November 5, 2022

EUR/USD: より緩やかで、より長期的に、より高く

  • 先週は全体的に大きな想定外の出来事もなく予想通りでした。大きなイベントとしては、11月2日(水)の米連邦準備制度理事会のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を75ベーシスポイント引き上げ(bp)、4.00%に満場一致で決まったことでした。これは、2008年以来の最も高い水準になります。この動向は、ほぼ予想通りです。つまり、引き続き行われた政府側の記者会見が市場関係者にとっての大きな関心事でした。FRBのジェローム・パウエル議長は会合で、インフレは"大幅"に下げる必要はあるが、金融政策のパラメーターは必要に応じて変更できると発言しました。利上げペースが12月から緩やかになる可能性はありますが、最終的な金利水準は従来の予想以上に高くなる可能性が高いことが示唆されました。

    FRBの議長からのこのメッセージの市場の受け取り方は様々でした。一部では、米中央銀行が金融政策のさらなる引き締めを継続させると判断しました。12月の75bpの利上げで5連続の引き上げになると考える人もいます。対照的に、パウエル議長の発言をベーシックステップがもはや75ではなく、50bpであると捉える人もいます。つまり、インフレ対策の方向性は“利上げを急ぐ”から “利上げは緩やかに長期的に”となりました。もっとも、これは、方法が変わっただけで最終目的は同じになります。

    しかし、市場は、ここでのキーワードを“緩やか” と“長期的”だけでなく、“上げる”と判断しています。10月下旬に、先物市場は2023年3月に金利が最高で4.85%になると予測していました。 現在は、最高水準が6月に5.1%になると予想が変わってきています。そして、来年末の金利予想の中央値は、4.46%から4.8%に上昇となりました。

    多くのアナリストはFRBの金融引き締め策(QT)が緩やかになることでライバル通貨がドルの勢いにより効果的に対処できると考えています。現在、他国の中央銀行は、米国と同じペースで利上げする時間を持たずに追い上げています。FRBがより緩やかな動きをするなら、アメリカに対応する国は追い越さないまでも、差を縮めるか、追いつくことになるでしょう。

    FOMC会合に反応して、DXYドルインデックスは 113.00をつけました。米ドルは、日本円を除いたどのG10通貨に対しても高くなっています。その後、反転、11月4日(金)の米国の失業率データーを控えて112.35に下落した後、EUR/USDは 0.9800前後で落ち着きました。

    労働市場データーについては、10月の米国非農業部門雇用者件数 (NFP) は予想の20万件を上回りましたが、9月の36万1千件を下回りました。失業率は、この1ヵ月の3.5% から3.7% の増加に対して予想では3.6%でした。市場は、これをドルにとってのマイナスと受け止め、DXYは 110.80に下落、EUR/USD は上昇、今週の終値は0.9958となりました。

    90%のほとんどのアナリストは、今後も下落すると立場をとり、10%だけが上昇調整を予測しています。D1のオシレーター系は、40%が緑、同数が赤、20%が中立です。トレンド系では、 緑が優勢です。65%が買い推奨、35% が売り推奨です。

    直近のEUR/USD サポートは、0.9865-0.9885、続いて、0.9825、0.9765、0.9700、0.9645、0.9580 と最終的には9月28日の安値0.9535となります。弱気筋の次のターゲットは、0.9500。強気筋の最優先課題は1.0000 のバリアの突破です。その後は、1.0100、1.0250、1.030、 1.0370でレジスタンスに直面することになります。

    来週の注目イベントは、まず、11月8日(火)のユーロ圏の小売売上高の発表です。11月10日(火)は消費者市場 (CPI) と米国の労働市場データーがあります。そして、11月11日(金)にドイツのCPIとミシガン大学消費者信頼感指数が明らかになります。

GBP/USD: イングランド銀行はポンドを救うことに失敗

  • 米国の引き締め策が特定の通貨を助けるようなら、ポンドは、このうちの一つではなさそうです。イングランド銀行(BoE)もFRBと同じく、11月3日(木)の会合で政策金利を2.25% から 3.00%へ引き上げました。これは、1980年代の後半以来、一度の引き上げで最も大きな水準でした。しかし、これはイギリス通貨に貢献せず、下落は続き、週安値は1.1144前後となりました。

    新たな首相が選ばれ、税の削減が放棄され、利上げに至ったようです。投資家は、何をほかに求めているのでしょうか? まずは、このペースでの利上げが継続されることについての確信を欲しがっています。しかし、そのような確証はありません。

    ジェローム・パウエル議長に続いて、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は将来的に利上げペースを落とすことを示唆しました。つまり、ドルは、このパラメーターで引き続きリードすることになるでしょう。ベイリー総裁によると、1970年代のような崩壊の可能性は低いですが、景気後退が長引く可能性があるため政府は慎重に対応していかなければなりません。インフレを打ち破ることに躍起になって経済の首を絞めたり、労働市場を下げたりしないことが重要です。銀行のエコノミスト予想では、GDP は今年の後期には0.75%まで減少となるでしょう。また、減少は2024年の半ばまで続くことになります。

    投資家は、先週、発表された英小売連合(BRC)の既存店売上高にも落胆しました。つまり、10月の既存店平均価格は5.5%の予想に対して、実際は、6.6%の増加でした。とりわけ、食料品価格は. 11.6%まで上昇しており、 “フードバスケット”は 9.4%増でした。 BRCよると、次回、インフレ率が上昇する理由は以前と同じです: ロシア制裁におけるエネルギー供給危機と専門的労働人材不足による継続的な賃上げ。

    このような厳しい状況で、イングランド銀行は、一方にだけ固執することができず、金融引き締め(QT) と緩和(QE) 政策を交互におこなうことでバランスをとろうとしています。しかし、保証はなく、このようなやり方はイギリス通貨の相場のボラティリティーを大きくする原因となります。

    米国労働市場の暗いデーターにより、GBP/USD は先週の最後には上方調整となり、終値は1.1373でした。しかし、オランダ最大手金融グループのINGストラテジストは、すぐに1.1000 水準になると考えています。また、長期的な予測では、明るい兆しがいくつかあります。例えば、オーストラリアのウェストパック銀行の エコノミストは、ポンドは2023年末には1.2000で取引され、2024年の年末には1.2700 なると予測しています。

    今後のアナリストの中央値予想では、強気筋に対する弱気筋の優位性は些細なものです: 55% 対 45%。D1のオシレーター系では、25%が緑、 40%が赤、35% はグレーです。トレンド系では、65% が赤、35% が緑。イギリス通貨のサポートは、1.1350、 1.1230、1.1150、1.1100、1.1060、 1.0985-1.1000、1.0750、1.0500 と9月26日の安値1.0350。このペアが上昇すれば、強気筋は、1.1435、1.1475-1.1500、1.1560、1.1600-1.1625、 1.1645、1.1720、 1.1830、1.1900、1.1960、1.2135、1.2200でレジスタンスに直面します。

    来週のイベントでは、11月11日(金)のイギリスのGDPの発表に関心が集まっています。予想は暗く、2022年第3四半期の予見では-0.1%減 (前期+0.2%)。

USD/JPY: 日銀の介入: ある、それとも、ない

  • 10月末の日本銀行(日銀)の為替介入は円の安定に貢献して、USD/JPY は145.30-148.85の中央の146.64で5日間を終えました。また、11月4日(金)に鈴木俊一財務大臣は、政府が介入をすることで円を特定水準に誘導する意図がないことを発言しました。なお、為替レートは、ファンダメンタル指標や日銀による金融政策に反応して安定した動きをするべきです。

    この発言は、新たな介入の可能性がなく、日銀が超ハト派的レートのまま、マイナス金利-0.1%を維持するため、円に下落圧力をかけるかもしれません。

    10月21日に USD/JPY が32年ぶりの151.94 の高値をつけたことを思い出してください。しかし、数分もしないうちに、151.63 から146.24に500ポイント以上暴落しました。ファイナンシャルタイムズによれば、日本銀行は円をサポートするために少なくとも300億ドルを売却したようです。この介入後、反発して、再び、急騰しました: 明らかに300億ドルでは十分ではありませんでした。このペアは145.48に下落したため、新たな介入が10月24日(月)にありました。10月28日の取引終了の鐘は147.40 で鳴りました。1週間後の11月4日は、そこから100ポイント以下の146.64が終値でした。

    65%のアナリストは、USD/JPY が、また、150.00水準をつけようとし、成功すれば、152.00を上回る上昇になることを除外していません。25%は、日本の中央銀行が、一回、あるいは複数回の介入をおこなうと考えているため、このペアが下落傾向であるとした立場です。10% は横ばい予想です。D1のオシレーター系では様々です: 20% は上向き、40% は下向き、40% はグレーの中立です。トレンド系では、緑と赤が50% 対50%です。

    直近のサポートは、146.40、そして、145.30、143.75、 140.60、 140.00、 138.35-139.05 、137.40。レジスタンスレベルは、146.85、147.50、 147.90-148.00、 148.45-148.85、149.45、150.00、 151.55。 強気筋の目標は、上昇して、152.00の高値を上回る足固めをすることです。そして、次が、1990年の高値である158.00前後となります。

    今週は、日本経済に関する重要な統計発表の予定はありません。

暗号資産(仮想通貨): BTC/ETH – 誰が勝つ?

2022年11月7日‐11日のFXと暗号資産(仮想通貨)の予想1

  • まずは、誕生日から始めましょう。2022年10月31日(月)はビットコイン誕生から14年目の記念日です。サトシ・ナカモトが2008年のこの日にビットコインホワイトペーパーを公表しました。ホワイトペーパーには、金融テクノロジーの世界に革命を起こすことになるピアツーピア決済システムの仕組みが書かれていました。ビットコインネットワークは2009年1月に立ち上がりました。その2年後、サトシ・ナカモトは消え、巨大な業界の根拠となる文書を誰か書いたのかは世間の知る由もなくなりました。個人なのか、グループなのかもわかりません。

    ビットコインは、この14年間実に波乱万丈でした。上昇して、下落して、また、上昇して、再び下落しました。絶頂を極め、奈落の底に落ちました。ゼロから始まり、2021年11月には$70,000 近くになりました。そして、現在は、1年で70%も下落して$20,000圏内で取引されています。

    もちろん、以前に何があったかを知ることは重要です。しかし、未来の方が私たちとってもっと気になることです。そして、ここではアナリスト予想が不安定なのと同じようにビットコインの相場も不安定です。数回にわたる暗号資産市場の暴落が避けられないという人もいれば、予想以上の急騰があると期待する人もいます。例えば、ARKインベストの投資マネージャーであるキャッシー・ウッド氏は ビットコインの時価総額が4.5兆ドル(現在は約3.9億ドル)まで上昇して米ドルを含めたほとんどの法定通貨よりも価値があるようになると信じています。

    コインベースのCEOであるブライアン・アームストロング氏もこの見解に同意しており、この5年‐10年の厳しい状況に投資家にとってビットコインは安心を与える資産となると期待しています。こちらのビリオネアは、BTCの時価総額が本格的なヘッジ資産としては、まだ、十分な規模ではないと考えています。しかし、同氏によると、2030年頃にはすべてが変わり、暗号資産市場は大きく上昇して、“世界経済の大きなシャアを占める”ことになります。ビットコインは、その時、デジタルゴールドとして扱われ、投資することで危機を免れることができるのです。

    ゴールドマン・サックスの元エグゼクティブでマクロ投資家のラウル・パル氏も、この10-15年で暗号資産市場の時価総額が300兆ドルにまで上昇すると見ています。同氏によれば、ほぼすべての金融市場の時価総額は 200 兆ドルから 300 兆ドルです。パル氏は、歴史的に “より速く、最も大きな上昇” で暗号資産もこのレベルになると考えています。同氏は、マクロ経済の混乱が終われば、すぐに、暗号資産の時価総額は急騰すると確信しています。

    FRBが再利上げを決定した後、リスク資産は大きく下げました。しかし、米労働市場の残念なデーターによって救われました。この結果、この予想の執筆時の11月4日(金)の夕方、BTC/USDは、S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック株式指数と共に反発して、$21,180で取引されており、$21,000で足固めをしようとしています。しかし、成功できるかは、全くわかりません。主なリスク資産が再び下落すれば、ビットコインもそれに続く可能性があります。

    Kitcoニュースのアナリスト、ジム・ワイコフ氏は暗号資産市場でビットコインは成功すると考えています。同氏の見解では、テクニカルに的に、強気筋が現在、弱気筋を支配しています。同氏は、相場が安定した上昇局面を迎える前に、今後、市場での安定したフォームになることを除外していません。ワイコフ氏は、今後、数週間ビットコインのボラティリティーが大きくなることも排除していません。

    有名なアナリスト、別名Plan B も、ビットコインが新しい上昇サイクルに入る寸前にあると考えています。こちらのアナリストは、コインの上昇に二つの理由を挙げています。一つは、ビットコインの直近の上昇のおかげで、有効なコインの60% を保有する投資家が利益を上げていることです。PlanBによれば、この要因が将来的なビットコインの上昇を示しています。次に、RSI インデックスがビットコインの上昇に貢献します。このテクニカル指標が最近、史上最低水準となっているため、市場は非常に売られ過ぎ圏内となっています。つまり、反転は避けられません。

    グラスノードの専門家たちもPlan Bに同意見です。最新レポートでは、ビットコイン市場は現在蓄積段階であり、大きな強気相場につながるとのことです。現時点では、ビットコインの価値が3倍以上に急騰する前の2019年の初めに似ています。

    しかし、暗号資産市場が上昇するには、機関投資家の売り越しや冬眠状態から買い越しに変わる必要があります。個人投資家(エビと呼ばれる)のムードも大事ですが、クジラのムードはもっと大事になります。

    アメリカで最も伝統のあるBNY メロンは機関投資家の70% が"認識され、信頼できる機関による保護と執行"などのある一定の条件下であるものの暗号資産投資を増加させるといいます。BNY メロンのレポートでは、"ほぼ全ての機関投資家(91%)が、トークン化した商品に関心があります " と指摘しています。しかし、その一方で、暗号資産市場の安全な参入を模索しており、利益を求めた無謀な投資はしません。

    一般人については、Grayscale Investment が実施した別の調査結果が参考になります。一般的なアメリカ人の52% だけが、暗号資産が将来的な金融財産であると認めています。回答者の44%だけが、デジタル資産の投資を検討していると述べました。同時に、回答者の多く(81%) が暗号資産には明確な規制が必要であると認めています。

    暗号資産に規制は良いことなのか、それとも、悪いことなのかについては、未だに疑問が残っています。例えば、多くのアナリストはSEC(米国証券取引委員会)からイーサリアムへの注目が高まることをマイナス材料として捉えています。

    イーサリアムが PoW アルゴリズムからPoSへ移行してブロック構築の責任がマイナーからバリデーターに移ってから1ヶ月半が経ちました。デベロッパーは、このアルゴリズム変更の主な利点は、ネットワークのエネルギー消費がピーク時の112TWh/年から0.01TWh/年に減少したことだと考えています。ETHについては、事実上マイナーによる環境汚染に関する環境保護者からのすべての要求がほぼ無くなることになります。しかし、この措置の結果、サトシ・ナカモトが導入した暗号資産の概念からどんどん遠ざかることになります: ネットワークはより中央集権的になり、SECはイーサリアムから暗号通貨の地位を奪って証券として置き換え、より厳しく規制の対象としていきたいのです。SEC のゲーリー・ゲンスラー委員長はPoS移行日に、このことをほのめかしていました。

    また、イーサリアムだけが金融局の対象になるというのは考えが甘いでしょう。明らかに、ビットコインも制裁対象です。つまり、これに関しては両方とも同等の立場にあるわけです。しかし、ネットワークの発展とその展望という点では、ここ数カ月でイーサリアムが明らかにビットコインを追い越しています。これは、BTC/ETHのチャートで一目瞭然です。6月中旬から 20.3 の高値から13.0 へ下落、そして、今年初めの水準まで戻しました。

    このレビューの執筆時点の11月4日(金)の夕方、BTC/USD は$21,180 付近、ETH/USD - $1,650での取引です。暗号資産市場の時価総額は、1.055 兆ドル (1 週間前は 1.005 兆ドル) です。Crypto Fear & Greed インデックスは、7日間で変わらず、恐怖のゾーンで30ポイントです。インデックスのデベロッパーによると、このような時にロングポジションを建てることに一考の価値があるといいます。しかし、私たちの意見では、状況が不安定なので、トレーダーは出来る限り慎重になるべきだと思います。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: こちらの内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。


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