June 18, 2022

EUR/USD: FRBFOMC 会合結果

2022年6月20‐24日のFXと暗号資産の予想1

  • 先週は、6月10日(金)に発表された米国のインフレ統計が、予想の8.3%に対して8.6%となったことが材料となりました。この気がかりなデーターにより、市場関係者はこれまで予想していた0.5%ではなく、0.75%の利上げの可能性を盛り込み始めました。せっかちな人の中には、即座に1.0%の利上げすら話題にしたほどです。そして、6月15日(水)に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利を1.75%、つまり0.75%引き上げることになりました。

    FRBのジェローム・パウエル議長によると、1994年以来の金融引き締めの中で最も積極的なものになります。さらに米中央銀行は、景気後退に脅かされながらも選んだ道をさらに突き進み、次回の会合ではさらに50もしくは75ベーシスポイントの利上げを示唆しました。

    FOMC の会合の後、インフレ予想を3.4%から5.2%に修正、政策金利の見通しを1.9% から3.4%へ引き上げました。同時に、ジェローム・パウエル議長は消費部門や米国労働市場の強さから経済への影響がないことを期待しています。 確かに、FRBの議長の楽観的な見方にもかかわらず、2022年の経済成長率の見通しは2.8%から1.7%に下がり、反対に失業率の予測は3.5%から3.7%へ上がりました。

    全般的には、ジェローム・パウエル議長の政府の計画は、かなり漠然としたものであり、市場は量的引き締め(QT)がどの程度強いものになるのか、フェデラルファンド金利の4%の見通しについて、わからずじまいでした。FRBの議長の言葉通り、" 75 ベーシスポイントの引き上げは異例の大幅" であるため、"通常になる"ことはないと考えています。

    その結果、DXYドルインデックスは最高値(105.47)となり、EUR/USD はFOMCの会合の終了を待たずに最安値(1.0358) に達しました。週明けの急激なドル高の背景は、前例のない利上げ期待だけでなく、ヨーロッパのマクロ経済統計の悪さによるものでした。ユーロ圏工業生産の下落率は鈍化すると予想されていましたが反対に-0.5% から -2.0%へ加速しました。主な理由は、依然、ロシアのウクライナ軍事侵攻によるロシアへの制裁が原因となっているエネルギ危機です。

    ドルは6月15日の夕方には上昇が尽きたように思われたため、6月16日に急反発、EUR/USD は1.0600に上昇しました。週の最終日は、ECBがユーロ圏の南側諸国の借り入れコストを新たにサポートすることを決めた後、トレンドが変わりました。そして、このペアが1.0500の圏内の1.0495水準の時に5日間の取引終了の鐘が鳴りました。

    多くのアナリストは、米国と欧州の通貨は年末までに(あるいはもっと早く)1対1のパリティになるとした見方をしています。その一方で、6月17日の専門家の意見は次のように分かれています: 30%が強気- 20% が弱気、そして50% が見通し立たずです。D1 インジケーターのシグナルは、かなり明確です。オシレーターでは、100% が赤、トレンドインジケーターでは90% が赤、10% が緑です。1.0500以外の直近の強力なレジスタンスは1.0600 圏内で、成功すれば、強気筋は1.0640の突破で1.0750-1.0760 圏内へ上昇、次の目標は1.0800になります。弱気筋に関しては、まず、 1 番にやるべきことは1.0460-1.0480 付近のサポートを突破、それから、5月13日の安値1.0350の更新です。成功すれば、2017年の安値1.0340の嵐となり、その下には20年前のサポートがあるだけになります。

    来週のイベントですが、6月20日(月)は奴隷解放記念日のためアメリカの祝日となります。住宅市場からのデーターは6月21日(火)と6月24日(金)に、労働市場からのデーターは木曜日に明らかにされます。また、6月22日と23日にはFRBのパウエル議長の議会での講演があります。さらに6月23日にはドイツとユーロ圏全体の事業活動データーの発表がありますので、そちらも注目することをお勧めします。

GBP/USD: イングランド銀行からの想定外の嬉しいニュース

  • 米国のFRBの会合に先がけ、6月10日から14日の3日間でドルはポンドに対して585 ポイント上昇、GBP/USD は1.1932で2020年3月以来の安値水準でした。しかし、イギリス政府の介入が入りました。

    6月16日(木)の会合で、イングランド銀行(BOE)は政策金利を1.00%から 1.25%へ引き上げたのです。25ベーシスポイントは、前日のFRBが引き上げた75bpの3分の1だけかと思われるかも知れませんが 、ポンドは急騰、このペアの局所的高値である1.2405で定着しました。イギリス通貨はわずか数時間で365 ポイントを上げたのです。

    よくあることですが、この上昇の理由は期待です。まず、イングランド銀行の政策委員会のメンバーの9人のうち3人が政策金利を25ではなく、一気に50ベーシスポイントの引き上げに支持しています。次に、会合の後の声明ですが、次回の会合から始まる金融引き締めのペースの加速の可能性を明白に示したのです。つまり、早ければ8月4日にも1.75%になる可能性があり、これは市場予測を大幅に上回るものになります。さらに、イングランド銀行は、これだけではなく、さらに利上げをするつもりです。

    FRBの漠然とした声明とは対照的に、イングランド銀行の金融政策については、かなり明白であったため、このことが投資家に好印象を与えました。アナリストも大西洋の反対側と違いイングランド銀行の指導者がインフレ上昇について中国やロシアに責任転嫁しなかったことに注目しています。

    ポンドは週の終わりには上昇から引き返し、このペアは1.2215水準の取引で今週を終えました。現在、50%のアナリストが当面、再び1.2400 がレジスタンスを突破しようとする見方である一方、10%は1.2040前後のサポートを突破しようすると見ており、残りの40% のアナリストが中立の立場です。

    トレンドインジケーターとオシレーターと共に、90% が下落を示している一方で、残りの10% が反対の向きを示しています。サポートは1.2155-1.2170レベル、そして1.2075と1.2040。このペアの足場固めは心理的重要なレベルの1.2000 であり、その後は6月14日の安値1.1932。上昇すれば、このペアは、1.2255、 1.2300-1.2325、1.2400-1.2430、 1.2460のレジスタンスに直面、その後は、1.2500 と1.2600 の範囲が目標となります。

    来週のイギリスに関するマクロ統計の予定では、6月22日(水)の5月の消費者物価指数(CPI)の発表と翌23日(木)の各業界と国内全体の事業活動を反映させるPMI指数の発表が注目です。イギリスの5月小売売上高は6月24日(金)に発表される予定です。

USD/JPY: 日本銀行からはサプライズなし

  • ドルが再びUSD/JPY を押し上げ、再び20年ぶりの高値更新でした。先週は、2002年1月1日の135.19を突破して135.58の高値をつけました。その後は、131.48 まで勢いよく引き戻し、新たな大逆風の後、このペアは134.95前後の135.00水準付近で取引を終えました。

    とりわけ、高いインフレに直面している中での円安は、原材料や自然エネルギーの輸入価格の上昇で家計だけでなく、日本経済全体にとって大きな問題です。しかし、日本銀行は急激な引き締めをほかの国々の中央銀行とは対照的に超緩和金融政策を強固に維持しています。米国の連邦準備制度理事会の後、先週、スイス国立銀行、イングランド銀行が利上げをすることになりましたが、日本の中央銀行は10年国債を0%前後にすると確約しておきながら、6月17日(金)の会合で金利はマイナスレベル- マイナス0.1%に据え置きました。この数週間、国債利回りは0.25%を超えそうな時が何度かありましたが、その度にすぐに、積極的な買戻しがありました。

    6月17日の朝、日本の政府関係者は円に対して何らかの支援を実施しようとしました。政府と日本銀行は共同(めったに見られませんが)で自国の通貨の急落に対する懸念を発表しました。この発表は、投資家にある時点で金融政策の調整をすることについて否定しないことを示唆したものでした。しかし、いつ、どのように実施されるかは含まれていなかったことで、市場は、ほぼ無反応でした。

    例えば、オランダの最大手銀行グループのINGのストラテジストなど、多くの専門家は“日本政府が為替介入に踏み切らなければ、USD/JPYは、この数日で大幅に135.00を超えるリスクが高まる”という見方のままです。

    多くのアナリスト (55%)は、政府の介入や、せめて安全通貨としての円に対する関心が戻ることに期待を寄せていています。しかし、この思惑は、ここ数週間、現実になっていません。このペアが410ポイント下げた6月15‐16日に起きたような強い調整が繰り返される可能性がありますが。アナリストの35%は 135.58の高値更新、10%は一休止で横ばいの見解です。D1のインジケーターに関しては、アナリストの意見とはかなり異なる描写になっています。トレンドインジケーターでは、100%が緑で、オシレーターでは 90% 、このうち10%は買われ過ぎ圏内で、残り10%が赤です。 直近のサポートは134.50、その後、134.00、 133.50、33.00、132.30、131.50、 129.70-130.30、128.60 と128.00。2002年1月1日の高値を更新した後の強気筋のさらなる目標設定は困難です。多くの場合、136.00、137.00、140.00、 150.00が予想で表されています。 このペアの上昇率がこの3カ月と同様であれば、8月、もしくは、9月上旬に150.00 ゾーンに到達できるでしょう。

    今週は、6月22日(水)に日銀金融政策決定会合報告書が発表されるほかは、大きなイベントは予定されていません。

暗号資産: 大惨事か$20,000のバトル

  • 35億ドルの投資ファンドSkyBridge Capital の創設者であるアンソニー・スカラムッチ氏は"大惨事" と称しました。彼の意見に同意しないことは難しいでしょう。

    2021年11月11日から2022年6月15日の間でビットコインは合計70% の損失を出しました。この1週間だけで3分の1ほど値下がりしています。一部のアナリストは、今回の引き金となったのは暗号資産レンディングプラットフォームのCelsius ネットワークが “極端な市場の状況”を理由に口座からの資金の引き出しと口座間の送金停止を発表したことだと述べています (5月時点で、同プラットフォームは110億ドルのユーザー資産を管理)。

    しかし、全体的なマイナスのマクロ状況が原因の可能性が高いようです。この意見はThe Block が実施したアンケートに参加した業界関係者によるものです。多くのアナリストは、暗号資産市場は “Celsiusに関係なく下落したであろう” と見解しています。ブルームバーグは、市場が"ドル以外のすべてを売る時期" に突入したと述べています。トレーダーは、インフレ率の上昇による米国連邦準備制度理事会の金融政策(QT)のより積極的な引き締めで"安全な港" へ出航しました。市場はリスク資産を積極的に避け、S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック株式指数は下落、ビットコインやほかの暗号資産も伴って下落しています。

    6月15日(水)にBTCの価格がほぼ$20,000 に下落、イーサリアムの相場は$1,000に下落、暗号資産市場の時価総額は0.86兆ドルに下落しました。7ヶ月前の2021年11月は2兆9700億円であったことを思い出してください。

    弱気相場はすべての投資家を動揺させます。ただ、ビットコインの2大機関投資家はとりわけ際立っています。両者で合計約14億ドルの損失です。分析リソースのBitcointreasuries.netによれば、130,000 前後のビットコインを所有するマイクロストラテジーと43,200 ビットコインを所有するテスラはオーナーたちをかなり貧乏にしました (まだ、含み損の話ですが)。

    マイクロストラテジーのマイケル・セイラーCEOはビットコインの発行数のおよそ0.615%である129,218BTCに約40億ドル(3兆9658億63658ドル)を費やしています。ビットコインの下落で31億ドルに減少しました。つまり、損失は9億ドルです。これとは、別に、マイクロストラテジーの株価もこの数ヶ月最安値水準まで下がっています。

    2021年の強気相場で40,000以上のビットコインの購入した自動車会社のテスラのイーロン・マスク氏の投資もかなり打撃を受けています。同氏の投資の損失はおよそ5億ドルです。

    もちろん、苦戦しているのはマイケル・セイラー氏とイーロン・マスク氏だけではありません。暗号資産市場の下落は最大手の米国の暗号通貨取引所にも打撃を与えました。コインベース・グローバルは1,100人の従業員(全スタッフの約18%)の解雇を発表しました。コインベースの株式自体がこの1週間で26%の下落で時価総額は115億ドルに減少しました。同社の取締役兼共同創業者のブライアン・アームストロング氏は、"不況は、長く続く新しい暗号の冬を引き起こす可能性がある "と述べています。

    ステーブルコインも投資家の心に冷たさを加えました。Tron ネットワークのUSDDがシステム崩壊に直面しているのでUST (テラー) の魅力は、まだ、落ち込んでいません。6月13日、USDD はドルと一致せず、TRX は22%まで下落しました。

    この執筆時点ではBTC/USD の強気/弱気200日移動平均線の攻防戦です (200WMA)。このWMA は今まで弱気市場の段階での強力なサポートとして利用されていました。これまで、ビットコインはこのラインの下で足場を固めることができませんでしたが、6月20日(月)に今回はできるかどうかわかります("足場を固める"とは ある水準以下にロウソク足が下回ることを意味します)。

    Arcane リサーチはテクニカル分析の観点から、ビットコインには$20,000 が非常に重要な水準だと分析しています。 “つまり、この水準以下になる可能性は多くのホルダーやデレバレッジの降伏につながります” 。また、$20,000付近のビットコインオプションにはかなりの建玉があります。上記の水準が弱気筋の猛攻撃で耐えらなければ、スポット市場の追加的圧力要因となります。

    有名なトレーダーでアナリストのトーン・ベイズ氏は、トレンドのライフサイクルを予測するビットコイン・モメンタム・リバーサル・インディケーター(MRI)を引き合いに出しています。現時点では、MRIはあと数日(4-5日)の下落を指摘しており、その後、相場の反転が起こる可能性があるとしています。

    ベイズ氏によれば、BTCの価格が$19,000を下回る可能性は、ほとんどないでしょう。しかし、さらなる下落を否定することはできません: “$17,180になる可能性は? あると思います。ただ、下落の動きが続くのであれば、次の水準はおよそ$14,000でしょう。しかし、私の見解では、ビットコインは、それほど下落することなく、$19,000水準が最安値です” と同氏は述べています。

    こちらの予想は楽観的だと言えるでしょう。例えば、ブローカレージのユーロパシフィックキャピタルのピーター・シフ代表は1ヵ月前に$8,000 に下落すると予想しました。また、アメリカの経済学者でノーベル賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、暗号通貨は詐欺であり、間もなく崩壊するバブルだと語っています。

    6月17日(金)の夕方現在、暗号資産市場の時価総額は0.895兆ドル(1週間前は1.192兆ドル)です。 BTC/USD は$20,500で取引されています。 Bitcoin's Crypto Fear & Greed インデックスでは、非常に恐怖の圏内に定着しており、100ポイントのうち7ポイントまで下落しました(13週間前)。この数字は2020年3月の数字と匹敵します。その後、ビットコインの価格は$3,800で底を打ちました。Arcane リサーチによると、指数は4月12日以来、恐怖のゾーンが続いています。 “市場参加者たちの多くが降伏するのは間違いないでしょう。歴史的には恐怖の時こそ買いで利益を出します。しかし、落ちてくるナイフを掴むことは簡単ではありません” とアナリストは見解を述べました。

    そして、最後に、このレビューのはじめのSkyBridge Capitalの創業者であるアンソニー・スカラムッチ氏の発言から少しだけ楽天的な見解です。CNBCのインタビューで、元政治家でホワイトハウスの広報部長である同氏は“大惨事”であると言っただけでなく、7つの弱気相場を生き抜いてきて、8つ目も “這い上がる” ことができる望みがあると付け加えました。

    “すべての暗号資産は、短期的な損失に直面しない限り、長期的な見通しがあります” と同氏は述べています。 “そして、投資家は髪をかきむしりはじめ、壁にあたります。他に気を取られることなく、質の高い暗号資産を購入して、また、時々起こる弱気市場を振り返ることなく、自制心を持つことがいいです。こうした期間に落ち着いていることができれば、お金持ちになるでしょう” とスカラムッチ氏は投資家を励ましました。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: これらの内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。


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