May 15, 2022

EUR/USD: 1.0000への道

2022年5月16日-20日のFXと暗号資産の予想1

  • ドルが上昇を続ける一方で、EUR/USDは下落を続けています。5月12日(木)にDXYドルインデックスは 104.9 にゆっくりと近づきました。前回ここまで上昇したのは20年前です。このペアは2016年12月-2017年1月の安値付近の1.0349で安値をつけました。もう少しで、DXYに続いて20年前の取引付近になります。そして、1:1のパリティは、もう、目と鼻の先です。

    ドル高理由は、相変わらず二つの要因: 労働市場の回復とインフレ率の上昇です。FRBによる金融引き締めのペース決定はこのことが要因となります。

    予想によると、米国の失業保険件数はやや上昇が見られます。しかし、5月12日(木)に発表された実際のデーターでは労働市場の状況が予想よりもはるかに良いことを示していました。初回申請件数は増えましたが、予想の3Kではなく、1Kまででした。再給付申請件数は3Kではなく、44Kも減少でした。

    一日早い5月11日はインフレデーターが明らかになりました。米国のコアCPIは4月に0.3%上昇で0.6%となりました。この伸び率は3月の1.2%増を大きく下回っています。しかし、これがこの国のインフレ率がピークに達して減少に向かうことを意味しているわけではありません。全く違っています。オイル価格は1バレル$100を超えたままで商品価格、輸送費、家計支出を押し上げています。新車の価格は4月に1.1%上昇(3月はわずか0.2%)である一方で、航空運賃は1か月で18.6%上昇、60年間で最大の上げ幅です。これに加えて、コロナウィルスの感染拡大による一連の中国のロックダウンが高い割合で物流や商品取引に課題をもたらしているため、インフレ率の低下にもならないでしょう。

    これらの要因が重なったことで米国の連邦準備制度理事会の金融引き締め計画:バランスシートの縮小や利上げの変更は考えづらくなります。ジェローム・パウエル議長に続いて、FOMC委員であるクリーブランド連邦準備銀行のロレッタ・メスタ総裁やニューヨーク連邦準備銀行のジョン・ウィリアムズ総裁は、次回の二つの会合でそれぞれフェデラル・ファンド金利の0.5%引き上げ、2.0%にする方針を支持しました。

    大西洋の反対側では利上げ開始の賛成派は少数のままです。ECB理事会の委員の多くがユーロ圏のインフレ率の上昇はウクライナ侵略に対するロシアへの制裁でエネルギー価格が上昇したことによる一時的な状態であると考えています。

    そのため、米国のFRBの明らかなタカ派的立場とECBの不透明なハト派的立場の大きな違いがEUR/USD をここ数年来の安値にまで押し下げました。

    現時点のアナリストの意見は次のように分かれています: 70%のアナリストがドル高の継続、残りの30%はこのペアの上昇調整。なお、週間から月次予想になると、このペアの上昇の見方は80%になります。D1のインジケーターの100%は、下落後、ドル側です。しかし、オシレーターの20%は売られ過ぎ圏内です。直近のレジスタンスは、1.0420のゾーンでEUR/USD の強気筋の次のターゲットは1.0480-1.0580に戻ることです。成功すれば、1.0640 のレジスタンスを突破して1.0750-1.0800に上昇しようとします。弱気筋については、 5月13日の1.0350の安値更新が最重要課題で、その後は2017 の安値1.0340の嵐となり、それ以下は20年前のサポートだけになります。

    来週の予定に関しては、5月17日(火)の米国の小売売上高に関するデーターに注目してください。ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁やFRBのジェローム・パウエル議長の発言が同じ日にあります。5月18日(水)はユーロ圏の消費者物価指数、5月19日(木)に米国の製造業活動や労働市場の状況に関するデーターが公表されます。

GBP/USD: GBPの利上げは可能だが不透明

  • 前述のとおり、DXYドルインデックスは20年ぶりの高値更新です。アナリストによると、この4週間で5.1% 上昇しました。同時に、GBP/USD は7.4%の下落、平均を2.3%上回りました。しかし、英国通貨にとってすべてがそれほど悪いわけではありません。

    イングランド銀行は、5月5日の会合で、インフレ率が現在の7.0%(30年ぶりの高水準)から10.25%に上昇すると予測しました。なお、政府は今年度のGDP成長率予想(+3.75%)を据え置いていますが、第4四半期からは景気後退を想定しています。イギリスの中央銀行は2023年のGDPについて、以前の1.25%増の予測ではなく、0.25%減を予想しています。新たな予想では、2024年のGDPは1.0%増ではなく、0.25%増です。

    もちろん、このシナリオは楽観的とは言えません。しかし、一週間後の5月12日の統計では第1四半期のGDPは前年同期比8.7%増と、前回の6.6%を大きく上回りました。この推移がFRBと同じように、金利を現在の1.0%に止めず、インフレ対する利上げを投資家に期待させています。そして、これは英国通貨の支えとなります。少なくても、これ以上の下落を防ぐでしょう。

    GBP/USDの週安値は1.2154で取引終了の鐘は1.2240で鳴りました。さらなる上昇調整のために、このペアは1.2300-1.2330のレジスタンスを克服しなければならず、その後に1.2400、1.2470-1.2570、1.2600-1.2635、1.2700-1.2750、1.2800-1.2835、1.2975-1.3000。下落の場合、最初のサポートが1.2200、その後、 1.2154-1.2164 と1.2075。このペアの強力なサポートは心理的に重要な水準の1.2000。 85%のアナリストは 英国通貨のさらなる下落予想で15% が反発するとした見方です。ここで注目したいのは、6月末までの予想だとこのペアの上昇の見方が75%に増えることです。D1のインジケーターでは赤が優勢のままです: トレンドインジケーターの100%とオシレーターの90%が下向きです。後者の残り10%は上向きです。

    イギリスの経済関連の来週のイベントですが、5月17日(火)の失業率と賃金に関するデーターの公表に注目です。新たな消費者物価指数が5月18日(水)、週末の5月20日(金曜日)には小売売上高の発表があります。

USD/JPY: 資本収益率から安全性へ

  • 先週の日本円は、"同じような"のユーロや英国ポンドより堅調でした。多くのアナリストの予想どおり、強気筋は4月28日の高値131.24を更新させようとしていました。しかし、10ピップスだけ上昇した131.34ところで止まり、USD/JPY は下落、127.51でのサポートでした。間違いなく、このペアの現在のボラティリティは目を見張るものがあります: 週取引幅は383 ポイントでした。これは、2021年第4四半期から2022年第1四半期にかけて、平均で150ポイント前後の推移だったにもかかわらずです。先週は示唆されていた取引幅の中央ゾーンの129.30で取引終了しました。

    コロナウイルスのパンデミック時のボラティリティを除けば、5月12日(木)のUSD/JPY は2010年以来の最大の変動幅の一日でした。多くのアナリストによると、日本通貨の上昇はリスクの非常に少ない資産に対する投資家の欲求の増加によるものでした。これまでドルは、金利の上昇と米国債10利回りの上昇で高くなってきました。しかし、投資家がリターンよりも資金保全を好めば、USD/JPY の下落は続くことになります。

    また、日本銀行の政策変更への期待から円高は進みました。外国人投資家をはじめとした多くの投資家は、政府が超緩和政策を固持しようとしているにもかかわらず、利上げの可能性を予測した状態のままなのです。しかも、反対方向ですが、そのような前例があります。市場は、2016年に日銀の黒田東彦総裁が、はじめマイナス金利の導入を否定しておき、その後、突然、導入に踏み切ったことを知っています。

    現時点でのアナリスト予想はこのペアの相場同様に不透明です。上昇が40% 、下落が50%、残りの10%が中立の立場です。D1のインジケーターも同様に一致していません。トレンドインジケーターに関しては、65%が緑、 35%が赤です。オシレーターでは、40% が緑、25%が赤、 35% がニュートラルグレイ。直近のサポートは128.60、続いて、128.00、127.50、127.00、126.30-126.75、126.00、125.00が控えています。強気筋のゴールは、130.00台を超えての上昇で 5月5日の高値131.34。2002年1月1日の高値 135.19 が最終ゴールのようです。

    今年の第1四半期の日本のGDPに関するデーターが来週の5月18日(水)に公表されます。この指標では、前回の1.1%から0.4%減少することが予想されています。

暗号資産: "1BTC100万ドル、または、ゼロ"

  • 先週のヘッドラインを読むと、暗号資産は数日といわないまでも数ヶ月しかもたないように強く印象づけられます。“暗号資産完敗”、“ビットコインのレクエイム”、“暗号資産のバブル崩壊” は一部に過ぎません。しかし、恐れることだけなのでしょうか?

    確かに、市場は非常に大きな損失を被っています。ビットコインは、3月末から45% 前後落ち込み、5月12日には$26,580でした。 そのほかのほとんどのコインは、さらに悪化しています。何度も述べられていますが、パニックの原因は投資家のリスク選好が世界的な低下しているためです。暗号資産市場は株式市場に続くだけです: デジタル資産の相場と株価指数S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックの相関関係は最大になっています。

    米国の連邦準備制度理事会の金融引き締め策、中国でのコロナウイルスの新たな感染拡大、EU経済の将来への懸念: これら全てが投資家をリスク資産よりドル選好にさせている理由です。それに加え、米国債10年利回りの上昇が要因もあります。この数値は3月からほぼ倍増し、3%以上の上昇: 2018年以来の高水準で米国株式市場のほとんどのセクターのリターンを上回りました。

    世界的な要因に加え、資金的に三番目に大きいステーブルコインのUSTの崩壊が暗号資産市場に圧力をかけました。ステーブルコインは投資取引を円滑にさせ、1:1の比率でドルと固定されるべきだと考えられていました。. USTの価格はすぐに$0.64に暴落、テラチームの価格維持に対する疑問が投げかけられました。USTのこの問題で、ルナトークンも下落、価格の90%以上を失いました。4月に遡ると$120 前後だった価格が、今では$5 で購入できます。ここで、念頭に置いておきたいのが、テラのブロックチェーンプロトコルは市場全体のトップ10に入るほどのかなり大がかりであったことです。

    時価総額820億ドルの中央管理型ステーブルコインのテザーにも懸念が生じています。2021年に実施されたプロジェクトの監査で準備金のドルの代わりに、口座に多くの有価証券があったことです。このようなことにより、USDT は非常に売られています: ここ数日で時価総額は14億ドルも減少。

    暗号資産市場の下落は続いています。このレビュー執筆時、5月13日夕方は1兆290億ドル(1週間前には1兆6570億ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスは100ポイント中22ポイントから10ポイントに下落して、非常に恐怖のゾーンに定着しています。BTC/USD は、やや反発した後、$26.580で落ち着いています。このペアがこれほど前回下落したのは、2020年の12月です。

    ビットコインホルダーのうち、1000BTC以上の資金を持つ"クジラ" が急激に減少しています。この数字は、今年に入ってからすでに最低となっています。同時に、取引所における暗号通貨の取引量は、反対に、この3ヶ月で過去最高です。グラスノードのアナリストによると、集中型取引所へのコイン流入の平均量は現在1755BTC前後で推移しています。

    GalaxyDigitalの創設者であるマイク・ノヴォクラッツ氏は、ビットコインが$30,000、イーサリアムは$2,000のサポート水準を維持できるか懸念しています。“新たな均衡まで” “デジタル資産はナスダックと密接な相関関係での取引が続くでしょう。と彼は述べています。直感として、今後、まだ、ドローダウンがあり、非常に不安定で変動の激しい、複雑な市場になるでしょう” とマイク・ノボグラッツ氏は、ナスダック指数が11,000(5月12日は11,688)を下回れば、負のシナリオのとおりになると警告しています。

    金を擁護するビリオネアのピーター・ジフ氏はビットコインが$10,000を下回ると予想しました。また、ビットコイン業界での経験豊かなビリオネアであり、2020年の米大統領候補ブロック・ピアス氏はFox Businessで大成功もありえるが、大失敗になることもあるとインタービューでこたえています。 “ビットコインはゼロに下落する可能性があります。バイナリの結果です。1BTCあたり100万ドルになるか、ゼロになるかのどちらかです” と同氏は述べていました。

    ピアス氏は、現在の “暗号資産の状況” がIT業界バブル時に似ているとした見方をしています。“状況は、1999に非常に似ています。市場は、現在、同じ局面です。そこで、次はどうなると思いますか? ドットコムバブルの後、eBayやAmazonなど面白い企業が登場しましたが、多くの企業は倒産してしまいました。しかし、これはデジタル資産が非現実的であり、私たちの共通の未来に重要な役割を果たさないということではありません” と同氏は述べています。同氏は主にイーサリアムでポートフォリオを分散化したことを認めています。また、EOSで“nine zeros”賭けて、 Block.one株を暗号資産に変えました。

    ほかのインフルエンサーたちとは違って、ARK インベストのキャサリン・ウッドCEOは相変わらず楽観的で暗号資産と従来の資産の相関関係が強まっていることから、弱気トレンドがすぐに終わるだろうという見方です。同氏は従来の市場に伴ったビットコインの下落を一時的な現象であると意見を述べています: “暗号資産は新しい資産カテゴリーなのでナスダックに連動するものではないのですが、これが起きています。現在のところ、すべての資産が同じような推移で、ある市場の動きをそのまま受け入れていますが、暗号資産は、そろそろ完了しそうです”。

    ARKインベストの代表は暗号資産市場が従来の資産崩壊に伴って 飛躍的に成長すると考えています。 “現在の株式と債券市場、コモディティと暗号資産市場の悪化状況が投資家にマイナス感情にさせています。しかし、私たちのリサーチを見て下さい… 私たちの商品が世界を変えると言わないまでも既に急激な成長軌道に乗っています”。ウッド氏によると、ブロックチェーンは今後7-8年で20倍に成長するテクノロジー分野です。

    投資家にとってのもう一つの希望は、ビットコインが既に次の半減期を迎えていることです。これは5月5日のブロックナンバー735,000にありました。21万ブロックごと、つまりおよそ4年に1度の割合で発生し、次回まで10万5千ブロック弱が残されています。 ブロックの生成時間は10分前後で変動するため、半減日は数日で予測可能です。前回の前回の半減期は2020年5月11日で、次回は2024年4月だろうとされています。

    半減期の周期はビットコインネットワークの主なメカニズムの一つであり、BTCのマイナーの報酬を半減させるもです。したがって、マイナーの報酬源が新たに生み出すビットコインによるものだけなので、新たに生まれるビットコインも半減します。ビットコインがはじまって最初の半減期ではマイナーの報酬額は1コインあたり50 BTCでした。 その後、ビットコインの報酬額は25 BTC、次は 12.5 BTCに減りました。現在、マイナーは1ブロックあたり、6.25 BTC を受け取っています。

    なお、マイナーが半減期により損失を被れば、反対に投資家が儲かります。今までを見ていると、最初の半減期のビットコインの価格は$127前後、2回目の前に価格は$758、3回目の前には$10,943に上昇しています。2024年に同じようにBTCの価格が爆発的に上昇するかどうかは、それほど待つことはなく、あと2年足らずでわかります。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: これらの内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場での取引には、リスクが伴うため投資資金すべてを失う可能性もあります


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