November 13, 2021

EUR/USD: インフレ率の上昇に等しく米ドル上昇

  • 米国のすべてのマクロ経済統計は、予測よりも悪い結果となりました。しかし、それにもかかわらず、米国通貨は上昇しています。主要6通貨のバスケットを算出するDXY ドルインデックスは、11月12日(金)に95.26を記録し、この2週間で約2%上昇しました。すべてが、その逆になるべきはずなのにです。この奇妙な現象の理由は何でしょう?これには、急速なインフレ率の上昇が原因であることがわかりました。

    労働省の発表によると、10月の米国のCPIは6.2%上昇し、30年以上ぶりの記録となりました。インフレ率が上昇したのは1990年11月だけです。9月と比較すると、物価上昇率は0.8%に加速しており、コア・インフレ(エネルギーと食品価格を除く)も4.6%に加速で、この30年の間でも高い水準です。そして、明らかに、ここで終わりそうもありません。米国のインフレーションは、住宅、光熱費、エネルギー、自動車の価格などを背景に、今後も上昇を続けると予想されています。生活費の変化に反映した消費者物価指数は、5ヶ月連続で5%を超えました。そして、これはFRBのジェローム・パウエル議長が断言した高いインフレ率が一時的であるということを疑わせるものです。ただ、投資家だけでなく、FRB自体も疑念を抱いています。

    古典派経済学によれば、このような状況でのドルは大幅に下落するはずでした。しかし、コロナウィルスのパンデミックスで全てがひっくり返りました。政府は、2020年春に金融刺激策(QE)プログラムを実施することを余儀なくされ、市場は低金利資金と低金利で溢れました。

    最終的に、FRBは今月から資産購入プログラムの1,200億ドルを徐々に縮小し始めていることを報告しました。ジェローム・パウエル議長によれば、労働市場が完全には回復していないため、利上げは時期早々であり、予想では2022年半ばまでには実現されるとしています。それまで、FRBは辛抱強く待つことになるでしょう。

    しかし、多くの投資家はこのような急速に進むインフレにFEDは、直ぐに我慢できなくなり、2022年夏前に利上げを余儀なくされるだろうと感じました。

    シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のデリバティブを分析したところ、6月よりも前に利上げが行われる可能性が64%あることがわかりました。これまで市場は、政府が来年少なくとも1回は利上げをすると確信していました。現在では、2回の可能性が63%から80%に、3回の可能性が29%から49%に高まっています。そして、一部のせっかちな人たちは、年内にもアメリカの中央銀行が利上げ方向に一歩踏み出すと信じています。

    このような期待感から、ドルは引き続き上昇しました。そして、さらにドルを支えたのは、米国債の利回りの上昇でした。インフレ率の上昇は、国債に支払われるクーポンレートの購買力を下げます。インフレの3分の1程度しかカバーできない利回り債券に投資する人は少ないです。

    11月9日に発表された米国の労働市場に関するデーターに関しては、インフレに苦しむ市場は、事実上、これを無視しました。ただ、これは予想よりも、はるかに悪い結果でした。失業保険の再請求件数は5万件減少すると予想されていましたが、5万9千件の増加でした。

    ドルの上昇で、EUR/USD は2020年7月の安値に押されました。11月12日(金)には1.1432まで下落し、1.1446で今週を終えました。ドルは、今年に入ってからユーロに対して900ポイント近くも上昇しています。そして、現在のような状況が続けは、ここで止まることはないでしょう。

    D1のインジケーターは、下向きでこの予想を裏付けています。 トレンドインジケーターでは、100%です。 オシレーターについても同じことが言えますが、オシレーターの4分の1は売られ過ぎゾーンです。

    調整が入った場合、40% の専門家がこのペアの上昇を支持しています。60%は、さらなる下落支持です。直近のサポートレベルは1.1435、次に1.1350と1.1250。レジスタンスレベルは、1.1525、1.1575、1.1615、1.1665、1.1715です。

    今後のマクロ経済統計の発表予定は、11月16日(火)にユーロ圏の第3四半期GDP速報値があります。また、同じ日に発表される米国の小売売上高のデーターは、インフレがアメリカの消費者市場に与える影響を評価する上で非常に重要なものになります。そして、11月19日(金)に予定されているラガルドECB総裁のスピーチで一週間を閉じます。

GBP/USD: さらなるドルの勝利

2021年11月15‐19日のFXと暗号通貨の予想1

  • 米国のインフレに後押しされたドルがイギリス通貨に圧力をかけ続けており、その結果、GBP/USD は、6カ月間下落しています。先週も安値更新で、2016年以来の長期的なサポート/レジスタンス圏内に落ち着きました。今週の安値は、1.3352で定着し、 1.3421で取引終了の鐘が鳴りました。

    11月11日(木)に発表されたマクロ統計も、ポンドの助けにはなりませんでした。また、第3四半期のGDPは予想を上回ったようですが、英国経済の成長率は23.6%から6.6%へと3.5倍以上下がり、工業生産の成長率は4.0%から2.9%(予想では3.4% )へ低下しました。このような急落は、とりわけ、ユーロ圏やアメリカの堅調で類似の指標を背景に目を見張るものであり、非常に残念で、投資家に恐怖さえ与えました。

    低いGDPの成長率と高いインフレ率の組み合わせによる景気後退とスタグフレーションの脅威は、未だにブレグジットの影響から圧力を受けているイギリスにとっては危険です。イングランド銀行の専門家予測では、年間のインフレ率は2022年4月までに5%程度まで加速し、2022年末までには遅くとも目標水準の2%まで低下するとされています。

    これは、とても高い水準であり、11月4日のイングランド銀行の会合直前に、アンドリュー・ベイリー総裁は、このような指標があれば、予定よりも早く利上げを行う必要があるかもしれないと述べました。市場の反応は、先週のドル高の時と同じでした。市場は、政府が11月に主要金利の引き上げを予想していましたが... 外れました。イングランド銀行は利上げせず、GBP/USD は、さらに下落しました。

    イギリスの失業率データーの発表が11月16日(火)にあり、翌日には10月の消費者物価指数データがーの発表があります。当然ですが、労働市場やインフレ率の状況は、市場の感情やポンドの動向に影響を与えます。一方、アナリストの意見は、ほぼ均等に分かれています: 35%は、弱気筋の勝利を予想、35%は強気筋を支持、そして、残りの30%が中立の立場です。

    D1のオシレーターは、85%が赤、15%が売られすぎを示しています。トレンドインジケーターでは、赤が100%です。 サポートレベルは1.3350、1.3200、弱気筋のターゲットは1.3135。 レジスタンスベルと強気筋のターゲットは、1.3510、1.3570、1.3610、1.3735、1.3835。

USD/JPY: 国債が直撃

  • 先週の予想では、ほとんどのアナリストがUSD/JPY は、113.40-114.40での上値抵抗線に戻ることを予測していました。当初、この予測は、実現しないと思われました: このペアは、修正しながら推移し、112.70を付けました。しかし、その後は、反転し114.30に急騰、専門家の予測通りでした。今週は、113.90で終了しました。

    反転した理由は、“インフレ” によるドル高は、もちろんのこと、USD/JPと長年密接に関連している米国債利回りの急上昇です。言い換えれば、ダイレクトに相関関係に依存しています。

    日本銀行のソフトな金融政策とイールドカーブに対するコントロールの広がりにより、円安とこのペアの上昇は続くと考えられます。もちろん、金利に関する米連邦準備制度理事会の決定も大きく左右します。

    多くの専門家は、USD/JPY が114.00 に上昇したことを2021年1月に始まった強気傾向に戻ったと考えています。しかし、3月10日から9月27日までのチャートを見ると、強力な推進力がなければ、横ばい推移が数ヶ月間引き続く可能性があるとわかります。ユーロやポンドと異なり、円は安全通貨のため、長期の金融市場の嵐にも持ちこたえることができます。

    現在、55% のアナリストは、このペアの上昇は続き、114.40の上値抵抗線を突破、115.00-116.00範囲に上昇するここ数年来の高値更新を予想しています。反対の意見のアナリストは、35%で、残り10% は、USD/JPY がしばらく、113.40-114.40 の流れにとどまると予想しています。

    D1のオシレーターは、80%が上向き、10%が下向き、10%がグレーの中立です。トレンドインジケーターは、100% が緑です。レジスタンスレベルは、114.40、114.70、115.50で、長期目標は2016年12月の高値118.65。直近のサポートレベルは、113.80、次に113.40、112.70、112.00、111.65。

    11月15日(月)は、来週のカレンダーにあります。この日発表される日本の第3四半期GDPは、予想では+0.5%から-0.2%に減少すると見られています。

暗号通貨: ビットコインの下落と上昇はどこ?

  • ビットコインは、11月10日(水)に史上最高値を更新し、$668,917 になりました。イーサリアムも記録更新で、$4,856に上昇しました。暗号通貨市場の最高時価総額は、2兆9720億ドルに達しました。

    The Crypto Fear & Greed インデックスでは、73ポイントから84ポイントに上昇し、非常に強欲(Extreme Greed )のゾーンで、ビットコインが非常に買われ過ぎているため、調整が必要であることを示しています。その後: 記録更新で、BTC/USD は、$63,000-64,000 圏内に戻りました。

    ビットコインに対する個人投資家感情は、"非常に強気"です。これは、分析リソースのSantimentがオフチェーンBTCインジケーターを参照に報告しています。 しかし、この状況は、"ビットコインのクジラ"の間では明確ではありません。一方、残高が100-10,000 BTCあるアドレスのコイン総数が、この10日間で60,000 BTC 減少しています。専門家によると、これは大きなクジラが小さなクジラからコインを買い、ビットコインを急落から守っている可能性を示しています。

    11月10日に行われた修正は、約8.5%だけでした。"だけ"というのは、ビットコインの典型的なボラティリティが、それほどでもないからです。現在の状況は、投資家のこのコインに対する"理由のない自信 " であり、これは、より大きな価格修正につながる可能性があります。

    クラーケン暗号通貨取引所のスペシャリストは、これに同意しています。彼らが発表したレビューによれば、11月は歴史的に高いボラティリティであり、その結果、一ヵ月のリターンが最も高い月となっています。しかし、現在のビットコインの急騰が$70,000あたりの強いレジスタンスでストップすれば、最大で20%の調整が予想され、BTC/USD は、$55,000まで下落する可能性があります。

    暗号通貨アナリストのAltsoin Sherpaも、同じ数字を言っています。“$ 55,000の短期的な下落の可能性があります” と彼は記述しています。“しかし、私は、小さな動きを気にしません。私は、ビットコインを貯めています。上向きになれば、急騰するでしょう"。

    また、別の著名な専門家であるウィリー・ウー氏は、$50,000 から $60,000圏内がサポートとしては非常に信頼できるとした結論を出しました。ビットコインは、1兆ドルの資本を確保しており、これを下回ることをイメージするのは難しいと、・ウー氏は分析会社Glassnode のデーターを参照して述べています。

    ビットコインはインフレに対するヘッジです。米国では現在、記録的な物価高であり、これが暗号通貨の好まれる大きな根拠です。量的緩和政策の縮小と金利上昇にもかかわらず、ドルの急激な切り下げが投資家を脅かし、株や暗号通貨市場への代替的資産に投資せざるを得なくなります。その結果、BTCや株価は史上高値を何度も更新していきます。そして、ビットコインの予測は、米連邦準備制度理事会が金融政策の大幅な引き締めに移行するまで、グリーンゾーンで推移するでしょう。

    ビットコインの現在の強気サイクルのトップは、$96,000の価格かも知れません。この結論は、クラーケン暗号通貨取引所のスペシャリストによるものです。リサーチによれば、現在の第4四半期は、+220%の利回りを示した2017年の第4四半期(相関0.88)に最も似た動きを持っています。総じて、暗号通貨取引所のアナリストは、ビットコインは$300,000あたりの高値になると予想しています。

    PlanBとして有名な暗号通貨アナリストは、ビットコインは2022年の初めに 700%上昇する可能性があると述べました。“今のチェーンに沿ったシグナルを見ると、あえて言えば、ほぼ半年後に価格が頂点になります。これは、来年の第1四半期の終わりでしょう –と 彼は考えています - 私は、年末のビットコインの価格は$ 100,000になると思いますが、その後、コインはモデルX(S2FX)まで上昇し続け、$ 288,000やそれ以上のレベルになる可能性があります。来年の第1と第2四半期には、$400,000 - 500,000 まで上昇しても不思議ではありません。"

    多くの楽観的に考える人と異なり、暗号通貨のストラテジストであるベンジャミン・コーウェン氏は、逆に、ビットコインの爆発的な上昇で支持者を喜ばせることはないと考えています。“ $28,000から $29,000あたりでの始まりが、2021年のスタートでした­” とコーウェン氏は記述しています。“今まで、私たちは何を見てきたのでしょう?あまり、ないですよね?年末までに、もっと大きな結果を得られるのでしょうか? たぶんですが、2021年はビットコインのパラボリックが急に上がるとは思えません"。

    下限と上限の年間の幅は、大きく見えるかも知れませんが、コーエン氏はビットコインの保有者がこのような利益にスリルを味わうとは思えないと指摘しています: “2021年にビットコインに起こったことを見てください: 特別なことはありません。収益性は約130%でしたが、ほとんどの保有者は130%のためにソファから立ち上がることもないでしょう。" “範囲内の頂点に戻ってきたので、2021年1月から3月までは多少の満足感を味わうことがあるかも知れません”とストラテジストは理由を続けます。 - 急激な上昇の可能性もありますが、データを見る限り、このサイクルは少なくとも2022年までは続くはずです。2021を振り返れば、ほとんどは、長期的な蓄えの年でした。”

    ビットコインの主な競争相手であるイーサリアムは、著しく高い収益性を示し、2021年には6.7倍に上昇しました。そして、今年はまだ終わっていません。暗号通貨ファンドBlockTower Capital のRahul Raiマネージャーは、イーサリアムのブロックチェーンの汎用性が開発者と投資家の両方を惹きつける主な要因になると考えています。同氏は、イーサリアムが世界の金融システムの再スタートに成功すれば、将来的にその市場はビットコインよりもはるかに大きくなると確信しています。暗号通貨のミリオネアは、早ければ2022年半ばになるかもしれないと予測しています。資本金が数兆ドルに達する可能性のある最初の暗号通貨になるでしょう。

    アメリカの投資銀行JPモルガンのアナリストは4月に同様の趣旨を発表しています。アナリストの見解では、ビットコインは消費者向けの商品です。貴金属と競合し、価値の貯蔵庫とみなされることもありますが、長期的には暗号通貨経済の柱である道をイーサリアムに譲ることになるでしょう。

    そして、レビューの最後にデュケイン・キャピタルの創設者であり、ウォール街で最も成功したマネージャーの一人である億万長者、スタンリー・ドラッケンミラー氏の警告です。どんな資産の価値もいつ崩壊するかわからないと彼は注意を呼び掛けています。同氏によれば、"暗号通貨、ミーム株、アート、ワイン、証券...地球上のすべての資産にバブルが存在する" と言います。そして、ご存じのとおり、バブルは時々、崩壊します。

    “世界のあらゆる出来事がある程度の証券に影響を及ぼします” "私は現在の世界をイメージして、次に地震のような変化があるかどうか、18ヵ月後の世界はどうなっているかを考えます。そして、事実なら、どのような有価証券の価値が今とは全く異なるものになるのか?多くの投資家は、現在だけに注目していると思います。短期的には、いいかもしれませんが、長期的には、最悪です” とドラッケンミラー氏は説明しています。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: これらの資料は、金融市場への投資推奨でもガイドラインでもなく、情報提供のみを目的としています。金融市場での取引には、リスクがあるため投資資金を全て失う可能性があります。


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