していません(コメルツ銀行のストラテジストによれば、6.00%への引き上げの可能性もあります)。

    なお、FRB議長は、衝撃を抑えるために市場にあらかじめ準備させることを決めました。3月7日(火)の議長の米議会証言は非常にタカ派であったため、DXYドル指数は2023年の高値更新で 105.86まで上昇、EUR/USD は170 ポイント以上下げて、週安値は1.0523でした。3月に50bpの利上げの可能性は70%に上がりました(市場関係者の見通しでは、一週間前が23-30%、一ヵ月前は僅か9%でした)。

    しかし、ドルは上げ止まり、EUR/USD は週半ばで上昇しました。米労働市場からのデータが下落要因でした。3月9日(木)に発表された失業保険新規申請件数は予想の195,000や先月の190,000に対して211,000でした。この指標は1月前半以来、初めて200,000を超え、2022年12月末以来の最高水準となりました。さらに、短期投機家は3月10日(金)の2月の米国労働市場に関する発表前にドルを利確しました。ドルは下落の一途をたどったので、正しい結果でした。非農業部門雇用者数(NFP) は311,000で予想の205,000を上回りましたが、1月の503,000をかなり下回ったことが示されました。失業率が3.6% (予想3.4% 、1月3.4%)に上昇したことに伴い、これらのデータは米国経済の冷え込みを示したため、FOMCメンバーのタカ派的な意気込みを冷ます可能性があります。これはEUR/USDの推移からでも明らかで、発表後の僅か数時間で1.0700の高値 に上昇しました。

    先週のユーロ圏おけるマクロデータは中立のようです。つまり、ヨーロッパ経済の原動力であるドイツの消費者物価指数(CPI)の水準は変わらず、年率8.7%予想と完全に一致しています。

    先週の終値は1.0638でした。週末のドル安にもかかわらず、アナリストの80% は今後のドル高予想で残りの20%が中立です。ユーロ高予想は誰もいませんでした。 D1のオシレーター系では、25%が赤、同じく25% が緑、50%がグレーです。トレンド系では、80% が買い推奨、20%が売り推奨です。 直近のサポートは、1.0600-1.0620、その後は、1.5000-1.0530、1.0440、1.0375-1.0400、1.0300、 1.0220-1.0255です。強気筋は、1.0650、1.0700、1.0740-1.0760、1.0800、 1.0865、1.0930、1.0985-1.1030がレジスタンスになるでしょう。

    来週は、経済統計が目白押しです。しかも、FRBとECBの決定が非常に重要です。つまり、米国の消費者物価指数 (CPI) が3月14日(火)に明らかになります。米国の小売売上高と米国の生産者物価指数 (PPI)については翌日の発表です。欧州中央銀行では3月16日(木)に2.50% から3.00%の50 bp の利上げが予想されているユーロ金利の決定があります。もちろん、その後にある金融政策に関するECB総裁の発言も市場関係者にはかなり重要となります。そして、最後に、ユーロ圏のCPIが取引週の最後の3月17日に明らかになります。

GBP/USD: ボラティリティは大きいが、結果はゼロ

2023年3月13日‐17日のFXと暗号資産の予想1

  • 310ポイントのボラティリティにもかかわらず、 GBP/USDのこの5日間の取引結果はゼロで終了しました。このペアの週終値は1.1920-1.2145の横ばい推移の中央値に戻った1.2025でした。 この推移の理由は、EUR/USDと同じ、米国での出来事に大きく反応したからです。イギリスでは3月10日(金)に1月のGDPと鉱工業生産のデータの発表まで、重要なマクロ統計はありませんでした。

    まず、前者の指標では予想の+0.1%に対して-0.5%から +0.3%の増加、後者は、反対に下落を示しました。1月のイギリスの製造業生産は予想の-0.1%に対して0.0%から -0.4%に減少、鉱工業生産は 前月比-0.3%に対して-0.2%で12月の予想では +0.3% でした。すなわち、GDPデータはポンドの強気筋を楽観的にさせましたが、鉱工業生産のデータではやや下げることになりました。

    コメルツ銀行のエコノミストによると、イングランド銀行(英銀)がポンドを支える見込みは低いとされています。イングランド銀行(英銀)のアンドリュー・ベイリー総裁が3月1日(水)の発言で、課題は深い霧の中でイングランド銀行の金融政策の見通しは最終決定に至らず、政府は市場を脅かすことなく、今後、数ヶ月は柔軟に対応すべきであると述べていたことを振り返ってください。イギリス政府がFRBやECBと異なり、慎重な姿勢を貫く限り、ポンドに下落圧力が見込まれます。イングランド銀行は高いインフレを積極的に抑えるというよりは補っていく可能性が高いため、GBP/USD は今後も下落していくことになるでしょう。

    専門家の直近の中央値予想では、EUR/USD予想と似ています: アナリストの75%はドル高でGBP/USDの下落、残りの25%は予想を控えています。D1のオシレーター系のパワーバランスは次のとおりです: 35% が緑、別の35%が赤、30% がグレーです。トレンド系では、明らかに緑が多くなっています: 75% 対25%。このペアのサポートは、1.1985-1.2000、1.1960、 1.1900-1.1925、1.1840, 1.1800、1.1720 、1.1600。上昇すれば、1.2055、1.2075-1.2085、1.2145、1.2185-1.2210、1.2270、1.2335、1.2390-1.2400、1.2430-1.2450、1.2510、 1.2575-1.2610、1.2700、1.2750 、1.2940でレジスタンスに直面することになります。

    イギリスのマクロ統計発表については、3月14日(火)にイギリスの失業率や賃金に関するデーター発表が予定されています。

USD/JPY: ドルですべてが決まる

  • 先週末の3月10日(金)に黒田東彦総裁の最後の日本銀行(日銀)会合がありました。予想どおり: 日本の中央銀行は超金融刺激策のパラメーターを変更せずに、金利は再び前回と同じマイナス水準-0.1%のままです。

    黒田東彦総裁は最後の記者会見で金融緩和のプラス効果がマイナス効果を大きく上回ったと中央銀行の最後の会合についてのコメントで述べました。また、政府は、"必要であれば、金融緩和政策を維持することをためらわない" 、"企業の賃上げを促すためには金融緩和を続けることが重要である" と言及しました。日銀の植田和男新総裁は、前任者の見解に従うと見込まれます。少なくても、新総裁から急な進展は期待すべきではありません。

    現時点では、ほかの通貨と同様でドルが決め手となっています。米労働市場のデータ発表後、ドルは世界的な最安値更新、米国株式指数はプラスに転じました。USD/JPY は3月8日(水)に137.90 での取引、3月10日に134.10 の底値をつけ、135.05で調整後に週を終えました。

    当面の見通しでは、アナリストの75%が現時点でのこのペアの下落を支持、25%が反対の動きとなっています。 D1のオシレーター系は、25%が上向き、 40% が反対の下向き、残りの35%が横向きです。トレンド系は、40%が上向き、60%が下向きです。直近のサポートは134.75、続いて、134.00-134.35、133.60、132.80-133.20、131.85-132.00、131.25、 130.50、 129.70-130.00です。レジスタンスは、135.15、136.00-136.30、136.70-137.10、137.50、139.00-139.35、140.60、143.75です。

    来週の予定では、3月15日(水)に前回の日銀会合の報告書の公表が上げられます。しかし、この報告書によって市場関係者に深刻な影響を与えることはないでしょう。

暗号資産:本当に悪い。さらに、悪くなる?

  • ビットコインは悪いニュースが続き下落の一途をたどっています。3月10日だけでも2023年の記録的な9400万ドルのポジションの決済がありました。Santimentのアナリストが暗号資産に対する非常にマイナス感情を記録しています。関係者や投資家の暗いムードは以下の影響によるものです:

    1. 暗号資産のシルバーゲート銀行の閉鎖。3月8日のニューヨーク証券取引所の取引終了後、この銀行を運営している米国のシルバーゲート・キャピタルは事業縮小と業務の自主閉鎖を発表しました。シルバーゲートの膨大な顧客数を考慮すると、昨年と同じようなドミノ効果を引き起こす可能性があります。

    2. 米国政府が10億ドルのビットコインを売却する可能性です。

    3. FRBの金融引き締め策の可能性が浮上し、株式や暗号資産などリスク資産相場が崩れたことです。

    4. 暗号資産の継続的な取り締まりです。3月9日、ニューヨーク州の司法当局は米国内での証券仲介業未登録としてKuCoin(クーコイン)を提訴しました。レティシア・ジェームズ司法長官やSECのゲイリー・ゲンスラー委員長もアルトコインを証券としてみなしている事実があります。

    5. 最後に、添え物として米国のバイデン大統領の政権が提案した暗号資産企業の租税対策禁止とマイナーに30%の電気税を課すことです。租税対策とは、含み損のある企業がまず、暗号資産を売却してすぐに再購入することで税金を減らす金融取引です。電気税の30%の課税は アメリカのマイナーだけでなく、業界全体に大きな打撃を与えることになります。

    私たちの見方では、1 週間で悪いニュースがとても多いです。抜き差しならないこの状況に明るさを少し足してみましょう。Credible Crypto のアナリストによれば、現状では全体のビットコインの約73% は、打撃に慣れていて最も厳しい暗号資産の霜に耐えることができる経験豊富なホルダーに集中しています。Santiment はこのような全体的なマイナスが以前の目を見張るような価格上昇に戻ったことを思い起こさせるといいます。

    Eight Globalの マイケル・ヴァン・デ・ポッペCEO は、ビットコインにとって今後の数週間が重要だと注目しています。 “時価総額が8億6千万ドルまでに下落、市場全体を引きずり込む可能性” を同氏は警告しています。同氏の予想では、ビットコインの価格は$19,700の下落が見込まれます。つい最近、最悪の場合、ビットコインは $18,000が底値、もしくは、それを下回り、その後は年内に$40,000になると同氏が述べていたことを思い出してみましょう。

    ヘッジファンドの Zulauf コンサルティングの設立者であるフェリックス・ズラウフ氏は、ビットコインが春の終わりには明らかな強気相場に突入すると示唆しています。同氏の予想では、急激な上昇トレンドで$100,000 になることも否定していません。弱気推移にもかかわらず、Credible Crypto のアナリストもビットコインの中期的な見通しについては楽観的な見方をしています。こちらのアナリストもビットコインが年内に史上高値を更新する見込みがあるというフェリックス・ズラウフ氏と同意見です。しかし、継続的な強気トレンドになる前にいくつかの障害があるというのが両社のアナリストたちの意見です (すでに上述の5 つを挙げています)。

    BitMEX の前CEOで共同創設者のアーサー・ヘイズ氏は世界経済がオイル危機に陥った時にビットコインの上昇が始まると考えています。同氏の見解では、炭化水素の価格急騰がビットコインをはじめとしたデジタル資産の上昇につながる状況となります。

    ヘイズ氏の理論は次のとおりです: 世界的な政治情勢の緊張感を背景に石油輸出国の減産が予想され、エネルギー資源の需要が増加します。この状況により、経済大国である米国は自国で石油産出量を増やしていかなければなりません。FRBはエネルギー部門事業を刺激するために金融緩和が必要となります。政府が金利を下げ始めると同時に、資金は暗号資産を含むリスク資産に戻ることになるでしょう。また、BitMEX の前代表はBTCの供給制限も米ドルが下落するので上昇につながると振り返りました。

    ここで、分析プラットフォームのWooBullのデータを参照してみましょう。これによれば、ビットコインのインフレ率は、現在、米ドルよりも3倍以上も低くなっています。このため、BTCは資産の減少や不安定な経済を可能な限り回避することが可能です。統計では、ビットコインのインフレ率が2009年に始まってから着実に低下しており、3月4日時点では1.79% です。一方で、USDの同じ指標では、2023年に6.4%になり、BTCよりも3.57 倍上昇しています。

    ビットコインのインフレ率が低下は、コインのマイニング速度の低下とマイナーの報酬を半分にする半減期によるものです。アナリストもインフレ率が上昇する米ドルとは対象的に政治情勢や経済リスクの多くを回避できるBTCの分散化でこの指標は低いままだといいます。これは、主にマネーサプライの過剰、需要減少、生産減少によるものです。

    一方、レビュー執筆時(3月10日23:00 NordFXサーバー時間)、BTC/USD は $20,070 圏内で取引されています (米国の雇用レポートがやや上昇させました)。今週は暗号資産市場の心理的に重要なレベルである1兆ドルを下回り、0.937兆ドル(1週間前は1.024兆ドル)となっています。Crypto Fear & Greed インデックスは、一週間で50 から34ポイント下がり、中立から恐怖圏内に移動しました。

    有名な暗号資産アナリストでYouTube チャンネルDataDash の司会者、ニコラス・メルテン氏の予想もまた、恐怖かもしれません。同氏は、イーサリアムの新たな大暴落を否定していません。こちらのアナリストによれば、予想で以前の弱気相場を参考にすると、ETH は市場高値から90%以上の下落、つまり数百ドルになる可能性を含んでいます。“ETH/USD の道のりは長いでしょう“。67%しか記録から離れていません”とメルテン氏は述べています。 “また、弱気相場が見られるようなら、92 パーセントや94 パーセントの調整で、ETHの価格は数百ドルまで下落するでしょう。 この差は大きく、$870 からだいたい$500になります”。

    いつも、レビューの最後は楽観的な記事で終わるようにしています。ただ、暗号資産の春ではなく、長い冬だったら、どうでしょうか? しかし、暗号資産のカレンダーが通常のカレンダーと直接関連することに期待しましょう。今は春が始まった月で、その後は、あたたかい夏の日に続くことになるでしょう。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。


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