September 24, 2022

EUR/USD: 新たな底値探し

  • 先週は、9月21日に開かれた米連邦準備制度理事会のFOMC の会合に注目が集まりました。75ベーシスポイント(bp)の追加利上げの確率が74%、100 bps では26%でした。前者の予想が的中でした:金利は 2.50% から 3.25%へ引き上げられました。ただ、 これによってDXYドルインデックスが113.00ポイントを超える上昇で20年ぶりの高値更新となりました。したがって、大半のアナリスト (75%)の予想通り、EUR/USD は20年ぶりの安値更新で0.9667の底値となりました。

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻のロシア軍強化のために予備役部分動員を発表、これがユーロ安で、このペアの下落に貢献することになりました。プーチン大統領が核兵器使用を示唆したことから、地域の緊張感はさらに高まりました。さらに、ヨーロッパでは暖房を使用する季節が始まり、ロシアはエネルギー供給課題を"武器"として圧力をかけています。

    前回の会合でFRBは次のステップについて明らかなタカ派的シグナルを市場に送りました。バランスシートの縮小を含む量的引き締め策(QT)は継続され、2023年も金利は高いままでしょう。CMEグループの推計によると、2022年の今年は、第4四半期末までに4.00%を超える確率が60%近くなります。

    米国中央銀行の関係者によると、インフレ打破が今や優先課題となっています。これに取り組むために、当局では生産や消費の落ち込み、労働市場の問題など、景気後退の脅威における準備が出来ています。

    投資家は安全通貨としてのドルでリスク回避をしています。米国の株価指数は2週連続で下落です。S&P500は7月の安値を下回る下落で、 ダウ・ジョーンズは 6 月の安値をつけました。

    EUR/USD の今週の終値の鐘は0.9693でした。このレビュー執筆時点の9月23日(金)の夕方、アナリストの意見は次のようになります。アナリストの55%が近く下落を支持する一方で45%は上昇調整の予想です。 D1インジケーターのトレンド系では、100%が赤で、オシレーター系も同じですが、 25% が売られ過ぎを示しています。

    このペアの当面のサポートは、9月23日の安値0.9667、弱気筋のターゲットは0.9500です。レジスタンスレベルと強気筋のターゲットは次のようになります: 0.9700-0.9735、0.9800-0.9825、0.9900、当面の課題は0.9950-1.0020の範囲に戻ることで、次のエリアは1.0130-1.0200になります。

    今週は、マクロ統計の発表が目白押しです。週明けの9月26日(月)にドイツのGDP(第3四半期)とIFO景況感指数の発表があります。翌日には米国の消費者市場からのデーター、米国のGDP (第2四半期) は9月29日(木)になります。ドイツの売上や労働市場データーに並んでユーロ圏の消費者物価指数(CPI)と米国の消費者市場については5日間の最終日であり、月末の9月30日です。また、今週は9月26日にECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁、9月27日に連邦準備理事会のジェローム・パウエル議長の発言が予定されています。

GBP/USD:過去に遡り: 1985に戻る

  • イングランド銀行はFRB会合の翌日、9月22日(木)にポンドの金利を50bp引き上げて2.25%に上げました。しかし、予想通り、これはイギリス通貨には上手くいきませんでした。より正確には、現在のマクロ的経済状況状況では少しも上手くいかなかったのです。9 月 13 日から 23 日までのわずか 10 日間にGBP/USD は900 ポイント前後急落、37年ぶりの安値水準に下落しました。底値は金曜日に1.0838をつけ、1985 年の水準と並ぶものでした。

    イギリスのネガティブな経済統計がポンドに重くのしかかっています。民間部門の事業データーは下がり続けています。総合購買担当景気指数PMIは予想の49.0 ポイントに対して、実際は先月の49.6 から48.4に下がりました。 また、190,000社を代表する 英国産業連盟(CBI)の調査では、小売売上高のバランスが8月の+37から9月は-20に減少しています。

    イングランド銀行独自の予想によれば、この国は深刻な景気後退に近づいています。また、英国商工会議所(BCC)の推計によれば、景気後退は既に本格化しており、インフレ率は年末に14% に達します。来年も良い兆しが見当たりません: ゴールドマン サックスのストラテジストによると、インフレ率は 2023 年末までに 22% に達する可能性があります。

    これに対向して、イングランド銀行はさらなる積極的な利上げに踏み切りました。しかし、金融引き締め策は予算支出の増加と共に実施されます。さらに、政府は発表した企業や家計の電気料金の一部を保証する財源を持ち合わせていない可能性があります。つまり、多額の借金を負わなければならず、自国通貨にもプラスにはなりません (英ガス電力市場監督局のOfgemは10月から年間平均請求額が80%値上がり、燃料不足世帯が1月には1200万人に達する可能性があると発表したことはすでにお伝えしたとおりです)。

    このペアの先週の終値は1.0867でした。しかし、1.0800-1.0838 の範囲が強力なサポートとして十分となるとは考えづらいです。突破すれば、弱気筋は、あと300ポイント前後の1985年の過去最安値である1.052に直ぐに迫ることになるでしょう。このペアの下落ペースを考慮すると、あと1、2週間でこの目標に到達できます。もちろん、ポンドは売られ過ぎのため調整を度外視することはできません。このペアが上昇すれば、1.1000-1.1020、1.1100、1.1215、1.1350、1.1475、1.1535、1.1600、1.1650、1.1710-1.1740 でレジスタンスポイントに直面するでしょう。今後数週間で1.1800-1.2000の高値に戻る可能性はなさそうです。

    来週のアナリストの予想は実におもしろいです: 100%がイギリス通貨を支持です。 D1のインジケーターでは、100%がその正反対です。しかし、オシレーター系の50%は、かなり売られ過ぎを示しており、上方調整のアナリスト予想を裏付けています。

    経済指標カレンダーでは、イギリスのGDP(第2四半期)が発表される9月30日(金)に注目です。

USD/JPY: 財務省と日本銀行からのミラクル

2022年9月26日‐30日のFXと暗号資産の予想1

  • 予想通り、日本銀行(BOJ)は、9月22日の会合でマイナス金利の超ハト派的水準の-0.1%のままでした。 しかし、予想と違っていたこともありました。先週の日本の財務省のミラクルは想定外でした。しかし、想定外が現実となりました。USD/JPY が146.00に上昇すると、財務省の神経に障り、日銀が円介入したのです。

    これを受けて、このペアは550ピップス崩れ、2020年3月に始まったCOVID-19のパンデミック以来の最も大きなボラティリティを示しました。その後は、ショックは過ぎ去り、状況は少し落ち着き、このペアは週明けの相場まで戻り、143.30の水準で終了しました。

    この下げ戻しが一部のアナリストの円高は長期的には続かず、USD/JPY は再び146.00の高値突入に戻ることを裏付けにしています。 “ファンダメンタルの大きな変化や(可能性は低いですが) 米ドルとの協調的な行動がとられない限り、日本円の持続的な反発の可能性には限りがあります”とスコシアバンクのマクロストラテジストは述べています。 “ここで重要なのは、もちろん日米の金融政策の違いであり、FRBが春に始めた本格的な利上げを開始して以来、日本円は急落しています”。

    スコシアバンクは市場が日本銀行の決定を確認するために再び146.00 水準になる可能性が高いと分析しています。なお、日本の中央銀行は、この水準を維持するために何十億ドルも費やす必要があります。さらには、東京の営業時間外にエージェントを通してECB、イングランド銀行、FRBに働きかけることさえあるかもしれません。ただ、日本銀行が単独でドル高に抵抗する可能性は高いでしょう。

    今後のアナリストの予想中央値は次のとおりです。アナリストの45% が強気筋側、45% が反対の立場で残り10%が中立の立場です。D1のオシレーター系では、40% が緑、10% が赤、50%が灰色です。 トレンド系では、9 対1で緑が優勢です。

    この2週間同様に直近のこのペアのレジスタンスポイントは、143.75。強気筋 の第1と第2の課題は、145.00を上回る足場を固めて、146.00の高値に突入することです。これに続くのは 、1998 年に日米が共同で円を支える前の水準の146.78 です。このペアのサポートは、143.00、142.60、142.00-142.20、140.60、140.00、138.35-139.05、137.50、135.60-136.00、134.40、132.80、131.70。

    今週、日本経済における重要な統計発表はなさそうです。しかし、介入決定を踏まえて特に注目されるイベントが2つあります。9月26日(月)に予定されている日銀の黒田東彦総裁の会見と9月28日(水)の前回の日銀金融政策委員会の報告書の公表です。いずれの場合も、市場は規制当局が自国通貨のサポートにどの程度真剣に取り組もうとしているか理解しようとするでしょう。

暗号資産: 弱気心理が続く

  • 結局のところ、ビットコインはデジタルゴールドなのでしょうか? Paxosが一般的な金の購入者を対象に調査したところ、回答者の三分の一がビットコインを貴金属にとって最も適した代わりだと考えています。しかし、最近のこれらの資産の推移から判断すると、両方にとってふさわしい代替えは米ドルです。現物の金は2022年3月8日に$2,070 の最高値となり、その後は下落して、これまでのところ約20%値下がりしています。デジタルの方はというと史上最高値$67,273 を2021年11月10日につけて、現在は約71%の下落です。この数字を比較すると、XAU/USD は、1日あたり0.10%下落する一方で 、BTC/USD は、2倍のスピードで1日あたり0.22% 下落していました。各自で結論を導き出しましょう。現在の状況は金やビットコインのせいでもないので米連邦準備制度理事会の利上げに伴うドルの上昇に注目する必要があります。要するに、先週の暗号資産相場は追加利上げによって下落しました。一方の金は、何度か上昇したものの、今回は前回の相場に戻りました。やはり、BTCとは違い、リスクのない安全資産なのです。それでも、米ドルの圧力で少しずつ下落しています。

    貴金属となると、あざ笑う人はあまりいません。下落にもかかわらずです。しかし、暗号資産だといくらでもいます。例えば、哲学者でカルト作品の "ブラックスワン" の著者であるナシム・タレブ氏はFRBの誤った政策で生まれた"腫瘍"と言っています。 “経済構造を基本的に破壊した […] ディズニーランド の15年だと思っています。FRBは、金利を下げ過ぎて目標達成できませんでした。長期のゼロ金利が経済にダメージを与え、バブルを作り、ビットコインのような腫瘍を生み出します” と述べて、“通常の経済生活”に戻ることを呼び掛けています。

    有名なビットコイン投資家でアナリストのウィリー・ウー氏は、 “船”を動かしているのが米国政府であることに同意しています。反対に、実は、同氏は、この“腫瘍”が大きくなることを望んでいますが、政治的な理由から抑えられています。同氏が指摘するように、現在、理論的には先物契約により無制限にBTCを売ることが可能ですが、現実には2100万コインまでの提供という制限があります。 “先物市場でBTC の相場はコントロールできる” と同氏は述べています。 “CME (シカゴ・マーカンタイル取引所)は、米ドルが使えるビットコインカジノのようなものを設けました。ウォール街のヘッジファンドは、これを気に入りました。現在、ビットコインの売却にはどのような制限があるのでしょうか? フィアットには制限がないので、ありません”。

    ウィリー・ウー氏は、先物市場構造により、大手参入者が資産売却という形による圧力をかけることでBTCを抑制できると考えいます: “ビットコインは殺されていません。ただ、BTC の売りができることは、為替相場を抑制するには十分です。ビットコインの上昇がなければ、世界的なインパクトを与えることはできません。SEC の方針は現在、先物 ETF を承認することで流動性と先物の優位性を高めることを目的としていますが、スポット ETF は却下されています。今は、すべてが政治的なゲームです。” と同氏は悲しげにため息をつきました。

    DataDashのアナリストで創業者のニコラス・メルテン氏は、インフレ率の対処に成功するまでは米中央銀行の利上げは続くだろうと推測しています。そして、これがデジタル資産の相場をさらに下落させます。同氏によれば、これはマクロ経済要因だけでなく、テクニカルな要因にも影響されます。

    つまり、BTCの200-週移動平均線(WMA) は抵抗線だけでなく、支持線でもあります。ビットコインは、たいてい、通常、この指標を上回っており、稀に下回り、サイクルの底値となります。現在、200-週 WMAは、 $23,250前後でビットコインはこの水準を超えての上昇ができないでいます。

    メルテン氏は、BTCの取引相場の推移は10年にわたる強気市場の終わりを示している可能性があり、もはや、コモディティや株式と比較される主要な資産にならないと結論づけています。同氏によれば、次のBTCの底値は$14,000前後の可能性があり、これは前回の弱気市場のケースと同様で史上最高値から80%の調整を意味することになります。 “現在、$14,000 の可能性があります。しかし、投資家は、$10,000のさらなる急落についても考慮する必要があります”。

    ニックネーム DonAlt のアナリストは、メルテン氏と同じ意見で、弱い株式市場のパフォーマンスでBTC が2022 年の安値を更新すると分析しています。DonAlt は、ビットコインが$18,000-20,000幅を下回り、新たなサイクルの安値をつくると予測しています。“このような取引幅での突破後に上昇が度々見られます。そして、次に$18,000-20,000を突破して、強気の勢いが作られる良いチャンスとなります。$15,000には簡単に下げられるので、ビットコインがどこまで下げるかが唯一の問題です” 。“私の予想はS&P 500 を基にしていますが、ひどそうです” とDonAlt は記述しています。 “この指数は、大きく下落しそうです”

    前回のレビュ-では、ビットコインの競合相手であるイーサリアムにかなり注目しました。これは、とても重要なイベントだからです: 9月15日にETHネットワークで実施されたアルトコインの Proof-of-Work プロトコルから Proof-of-Stake (PoS)の移行を含んだMergeのグローバルな更新です。その後、イーサリアムは20%前後まで下落しました。 既に、多くの専門家の意見を引用してこの可能性については何度も警告していました。

    このコイン相場は、ネットワークのアップグレードに先立ち、ビットコインの上昇をはるかに上回って6月の年初来安値からほぼ2倍になりました。また、Luno仮想通貨取引所の副社長であるビジェイ・アイヤル氏は、 Mergerは既に ETHの “相場に盛り込まれて” いて、“実際のイベントでは“ニュースで売り” の状況になっているとした見方をしています。同氏によれば、トレーダーは、現在、イーサリアムやほかのアルトコインの投資からビットコインに戻っています。 “ビットコインは数か月後、上向きになると予想されているため” とアイヤル氏は述べています。一方で、同氏は“インフレや予想外の金利などマクロ経済環境の変化” でBTC は$18,000を下回ることになり、 コインは$14,000までの水準になるだろうと考えています。

    しかし、インフレや利上げだけがデジタル資産に影響を及ぼす要因ではありません。そこで、今、投資家たちはイーサリアムの規制状況がMerge後に変化するのではないかと思っています。 懸念の理由は、米国証券取引委員会のゲイリー・ゲンスラー委員長の発言です。同氏は、先週、ETHに適用されるProof-of-Stakeモデルの下で運用される暗号資産は証券に分類できると述べました。つまり、これらの資産は規制当局の管轄下に置かれます。ゲンスラー委員長は、イーサリアムの名前を挙げませんでしたが、この場合、イーサリアムがSECの注目を集めることは明らかであり、最終的にどうなるかわかりません。例えば、DataDashのニコラス・メルテン氏は$800-$1,000 範囲を予想していますが、これを下回る下落を除外していません。

    この執筆時(9月23日金曜日夕方)、ビットコインとイーサリアムは、FRBの決定による下げを一部取り戻しています。BTC/USD は、$18,900 ( ETH/USD は$1,320)での取引です。 暗号資産市場の時価総額は9290億ドル(1週間前は9590億ドル)。7日前と同じで、Crypto Fear & Greedインデックスは 20 ポイントで非常に恐怖のままです。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: こちらの内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。


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