January 21, 2023

EUR/USD: 嵐の前の静けさ

2023年1月23日‐27日のFXと暗号資産(仮想通貨)の予想1

  • DXYドルインデックス(主要6通貨バスケットに対するUSD の比率) は1月12日以来、かなり狭い範囲での推移です。1月18日(水)は米国の小売売上高に関するデータが発表されたため、ボラティリティがわずかに大きくなりました。しかし、すぐに全てが正常に戻り、DXYは102.00-102.50での横ばいの推移が続きました。 EUR/USD も同様な推移で月曜日に1.0833で始まり、1.0855で5日間を終えました。

    このような動向は、市場が既に起きそうなことを相場に組み込んでいることを示唆しています。これには、インフレ率の鈍化、景気後退の可能性、米連邦準備制度理事会の金融政策の変更の見通しなどが含まれます。上昇するにはきっかけが必要ですが、これには2月1日のFOMC(連邦公開市場委員会)とこれに続くFRB運営陣の発言が見込まれます。それまでは、重要なマクロ統計は米国の GDP データ発表のみとなります。この指標は2月26日に発表されますが、米国経済の成長が鈍化することが見込まれます (予測は、前四半期の 3.2% に対して 2.6-2.8%)。 

    市場関係者は2月のFOMCでどの程度の利上げをするか引き続き注目しています。可能性としては二つあります: 25 ベーシスポイント、もしくは、50ベーシスポイント (bp)。ミッシェル・ボウマン理事、サンフランシスコ連邦準備銀行(FRB)のメアリー・デイリー総裁、フィラデルフィア連邦準備銀行のパトリック・パーカー総裁は25 bpについて発言していました。1月19日(木)のラエル・ブレイナード副議長は、このどちらについても明確な発言をしていません。副議長は、2023年のピークレートについても語ることはありませんでした。しかし、インフレ目標を2.0%へ確実に戻すには政府は引き締めを続けるべきだと述べています。

    副議長の発言は1カ月前にインフレが安定した下落傾向に落ち着くまではピークにレートを維持すると発言したジェローム・パウエルFRB議長と意見が一致しています。議長の意見は、政策金利を2023年に5.1%まで引き上げ、2024年まで これを維持することです。

    12月の市場コンセンサス予想も同じ5.10%でした。しかし、市場は FRBを信じることを止め、予想は4.90%に下落しています。アナリストも中にはピーク時のレートが4.75% を上回ることは全くないと予想しています。さらに、2023年末には4.50%に引き下げることさえあるかもしれません。現時点ですでに4.50%であることを考慮すると、このようなわずかな引き上げはドルにとってのメリットにはなりませんが、DXYバスケットやリスク資産に相反する通貨を押し上げることになります。

    ユーロに関しては、スワップ市場は2月2日にECBが100%に近い確率で50bpの利上げをおこない、3月に同様の引き上げをする確率は70%だと推測しています。

    欧州規制当局のクリスティーヌ・ラガルド総裁は1月19日(木)のダボス会議(スイス)の世界経済フォーラムでインフレ率が高すぎるままなのでECBはインフレ抑制のための努力を怠らないと主張しました。ラガルド総裁の同僚であり、ECB理事会メンバーのオランダの銀行のクラース・ノット総裁は、インフレ状況が依然として満足のいくものではなく、市場が今後 50bp の利上げが1 回だけで済むと予想しているのは間違っていると木曜日に述べています。クラース・ノット総裁は数回の利上げになると発言しています。

    このような発言がユーロ強気派に希望を与えます。しかし、欧州関係者には、より慎重な立場をとる人もいます。フランス銀行の フランソワ・ビルロワ総裁は3月の利上げについて話すのは時期尚早だと発言しました。この発言がECBが25bpsになるようだという噂になりました。

    EUR/USD の今後が2月1-2日に決定するのは明らかです。一方、 40%のアナリストはユーロの上昇が続き、今後数日、このペアが上昇することを予想しています。50%のアナリストはドルが下げを取り戻すかもしれないと予想しています。残りの10%のアナリストは FRBとECBの会合を控えて一休止だと予想しています。D1のインジケーターでは異なっています: トレンド系の100% が緑です。オシレーター系では65%で、20%が買われ過ぎ のシグナル、残り15% はグレーです。このペアの直近のサポートは、1.0800、その後は1.0740-1.0775、 1.0700、1.0620-1.0680、1.0560、1.0480-1.0500。強気筋は 1.0865、1.0935、1.0985-1.1010、1.1130の水準でレジスタンスに直面して、1.1260-1.1360 の段階で足場を固めようとするでしょう。

    中国では、来週、春節を迎えます。中国のトレーダーの方々、おめでとうございます。米国とユーロ圏に関しては、次のイベントが予定されています。1月23日(月)は、ECB のクリスティーヌ・ラガルド総裁の発言があります。翌日は、ドイツとユーロ圏全体の製造業における購買担当指数(PMI 、S&Pグローバル) の発表があります。1月25日(水)は、ドイツの景況感指数(IFO) の発表があります。既に述べましたが、米国のGDPは木曜日に明らかにされ、また、この日は消費者市場や労働市場からの多くのデータが明らかになります。そして、個人消費における家計支出が1月27日(金)の取引最終日に発表されます。

GBP/USD: ポンドは前向き予想

  • 米国と同じく、イギリスの小売売上高も減少しました。12月は-1.0% (mom) 減少で予想の+0.5%を大きく下回りました。アナリストはイギリス国内の実質消費は、2020年から2022年にかけてGDPを大きく上回っていましたがインフレ率の上昇で急激に止まったと指摘しています。そして、2023年はこの減少に穴埋めをする時期となることが予想されます。

    しかし、世界大手金融コングロマリットの一つであるHSBCは、それほど悪くないといいます。“イギリスのインフレ率はピークに達してコンセンサス予測よりもさらに低くなることが見込まれる”と同社は記述しており、 “現在、英銀がそれほど引き締めに積極的でないなら、今年後半に大きく反対に変わることはないと見込まれます。そして、これは最終的に今後数ヶ月のイギリスポンドにあまりないプラス材料となる可能性があります。国内データが予想より良い方向もイギリスポンドに好材料です"。 通貨安と利上げの組み合わせにより経済パフォーマンスは急速に改善されているとアナリストは述べています。昨年の第3四半期のイギリスの貿易収支が2021年12月以来の最低水準の赤字を示したと言えば十分でしょう。HSBC は、また、世界経済のリスク選好の増加がイギリス通貨にもまたプラスになると見ています

    EUR/USD の横ばい傾向とは対照的にイギリス通貨は上昇を示しました: GBP/USD は1月18日に12月の高値1.2435にまで近づきました。ポンドの強気派はFRBの動きが消極的になるのとは対照的にイングランド銀行(英銀)の金融政策の引き締めの継続予想に刺激を受けています。現在の3.50%から金利は夏までに4.50%まで上昇する可能性があると予測されています。そして、この過程までの重要な日が次回のイングランド銀行の会合が開催される2月2日だと見込まれています。

    先週の終値は1.2395でした。今後のGBP/USD の中央値予想は次のようになっています: アナリストの50% はポンドが上げ止まっていく頃だと考え下落を待ちわびています。15% のアナリストだけが強気派で35%は中立の立場です。 D1のオシレーター系では、85%が緑で15%がこのペアの買われ過ぎを示しています。トレンド系では100% が緑です。サポートは1.2330、1.2250-1.2270、1.2200-1.2210、1.2145、1.2085-1.2115、1.2025、1.1960、1.1900、 1.1800-1.1840。このペアが上昇すると1.2435-1.2450、 1.2510、1.2575-1.2610、 1.2700, 1.2750 、1.2940でレジスタンスに直面します。

    来週のイギリス経済の注目はイギリスの購買担当者景気指数(PMI)が発表される1月24日(火)です。

USD/JPY: 円もプラスの見通し

  • 日本銀行が 1 月 18 日の会合で政策金利を -0.1% のマイナス水準に据え置いたのにもかかわらず、円はまだDXY通貨の中でも大きな存在です。 USD/JPY は月曜日に127.21の安値更新でした。昨年の 5月以来の下げになります。これは、ドルや米国債利回り(米国/日本のスプレッドは2022年8-9月が最小)を背景に起こったことを思い出してください。

    しかし、このペアは上昇調整となり、週の終値は129.57でした。ただ、多くのアナリストによると、加速する国内のインフレデータが日本銀行(日銀)に金融政策を引き締めさせるままでいます。

    全体的な12月国内インフレ率は4.0% (前年同月比)で11月の3.8%から加速しています。 これは、1991年1月以来の最も高い水準です。先月の日本の生鮮食料品を除く消費者物価指数(中央銀行により実施されている主要な指標) は前年同月比で4.0%に上昇しました。これは1981年12月以来の最も高い水準です。この指標は、9ヶ月連続で日銀の目標値である2%を超えています。

    市場は、4月8日以降に金融政策が大きく変化することを期待しています。日銀の黒田東彦総裁が退任する日であり、後任者はより厳しい立場の候補者である可能性があります。岸田文雄総理が後任者を2月中に選出するようです。黒田総裁の最後の会合は3月10日で4月28日の会合では中央銀行の新総裁によって開催されます。

    さらなる円高材料には、日銀での変化に加え、円安による日本の国際収支の改善や観光の再開と安全資産としての円の復活や国内投資家による海外投資の為替ヘッジが考えられます。ダンスケ銀行のエコノミストは今後数ヶ月でUSD/JPY は125.00まで下落すると予測しています。なお、国際的な金融グループのノルデア銀行のストラテジストによれば、2023年末には120.00 まで落ち込むことが見込まれています。

    アナリストの中央予想値もダンスケ銀行やノルデア銀行の予想と一致しています。USD/JPY の今後の予想は次のとおりです: 75% のアナリストがさらなる下落の支持。残り25% は中立。今回、このペアの上昇支持はありませんでした。D1のオシレーター系では、10%が上向き、75%が下向き、 15%が横向きです。 トレンド系では、15% が上向き、85%が反対に向いています。 直近のサポートは、129.30、これに続いて、128.90、127.75-128.00、127.00-127.25、 126.35-126.55、 125.00、 121.65-121.85。レジスタンスは、130.45、131.25、132.00、 132.80、 133.60、134.40 、そして 137.50。

    来週のイベントとしては、1月23日(月)に発表される日銀金融政策決定会合報告書が注目されます。

暗号資産: ビットコインが人工知能を超えて勝利

  • 先週のチャートを見ると、強気な楽観主義者の爆発的な増加がほぼゼロだったと見られます。1月9日から1月14日にかけて米国のインフレ率(CPI)の低下が発表されたことからビットコインが強力な後押しを受けたことを振り返ってみてください。また、FTXの清算人が50億ドル相当の流動資産を回収したことは強気派の貯金箱に貢献しました。多くのビットコイン愛好者によれば、暗号資産市場は弱気な状態のままのマクロ経済の今後をあまり気にする必要がなくなります。

    しかし、この最後の発言は間違っている可能性が高く、まだ、気にするべきでしょう。デジタル資産の上昇は、リスク資産に対する世界的な投資家のリスク選好が高まった結果です。これは、BTC/USD の相場と株価指数、S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックと比較すればわかります。

    ビットコインが今回は主に利益を受けましたが、これはボラティリティが大きいことによるものでした。そして、繰り返し述べていますが、このような状況で株式市場と暗号資産の両方の動きを決定する主な要因はドルの金利変動を含めた米連邦準備制度理事会の金融政策です。

    ビットコインは、2023年1月1日から18日までに37%以上の値上がりで$22,715の高値になりました。時価総額が久しぶりに1兆ドルを超えました。市場参加者の意気込みによりBTCの取引量は一週間で2倍に増加しました: 現物市場では110億ドルにまで増加。しかし、アナリストのクレイグ・アーラム氏によれば、現在の強気トレンドがさらなる上昇するファンダメンタル的な理由は特にないそうです。

    一月前半の市場の伸び率は、弱気筋には驚きでした。統計では、弱気筋には先週だけでも約12億ドルの損失でした。これは、BTCだけです。 決済されたショート ポジションの量は、ロングポジションの6倍を超えました。ただ、これら全ては中小の投資家の支出によるものです。1000BTCまでを保有するビットコインアドレスが激増しました。しかし、機関投資家のクジラ (1000 BTC以上) は、特に反応せず、その雄大で冷静さでエビの喧騒を眺めていました。1月10日以降のビットコインファンドへの流入は1000万ドル前後にとどまり、クジラが保有するウォレット数が減少していると言えば十分でしょう。

    多くの機関投資家が十分な規制がないため暗号市場への参入を思いとどまっていることを既に述べました。そして、現在、米国議会はこの問題を解決するために、新たな特別小委員会まで設置しました。しかし、ベンチャー企業のO'LearyのCEOであり、 テレビ番組のShark Tank の司会者であるケビン・オレアリー氏は強力な規制の枠組を取り組んでも業界の問題解決や不正行為の規模は変わらないと考えています。同氏は、今年はさらに多くの暗号資産企業や取引所が崩壊すると考えています。同氏の考えでは、この理由は人々が無知であることだといいます。

    それでは、予想を数字で見ていきましょう。人気の暗号資産YouTuberであるベン・アームストロング氏は、ビットコインの価格が2月末までに$30,000 に跳ね上がると信じています。マイナーが積極的に利益確保のために最近、資産を売却しているにもかかわらず実現することになるでしょう。

    とりわけ、伝説の株式トレーダー兼アナリストで2018年のビットコインの調整を当てたピーター・ブラント氏も、ビットコインの推移について予測をしています。同氏によれば、BTC は今後$25,000 付近に上昇するといいます。その後、春が終わるまで調整されることは排除できませんが、暗号通貨にとっては新たな上昇のための力となります。つまり、ビットコインは2023年後半には、前回の高値$68,000 付近となるでしょう。そして、再度調整や高値更新される可能性があります。ピーター・ブラント氏は、長期的には、2025年初めまでにビットコインの$150,000 の上昇を度外視していません。しかし、同氏はこれが自身の推測にほかならないと警告しています。同氏によれば、ビットコインが今後どのように推移するかは誰もわからないということです。

    ビットコインの価格は今後、2-3年で$50,000-100,000 に上昇する見込みがあります。この意見は、投資会社スカイブリッジ・キャピタルの創設者であるアンソニー・スカラムーチ氏がCNBCのインタビューで述べたものです。同氏は、2023年をビットコインの“回復の年” といいました。もちろん、米連邦準備制度理事会の決定はデジタルゴールドの相場に影響を与えます。金融局が年半ばに経済刺激策のために対策をとれば、ビットコイン上昇のために良い弾みとなります。対策は講じられるのでしょうか?

    ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアストラテジストのマイク・マクグローン氏は、暗号資産市場が既に底入れしたということに同意見です。しかし、FRBの金融政策に対する同氏の意見は大きく異なります。マクグローン氏は、ビットコインの相場が$5,000から反転した2018年の推移を連想させるチャートだと注目しています。しかし、現在のマクロ経済状況と異なるため、ビットコインが現在の価格で止まることもあります。つまり、NASDAQインデックスが下落のままの可能性があり、近年、ビットコインと株式市場の相関がかなり重要になっています。 “世界の市場から流動性資産を引き出していますが、これには理由があります。株式などのリスク資産が上昇すれば、流動性資産は中央銀行に制限されたままになります。2018 年との大きな違いは、当時はFRBが政策の緩和をはじめていましたが、現在は緩和が見られないことです” とブルームバーグのストラテジストは説明しました。

    “NASDAQを見て下さい、チャートは200-週SMAを突破しています。これは、今までに3回だけで、FRBが常に金融緩和政策を講じています。しかし、米中央銀行を現在、引き締めをしています。全体としてはビットコインにとって楽観的ですが、現在は前例のない状態なので何が起きても不思議ではありません” とマクグローン氏は述べています。

    上述でピーター・ブラント氏がビットコインの動きについて正確に予測することがほぼ不可能であることを述べています。人口知能(AI)のChatGPTテストプラットフォームは同氏の意見を支持しました。 このプラットフォームは資産取引気を含め幅広いタスクを高い精度でおこなうことで人気があります。

    Finboldの専門家は、人工知能に2030年のビットコイン価格について尋ねてみました。Finbold はChatGPTが過去のBTC価格データ、市場データ、テクニカルおよびファンダメンタル分析、指標などを基にしてかなり正確な予想ができると連想していました。しかし、AI は予想をしませんでした。正確な価格を抽出することはできず、長期的なビットコインの価格を挙げることは困難であることを認めました。AI は理由として市場のボラティリティが大きいことと規制が不透明であることを挙げています。しかし、ピーター・ブラント氏のように、ビットコインが今後数年で上昇する可能性があることを示しています。これは、技術の発展、暗号資産の成熟、大量流通によって実現するものです。

    デジタル市場の将来は確かに漠然としています。ただ、現在については正確にお伝えすることができます。つまり、このレビュー執筆時点(1月20日金曜日夕方)、BTC/USD は$22,700 圏内で取引されています。暗号資産市場の時価総額は1兆3800億ドル(1週間前は0兆968億ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは、恐怖のゾーンを去り、現在は51 ポイント(一週間前は46ポイント)で中央ステージです。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。


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