October 8, 2022

EUR/USD: EU悪化、米国は順調

  • EUR/USD は、9月28日に再び20年ぶりの安値を更新、0.9535が底値でした。 その後の調整で0.9999まで上昇、10月04日(火)にはパリティ水準に近づきました。しかし、強気筋の喜びは長くは続かず、その後は反落で0.9737の終値でした。

    マクロ経済統計による判断では、弱気筋が長期的に優勢になるでしょう。直近のデーターでは、ヨーロッパの非製造景気指数が49.8から48.8 ポイントに下落です。米国でも同様の指数は下落しましたが、比較すると小さく: 56.9から 56.7ポイントで、予想の56.0 ポイントよりも上回っていました。

    ヨーロッパ地域経済の推進力であるドイツの状況はより悪化しています: ヨーロッパ全体を推し進めるどころか、引き戻し始めたのです。サービス業事業活動指数が47.7から45.0 ポイントへ大幅下落、コンポジットインデックスは、46.9 から 45.7 へ下落です。

    ドイツの貿易に関する8月のデータも深刻な問題を示しています。輸入は3.4%増加で予想の1.1%の3倍以上でした。つまり、ドイツの貿易黒字は34億ユーロから12億ユーロに減少となりました。

    インフレが続いている中での経済の落ち込みの状況はユーロ圏におけるスタグフレーションの脅威を示唆しています。エネルギー価格の上昇もマイナス材料です。OPECやほかの産油国が大幅減産を決定したので、この状況は続く可能性が高くなります。この価格が世界的なインフレの波の最も大きな引き金でした。もう一つのマイナス材料は、EU諸国がロシアとウクライナ紛争地域の近くであり、特に、ロシアのプーチン大統領が核兵器使用で脅し続けていることです。

    米国の状況はかなり良く、このことが全体的なドル高に貢献しています。ロシア-ウクライナの前線からかなり離れており、石油やガスで脅かされることもありません。ADPによると、9月の民間雇用は20万8000人増で、市場予想の20万人を上回りました。非農業部門新規雇用者件数 (NFP) もまた、予想を上回りました: 25万件に対し26万3千件で、米国の失業件数も一ヵ月で3.7% から3.5% へ減少しました。

    労働市場のこのような状況により、FRBは量的引き締め策(QT)によるインフレ対応やドル金利の引き上げが続けられています。アトランタ連銀のボステック総裁は引き締めサイクルが"まだ、序盤" であり、すぐに"反転"する気はしないと警告しました。サンフランシスコ連銀のメアリー・ディリー総裁も同様の発言をしています。 実際に金利がどうなるかは、11月2日の米中央銀行のFOMC(連邦公開市場委員会)の次回会合で明らかになります。

    このレビュー執筆時点の10月7日(金)の夕方、アナリストの意見は次のようになります。アナリストの50%は今後の下落推移の継続、30%は上昇、残りの20%は横ばいを予測しています。D1のトレンド系インジケーターでは、40% が赤、25%が緑、35%がニュートラルグレイです。 オシレーター系では全く異なります: 100% すべてがこのペアの売り推奨です。

    EUR/USD の直近サポートは、0.9700-0.9725、そして、0.9645、0.9580が続き、最終的には9月28日の安値0.9535です。弱気筋の次のターゲットは0.9500。レジスタンスレベルと強気筋のターゲットは次のようになります: 0.9800-0.9825、0.9900、直近の課題は0.9950-1.0020の範囲に戻ることで、次のターゲットの範囲は1.0130-1.0200になります。

    来週については、10月12日の FOMC 会合の前回の議事要旨の公表とECB のクリスティーヌ・ラガルド総裁の発言が予測材料となります。翌日の10月13日(木)には、ドイツの消費者物価指数や米国の消費者市場や労働市場からのデーター発表があります。米国の小売売上高とミシガン大学消費者信頼感指数は、週取引最終日にあたる10月14日(金)に予定されています。

GBP/USD: 英ポンドの不遇

  • 9月23日から26日にかけての衝撃的な崩壊を受けて、英ポンドは米ドルとほぼ匹敵するようになりました。860 ピップスの急落後、1985年の安値を下回る1.0350となりました。

    このような記録的な下げに向かったのは、クワシ・クワーテン英財務大臣が予定していた増税の代わりに国民や法人への税の軽減策を発表したことでした。すなわち、7月には10%を超え、年末には14%になると見込まれているインフレ率、公的債務の増加、ブレグジット以降の蓄積された課題がある状況で、政府は量的緩和(QE)に戻ることを決定したのです。これが、暫く、自国の通貨を下げるには十分となりました。

    予算責任局(OBR) は、この決定に加え、前回の国民支援策やエネルギー価格の上昇を踏まえ、公的債務が今後50年間で現在のGDPの 96%から320% に増加すると推定しています。イギリス議会では、早速、不信任決議案の話題が上がりました。IMFでさえ、驚き、イギリスの内閣にたじろぎました。国民については言うまでもありません: ポンドのさらなる下落を見越して、金や暗号資産の積極的な購入を始めました。ロンドン貴金属協会のブリオンボールドによると、新規開設が2倍以上となりました。さらに、仮想通貨取引所でもBTC/GBPの取引量が2倍に増加したと記録しています。 言い換えれば、大昔から言われる “裏目” となったのです。

    今週のポンドの終値は1.1079でした。オランダの大手金融機関グループのINGのストラテジストによると、債券市場の不安定さ、財政状況の悪化、イギリスの経常収支の状態からポンドの現在のレベルは不安定です。したがって、GBP/USD が1.1000以下に引き戻されると予測しています。 MUFG銀行では、9月末の10日間の水準にまで、また下落すると予測しています。中央値予想では、多くのアナリスト(55%) も弱気の立場です。15%はポンド高、30%が中立です。D1のオシレーター系では100%全てが下向きです。しかし、トレンド系はまちまちです: 35%は、赤、同数が緑、残り30% はグレーです。直近のサポートは、1.0985-1.1000、1.0500-1.0740 と9月26日の安値1.0350。 上昇反転すれば、強気筋は1.1230、 1.1400、1.1470、1.1720、 1.1800 、1.1960でレジスタンスに直面するでしょう。

    イベントカレンダーでは、イギリスの失業率が発表される10月11日(火)が注目です。イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁の発言が同日中にある予定です。

USD/JPY: “急激な円の動きは好ましくない

2022年10月10日‐14日のFXと暗号資産(仮想通貨)の予想1

  • 2週間前の USD/JPY のアナリストの中央値予想が不透明であったことを思い出してみましょう。そして、アナリストの45%が強気の立場で、その反対が45%、残りの10% が中立でした。そして、この不透明さをかなり理解することができました: このペアは、9月26日以来、143.50-145.30の取引推移で、ほとんどが144.00-144.85の狭い取引幅です。 146.00 の高値突破はありません。日本の財務省が24年ぶりに日本銀行(日銀)に命じた弱気筋の願いでもある円高もありません。

    先月は過去最高額の2兆8000億円(193億ドル)がこのためにつぎ込まれました。これにより、日本の外貨準備高は4.2%減の1兆238億ドルでした。一年前は、1兆4090億ドルでした。日本の外貨、外国債、保有している金も減少しています。

    日本のリーダーは、USD/JPY の相場が落ち着いていることに非常に満足していそうです。つまり、日本の岸田文雄首相は、10月7日の最近の介入について"最近の急激な円の動きは好ましくない" と述べていました。そこで、疑問があります: 財務省や日銀は、首相の立場に反して、このような対応をしたのでしょうか? それとも、このようなボラティリティの大きさは想定外だったのでしょうか?

    一方、予想どおり、長期的な円高はなく、先週のUSD/JPY の終値は145.30でした。サポートは、 144.85、 144.20、 143.50、142.60、141.80-142.20、 140.25-140.60。強気筋の No. 1 の課題は、145.00を下回らないようにすること、No. 2 が146.00の高値に急ぐことです。そして、1998年の日米両国による円支援前の146.78がこれに続きます。D1のトレンド系とオシレーター系インジケーターでは100%が緑ですが、オシレーター系では3分の1がこのペアの買われ過ぎを示しています。

    今週は、日本経済の重要な統計発表はなさそうです。なお、トレーダーは、10月10日(月)が祝日であることを覚えておいてください。

暗号資産(仮想通貨): ビットコインは、金のまま。デジタルですけど。

  • The Blockによると、世界的な弱気トレンドにもかかわらずビットコインに積極的な投資家数は2022年の1月から450万人に増加しました。残高が0.01BTCのビットコインアドレス数だけでも、ここ数週間で1070万と過去最高を記録しています (なお、ビットコインは史上最高値から長くドローダウンしていますが、およそ47% のホルダーに利益があります)。

    この動きは、ヨーロッパの深刻な経済崩壊のために、小口のホルダーがリスク分散のためにビットコイン投資を増やしたことによるものです。例として、政府の経済政策の信頼が薄らいだことで9月23日‐26日にポンドが急落したことを挙げれば十分でしょう。この結果、パニックとなった投資家がポンドを金や暗号資産に移し始めました。前回のレビューでは、ビットコインがデジタルゴールドなのかということでした。イギリスの場合、答えはイエスとなります。

    今回の出来事は、従来の金融市場の不安定さが暗号市場に利点をもたらすことを示唆しています。このことは、私たちだけの意見ではありません。クォンタムでジョージ・ソロスの元アソシエイトだったビリオネアのスタンリー・ドラッケンミラー氏は、法定通貨ベースの経済の崩壊がデジタル資産を救済すると予測していました。同氏は、CNBCの協議会でこのことについて述べています。FRBの金融政策の積極的な引締めの状況が2023年の経済を"急激に失速させる" という予測です。

    同氏の考えでは、量的緩和政策や低金利が金融市場のバブルを生み出すことになります。これらの要因が今は停止しているのではなく、逆になっています。FRBは、9 兆ドルのバランスの削減、既に基準金利は4.60%を想定して5回の引き上げで3.25%になりました。“ブラックスワンについて話さなくても心配になります”と同氏は述べています。同氏の意見では、中央銀行が信頼を失うことになれば、暗号資産は“復活のための大きな役割を果たすことになります”。

    スタンレー・ドラッケンミラー氏だけでなく、市場全体が、このような金融引き締めに経済が耐えられなくなることを恐れているのです。モルガンスタンレーによれば、金利上昇に加えて、世界のマネーサプライの縮小率がドルベースで毎月7500億ドルにもなります。これが深刻な景気後退につながっています。インフレ対策の計画から手を引けば、状況を変えることができるのはFRBだけです。将来に向けて、金持ち父さん貧乏父さんのベストセラー作家ロバート・キヨサキ氏は、現在の状況はビットコインやその他の暗号資産を購入する絶好のチャンスだと言っています。 “もっと、買いましょう。FRBが向きを変え金利を下げれば、ほかの人が泣く一方であなたが微笑むことになります” と同氏は述べています。

    ギャラクシーデジタルのマイク・ノボグラッツCEOも同様の予想をしています。同氏は、規制当局が市場の状況を安定させるために、ある時点での量的緩和政策の再開について否定していません。同氏の考えでは、ビットコインは現在のマクロ経済状況下でも、かなり安定しているように見えます。そして、FRBの政策が変更しても、BTC は数年後に$500,000 にとどくことになるでしょう。

    今後については、The Birb Nestの創設者であり、CEOであるArdian Zdunczyk氏が自身の予想をシェアしています。同氏は、過去のデーターを参照にしており、これによれば、BTCは常に第4四半期に成功しています。これに基づけば、投資家には、今後2カ月間にわたりプラスのリターンが予想されます。ただ、Zdunczyk 氏は、これについては誰に対しても保証できるものではないとすぐに懸念を示しています。

    同氏による、年明けに急騰するもう一つの根拠は、コインが200日線のトレンドと比較してわずかに上昇したことです。ジェットコースターのような法定通貨と異なり、ビットコインは$20,000前後で安定しています。そして、すべての市場が今安定を望んでいます。既に景気後退に入っており、株価は下落、IMFの見通しは暗く、中央銀行の政策は不十分であり、疲れ切っているとArdian Zdunczyk氏は述べています。つまり、このような状況だとビットコインが、より魅力的になってくるわけです。

    BTCの相場の安定に対して、マイニング関係も改善しています。 特に、ハッシュレートは過去最高の242 EH/sに達しました。アナリストは、 マイナーにとっての“痛手” である損益分岐点が$18,300と見積もっています。グラスノードの計算よれば、ビットコインがこの価格を下回ると78,400 BTCに清算リスクが及ぶ可能性があるとしています。これはマイニング難易度回帰モデルから導き出されたものです。6月の安値$17,840よりやや高くなります。

    マイナーの残高は78,400 BTCで、この分野での市場参加者がストレスを感じた場合に売却できる最大コイン数です。現在のところ、ほとんどの売却は、マイナーによるPoolin pool関連によるものです。9月には、こちらの企業の代表が流動性の問題について認めています。

    暗号資産ストラテジストでトレーダーのカンタリング・クラーク氏も、株式市場が低迷の中、ビットコインが5年ぶりの安値に急落する可能性があると警告しています。計算では、再び、S&P500株価指数が弱気トレンドになった場合、ビットコインは現在の水準から、およそ40%に下落する可能性があります。 “S&P 500 が次の主要なエリア3,200-3,400 [ピップス]に下げた場合、暗号資産クラッシュは、2-3 倍も大きくなるというのが正しい憶測です。これは、少なくともBTCが過去5年間での最大の突出: $12,000-13,000” だとトレーダーは予測しています。

    しかし、短期的に、ビットコインの強気筋が$20,000の足場を固めることができるなら、市場の自信は回復されるだろうと同氏は考えています。 “局地的な高値を突破できれば、BTC は勢いを取り戻すと思う”と カンタリング・クラーク氏は述べています。

    ソーシャルメディアユーザーは、先週の10月7日は暗号資産市場にとって重要な日になると近頃、熱く議論していました。この理由は、その日に米国の労働市場に関するデーター発表があったからです。CPIと一緒にこの統計から、FRBが次回の11月の会合でどの程度利上げをするか推測することが可能だからです。そして、これは、確実に株式や暗号資産のようなリスク資産の相場に影響を与えます。

    市場がこれらのデーター発表に反応して、リスク資産の相場は下落しました: このレビューの執筆時(10月7日金曜日夕方)、 BTC/USD は$20,000 を下回った$19,610で取引されています。暗号資産の時価総額は946億ドル(1週間前は935億ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスは、1週間で22から23ポイントの1ポイント上昇で 非常に恐怖のままです。

    そして、レビューの最後は、いつもどおり、皆さんに楽観論を後押ししましょう。米国のジャネット・イエレン財務長官によると、暗号資産業界は規制しないままだと不正リスクを伴い、米国金融業界全体に被害を及ぼす恐れがあります。通常ですと、このような声明は脅威として受け止められ、ビットコインをはじめとする暗号資産のマイナス材料となります。しかし、米国の先物市場を規制する商品先物取引委員会(CFTC)は、適切な規制がビットコインの相場に大きなプラス効果を及ぼすと期待しています。CFTCのロスティン・ベーナム委員長は、明白な規制の枠組みがあれば機関投資家の数を増やせると説明しました。

    米政府機関は、まもなく暗号資産業界を規制の中に“含む”ことを迫られるでしょう。ただ、 マイク・ノボグラッツ氏の予想が現実となって、ビットコインは$500,000前後になるのでしょうか?

 

NordFX Analytical Group

 

注意: こちらの内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。


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