July 2, 2022

EUR/USD: ドルが再び上昇中

  • EUR/USD は、一週間、1.0500-1.0600 の流れで横ばいの推移です。しかし、投資家も投機家もこのような停滞には興味がないことは明らかです。しかし、この状況から抜け出すための何らかのきっかっけはあるはずです。

    前回のG7首脳会議とNATO首脳会議では特に目立つ発言はありませんでした。両会議では、ロシアと軍事的に対立するウクライナを引き続き支援する意向が示され、スウェーデンとフィンランドの両国がNATO加盟となりました。しかし、これらの出来事はドルやユーロの相場に何らかの影響を与えるには至りませんでした。

    6月28日(火)に下向きとなったEUR/USDはドル高のきっかけとなり、翌日の安値突破は世界経済の先行きが懸念される中での保護資産の需要の高まりによるものでした。そして、最近のアメリカ通貨が保護資産とされていることを考慮すれば、スケールはこの方向へ向かっています。

    ポルトガルのシントラで開催された欧州中央銀行の年次フォーラムでECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は、“ヨーロッパで予想されているインフレは以前よりもはるかに高くなっている”、“すぐに低いインフレ率の状態に戻ることはないだろう”、 “インフレを目標の2%まで下げるために必要な限りの努力をする”と述べました。クリスティーヌ・ラガルド総裁は、この目標を達成するためECBが7月21日の会合で主要金利を0.25%引き上げる意向であることを認めました。しかし、市場関係者によると、このような緩やかなステップが大きな影響をもたらすことは低いとのことです。次の会合は、9月8日にしかありません。つまり、それまではインフレが上昇すると考えられます。

    ECBフォーラムに出席した米連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長の発言は、クリスティーヌ・ラガルド総裁の発言とは、かなり異なりました。アメリカ人はFRBが導入した積極的な金融引き締め策にアメリカ経済が十分に対応できると断言しました。

    ECBの慎重な金融政策とタカ派的なFRBとの差は、常にドル選好の市場と判断されてきました。今回も同様でEUR/USD は下落を続きました。

    欧州通貨は、6月30日の午後に発表されたアメリカの弱いマクロデーターにより助けられました。一時的なこのペアの上昇のきっかけは、予想の1.5%ではなく1.6%の下落でGDPが予想を下回ったからでした。また、経済成長率も5.5%から3.5%に減速したとの統計もあります。米国の個人消費に関する基礎的な支出に関するデーターも期待したものではありませんでした。アメリカの失業給付申請に関するデーターは、予想よりもかなり悪い結果でした。つまり、当初、初回申請件数は233,000 から218,0000へ減少するはずでした。しかし、231,000件しか減少しませんでした。再申請件数も同様で、1.331K から1.328Kの減少でした。

    しかし、上記のすべてのマイナス要因は欧州通貨を一時的に支えたに過ぎませんでした。ドルにおける四半期調整は、あまり助けにならず、金曜日に再び積極的な攻めにでました。ユーロ圏のインフレ率が8.1%から8.6%に加速したというデーター発表は、投資家の安全資産への流れを加速させただけでした。つまり、このペアは1.0364の底値をつけ、 1.0425で5日間の取引を終えました。

    レビュー執筆時の7月1日の夕方、アナリストの意見次のように分かれています: 35% は強気-50%が弱気、 15% が中立。D1のオシレーターは、75%が赤、10% が緑、15% がニュートラルグレイ。トレンドインジケーターでは100%が赤。直近レジスタンスは、1.0470-1.0500、そして、1.0600-1.0615 に続き、強気筋が1.0750-1.0770の上昇に成功すれば、次のターゲットは1.0800です。 1.0400以外、弱気筋の一番の課題は、5月13日と7月1日の安値でつくられた1.0350-1.0364のサポートゾーンの突破です。成功すれば、2017年の安値1.0340の嵐が起こり、その下には20年前のサポートと長年の夢の1:1 パリティのみです。

    今週の7月4日はアメリカの祝日: 独立記念日です。ユーロ圏の小売売上高に関する統計は7月6日(水)に発表予定。同日にある米国のサービス業景況指数(ISM)やFOMC(連邦公開市場委員会)の6月会合の議事録も注目です。7月7日(木)にECB 会合の議事録、米国の民間と非農業部門の雇用水準、失業保険給付の初回申請件数に関するADP報告書が発表予定です。なお、10月8日(金)には失業率や農業部門以外の新規雇用者数(NFP)などの重要な指標を含む米国の労働市場に関する一部データーの発表も予定されています。

GBP/USD: EUR/USDの類似点と共通点

  • 先週、 GBP /USDは EUR/USD と同じような推移を示しました。相場の上昇や下落の理由も似ています。つまり、ここで、また列挙する意味はありません。このペアは一週間半1.2165-1.2325の横ばいの推移で、その後、6月28日に急落しました。1.2100のサポートを打ち破ると弱気筋の圧力が強まり、2週間ぶりの安値となる1.1975を記録しました。その後、上方調整となり、1.2095で終了しました;

    ユーロとポンドがドルに対して同じような動きをしたとしても、両者には違いがあります。ユーロ経済の立場はウクライナ侵攻後のロシア制裁により供給が制限されているロシアの天然エネルギーにかなり依存しているため複雑です。段階的改善の状況: 6月にはじめてアメリカがヨーロッパへのガス供給でロシアを迂回しました。しかし、最終的なエネルギー問題は、まだ、はるか先です。

    EUとは異なり、イギリスのロシアのエネルギーの依存度は最小限です。しかし、イギリスの通貨高は政情不安定により妨げられています。ボリス・ジョンソン首相は、6月の不信任決議を乗り越えていますが保守党の数人の議員が反対票を投じました。なお、補欠選挙の後はイギリス議会で2議席を失っています。ブレグジットに関連の問題も気掛かりです。英ポンドは、北アイルランド議定書の一部を破棄する法案を大臣に許可させることが承認されたことでさらなる圧力がかかりました。

    経済についてはアナリストの一部によると、イギリスのインフレは続き、11月までに11%を超える可能性があります。

    現在、アナリストの60% はGBP/USD が近いうちに1.1975と 1.1932のサポートを突破すると見ています。 40%は逆に1.2100のレジスタンスを突破してさらに上昇すると考えています。D1のトレンドインジケーターでは、100:0% 比率で赤が優勢です。オシレーターでは、若干少なく: 75%が下落を示し、残りの25%が横ばいです。強いサポートラインが1.2000で、その後に7月1日の安値1.1975 と6月14日の安値1.1932があります。弱気筋の中期ターゲットは、2020年3月の安値1.1409でしょう。 上昇すれば、 1.2100、1.2160-1.2175、1.2200-1.2235、1.2300-1.2325、1.2400-1.2430、1.2460でレジスタンスに遭遇して、その後のターゲットは1.2500 と1.2600 付近となります。

    イギリスのマクロ経済の予定では、7月5日に予定されているアンドリュー・ベイリーイングランド銀行総裁の発言に注目することをお勧めします。同じ日にイギリスのサービス部門購買担当景気指数PMIの発表があり、翌日に、建設業購買担当者景気指数の発表もあります。

USD/JPY: 一息ついてるだけか、トレンドの転換か?

2022年7月4日-8日のFXと暗号資産の予想1

  • USD/JPY は再び24年ぶりの高値更新、6月29日(水)に136.99の高値まで上がりました。しかし、以前の6月22日の高値との違いは、30ポイント未満であり、2週間のチャートはすでに上昇トレンドというより、横ばいのように見えます。おそらく、強気筋は力尽き、少なくても、今は小休止が必要なのでしょう。

    おそらく、最終的には、日本の輸入業者や主婦が長いこと待ち望んでいたことが起こって、円が攻撃的となり、安全通貨の人気を取り戻すのでしょうか? 可能性としてはあります。しかし、保証はありません。日本の中央銀行の超ハト派的金融政策と米国の中央銀行の明らかなタカ派的な金融政策には、あまりも差がありすぎます。

    ほとんどのアナリスト(50%) は、少なくとも129.50-131.00ゾーンまでの下落予想のままです。アナリストの30% は、このペアが再び最高値を更新して137.00まで上昇する見方で、残りの20% は一息ついて134.50-137.00の横ばいの推移だと考えています。 D1のインジケーターでは、アナリストの意見とはかなり違った描写です。 オシレーターでは、65% が緑(このうち10% は買われ過ぎゾーン)、残り35%は中立の立場です。 トレンドインジケーターでは、65% が上向きで、35%だけが下向きです。

    直近のサポートは134.50-134.75、これに続いて、134.00、 133.50、 133.00、 132.30、 131.50、129.70-130.30、128.60 と128.00。 直近のサポート136.00-136.35を克服して137.00になる以外の強気筋のさらなる目標設定は困難です。よく言われているのは、137.00、140.00、150.00といったラウンドレベルの予測です。このペアの上昇率がこの3ヵ月と同じであれば、8月の下旬か9月の上旬に150.00 圏内にとどくでしょう。

    今週、日本ではマクロ経済統計の発表や政治的要因など重要なイベントの開催は予定されていません。

暗号資産: ビットコインが$1,100に下落? アメリカの連邦準備制度に注目

  • 6月の後半は$20,000 のバトルが続きました。BTC/USD は$17,940に下落した後、$21,940に上昇しました。$20,000 は、ビットコインにとって歴史的にみて最も重要なレベルであることに注目しましょう。ビットコインがこの付近の高値$19,270となり、その後、84%までに崩壊した2017年12月の破滅的な暴落をしたことを思い出せば十分でしょう。多くのアナリストは今も似たような状況であると予想しており、BTC/USDは、さらに50-80%下落すると見通しています。 金持ち父さん貧乏父さんのベストセラー作家であるロバート・キヨサキ氏は、さらに大きく95%の$1,100に崩壊すると予測しています。

    ところで(7月1日金曜日夕方)、ビットコインは$19,440圏内で取引されています。 現在の暗号資産市場の時価総額は0.876兆ドル(1週間前は0.960兆ドル)です。 Crypto Fear & Greed インデックスは、1週間前と同じ、100ポイント中の11ポイント前後で非常に恐怖のゾーンです。

    チャートを見れば、この1週間は弱気筋が明らかに優勢だったことがわかります。公平に言うなら、ビットコイン自体にはこのことについて、本当に落ち度はありません。すべては、米中央銀行の金利引き上げと金利引き締めによるドル高が原因です。このような状況だと、投資家は米国通貨の購入によるリスク資産の処分を好みます。世界の株式市場は売り圧力にさらされており、MSCI ワールドと MSCI EM インデックスは下落、それぞれ先進国と新興国の状況を示しています。先進国市場では、主にヨーロッパ側に圧力にさらされましたが、米国も避けることができませんでした:BTCが直接相関している S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック総合指数も下落です。

    ビットコインの相場には流動性を必要とするマイニング企業によってさらなる下落圧力がかかります。JPモルガンの銀行ストラテジスト、ニコラオス・パニギルツォグルー氏によれば、この状況は2022年第3四半期も続きます。こちらの専門家の計算では、公開マイニング企業がハッシュレートの20%前後を占めています。企業の多くが運営費やローンに充てるためにビットコインを売却しました。資金アクセスに制限があるため、民間のマイナーも同様のステップを踏んでいます。“生産の収益性が改善されない場合、第3四半期もアンロードが続きます。既に、5月と6月に証明されています。このプロセス継続のリスクがあります”とJPモルガンのストラテジストは見解しています。

    ブルームバーグによれば、年初めに$18,000-$20,000だった1 BTCは、より効率的な設備の導入で6月には$15,000 前後に下落しました。しかし、これがマイナーの安定した機能として十分であるかどうかについては、まだ、明らかにされていません。

    暗号資産市場の不況はあと18ヶ月ほど続き、FRBの金融緩和後に業界は回復の兆しを見ることになります。これは、ギャラクシーデジタルバンクの創設者であるマイク・ノボグラッツ氏がニューヨークマガジンとのインタビューで述べたことです。 “私たちが既に最悪な状況を見ている事を願います。次の四半期のインフレの状態がわかれば確信が持てるのですが[...] FRBは秋には金利引き上げを断念しなければならなくなり、それによって人々は落ち着き、再び、築きあげることができるでしょう” とギャラクシーデジタルの代表は述べています。

    ノボグラッツ氏によれば、この危機で暗号資産のようなリスクの高い資産に対する考えが変わりました。この数ヶ月で、誰も知らなかったレバレッジへ依存している業界が示されたことを指摘しました。弱い参入者の破産や崩壊した資産の売却には今から時間がかかるでしょう。ギャラクシーデジタルの代表によると、この状況は2008年の世界的金融危機で、その後に、投資銀行業界の合併の波が押し寄せた状況に似ています。

    暗号資産アナリストのベンジャミン・コーウェン氏は、2023年にBTCレートが高くなるという予想の実現を疑っています。とりわけ、ベンチャーキャピタル投資家であるティム・ドレイパー氏のビットコインが現在の水準から1000%上昇して$250,000になる予想について述べています。

    “以前は、BTCが2023年までに$100,000以上になると信じていましたが、今では、疑問に思っています。特に、FRBの政策がこの6ヵ月で非常に大きく変わった後では” とコーウェン氏は記述しています。"ソーシャルメディアの統計のようなものも見ていますが、暗号資産に興味のある人々は減少傾向です。人々にとってガソリンを買うことか難しくなれば、ビットコインの購入はさらに難しくなるでしょう”。

    大きな上昇の代わりに、コーウェン氏は、今後2年間は面白さのないBTC相場が続くと予測しています: “弱気市場は今年で終わり、2015と 2019と同じように蓄積の段階が始まるでしょう。それから、次のビットコインの半減期の準備がゆっくりとおこなわれ、この間にインフレに打ち勝ち金利が下がるかも知れません”。

    多くの予想がモデル、指標、ほかの分析ツールを使用していることは明らかです。例えば、1週間前にここでThe Daily Gweiの考案者であるアンソニー・サッサーノ氏やイーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリンが人気アナリストであるPlanBの予測の根拠であるS2F(Stock-to-Flow)モデルを批判していたことは述べました。批判を受けたPlanB は、1つのチャートだけでなく、5つの異なる予想モデルを公開しました。確かに、S2Fはかなり楽観的見方を示していました。一番正確な描写は、ビットコインの複雑さとマイニングコストを基にした予想でした。

    Dave the Wave という別のアナリストは対数的成長曲線(LGC) モデルを使用して、ビットコインが4年以内に1100% 上昇して$260,000になるという見方をしています。短期的には、Dave the Wave はビットコインが$25,000になると予測しています。

    暗号分析プラットフォームCryptoQuantによれば、ほとんどの循環指標(Bitcoin Puell Multiple、MVRV、SOPR、MPI BTC Miner Position Index)はビットコインが底値へ近づいていることを示しています。これらのインジケーターでは、何度か上昇トレンドに先行した歴史的なパターンに基づいています。インジケーターもビットコインが現在、過小評価されており、急上昇するかもしれないことを示唆しています。かなりの含み損がこの予想を裏付けています。

    また、投資ファンドSkyBridge Capitalの創設者であるアンソニー・スカラムッチ氏もビットコインが“テクニカル的に売られ過ぎ”であると述べています。同氏は、ウォレットのアクティビティが指数関数的に増加し、ユースケースが増加している状況下で現在のBTC価格を分析してこの結論を導きだしました。また、ヘッジファンドマネージャーは投資家にビットコインを遡及的に評価するようにアドバイスしています。このアプローチだと、資産は"過剰なレバレッジでかなり割安のために利用する価値がある"ということがわかります。

    前回のレビューの最後にエルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領の “予想モデル” を紹介しました。“私からのアドバイスは、チャートを見ることはやめて、人生を楽しむことです。BTCに投資したなら、あなたの投資は安全、レートは弱気市場の後に、すぐに上昇するでしょう。大事なことは忍耐です” と大統領は述べています。

    さて、今度は、中国のブロックチェーン企業Red Date TechnologyのCEOであるYifan He氏が、このアドバイスに反応しました。同氏は、暗号資産を金融ピラミッドと比較して、ビットコインを法的に認めたエルサルバトルと中央アフリカ共和国(CAR)の政府に金融知識がかなり必要であると述べています。He氏によれば、両国の指導者は本来の目的が国民を詐取するのでないなら、国を危険にさらしています。この発言にナジブ・ブケレ大統領が気分を害したかどうかは、まだ、わかっていません。ニュースを追っていきたいと思います。

 

NordFX Analytical Group

 

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