May 28, 2023

EUR/USD: ドルは米国の債務不履行を控えて

  • 5月4日からドルは上昇しています。先週の5月26日、DXYインデックスは104.34となりました。2023年3月中旬ぶりです。米ドルを上昇させ、EUR/USD を押し下げているものは何でしょうか? コメルツ銀行のアナリストによると、"オプション市場の完全なる静けさはEUR/USD の為替相場の原動力が米国の債務上限問題の交渉よりも金融政策の判断であることを示唆しています"。 6月14日のFOMC(連邦公開市場委員会)の利上げ確率は5月に高くなっていることに注目です。月初めは利上げの確率は0%に近いものでしたが、月末では50%になっています。米国経済は、ほかの国の経済と比較すると非常によく持ちこたえており、融資の悪化は当初懸念されていたほど深刻でも急激なものではありませんでした。

    もちろん、50%は100%には、ほど遠いものです。また、5月24日(水)に公表されたFOMCの最新議事録では、追加金融引き締めの可能性に関する重要なフレーズはありませんでした。 なお、この文章では利上げについて委員の意見が分かれていることも明らかになりました。しかし、これにもかかわらず、米国の債務不履行の想定を見越した安全資産への移行がドルを支え続けています。

    米国政府は、すでに31兆ドルを超える債務を抱えています。議会が6月1日までに許容限度額を引き上げなければ、米国は債務不履行を発表することになります。ジャネット・イエレン財務長官は、すでに何度もこれについて警告しています。しかし、実際の債務不履行の日は6月1日の"Xデイ "から若干ずれる可能性があります。例えば、ドイツ銀行は7月末、モルガン・スタンレーは6月7日から14日、または7月21日-28日のいずれかを挙げており、ゴールドマン・サックスは9月末とさえ示しています。

    イギリスの雑誌エコノミストの著者は、米国の債務不履行が世界の株式市場を暴落させ、世界経済はパニックに陥ると読者に警告しています。ホワイトハウス経済諮問委員会の試算によると、株式市場は危機のはじめの月に45%の急落見込みです。 ムーディーズでは、約20%の下落で失業率は5%増加すると予想しています。

    政治に関しては、債務上限の引き上げの議論が続いています。5月24日(水)、米国下院議長のケビン・マッカーシー氏は、合意する前にやるべきことがまだあると述べています。しかし、議長は米国が債務不履行を発表しないとも付け加えています。ジョー・バイデン大統領も共和党と合意に達する自信を示しています。来年は米国では選挙なので、合意は両党のためでもあります。

    世界銀行総裁のデビッド・マルパス氏は、CNNのインタビューで債務不履行は想定外であり、このような状況は数年ごとにあると述べています (参考までに、米国債務上限問題は1917 年からあり、1960年から78回引き上げられています)。

    前述どおり、統計では米国経済を比較的信頼している感じを示しています。第1四半期のGDP予想は1.1%から1.3%に上方修正されました。また、失業保険新規申請件数は予想の250,000件に対して実際は229,000件の減少でした。 耐久財受注は1.1%増加です。この数字は3月の3.3%増に続き、1.0% の減少を見込んでいた市場予想を上回るものでした。最後に、シカゴ連銀が発表した4月の全米活動指数は、-0.37から+0.07に上昇でした。

    投資銀行のゴールドマン・サックスは、ほかに代わりになるような魅力的な通貨がないため、今後もドル高予想です。同銀行の専門家によれば、現在、世界にはユーロを含め、ドルの地位に対抗するような通貨はありません。アメリカ経済と異なり、ユーロ圏では投資家を喜ばせることができませんでした。第1四半期のドイツのGDPは、事前予想が-0.1%であったのに対し、現実は-0.3%の減少を示しました。また、ドイツの製造業購買担当者景気指数(PMI)は減少(前回44.5、予想45.0に対し42.9)、景気指数(IFO)も減少(前回93.4、予想93.0に対し91.7)でした。

    週明けに1.0805でスタートしたEUR/USD は、5月25日には1.0701の今週の安値をつけ、5日間の取引終了では(5月26日夕方)、 1.0725付近です。直近の見通しでは、今のところ、アナリストの大半 (55%)が上方調整を予想しています。 20% はドル高が進むとする一方で、残りの25%は中立の立場です。 日足チャート(D1)の指標ではドルが優勢です: オシレーター系の100%は赤 (このうち3分の1が買われ過ぎを示していますが)、トレンド系では85%です (15%が緑)。直近のサポートは、1.0680-1.0710付近に続いて、1.0620と1.0490-1.0525です。強気筋は、1.0800-1.0835に続いて、 1.0865、 1.0895-1.0925、1.0985、1.1045、1.1090-1.1110、1.1230、1.1280、1.1355-1.1390でレジスタンスに直面するでしょう。

    来週はいくつか注目のイベントがあります。5月30日(火)には、米国の消費者信頼感指数の発表があります。翌日は、失業率と消費者物価指数(CPI)、木曜日は、ドイツの非製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表されます。6月1日には、ユーロ圏の消費者物価指数(CPI)速報値や欧州中央銀行の金融政策委員会の議事録が公表されます。これに加えて、労働市場や米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業PMIなど多くの米経済指標の発表があります。従来通り、夏の最初の金曜日には失業率や非農業部門雇用者数など米国の労働市場統計があります。なお、トレーダーは5月29日(月)が米国のメモリアルデーのため、取引がないことに注意しましょう。

GBP/USD: 一進一退

  • 確かに、最近の GBP/USD は一進一退です。一見、下落しているように見えますが、チャートよく見ると、5月26日(金)の終値は、4月と一週間前と同じ水準です。その一方で、ドル高がこのペアを押し下げています。他方では、インフレのためイングランド銀行(BoE)が利上げ継続を促すという期待が奈落への急落を防いでいます。

    イギリスの消費者物価指数(CPI)は、予想を大幅に上回る結果となりました。4月の発表では、消費者物価が前月の0.8%から1.2%の上昇でした。コアCPIは、数年ぶりの高い水準で予想の6.2%対して、 前年比6.8%でした。年間インフレ率は10.1%から8.7%に下がったものの、予想の8.2%を上回りました。13ヶ月ぶりに低い水準になりましたが、目標水準を大きく上回る水準であることに変わりはありません。

    このデータについて、イングランド銀行金融政策委員会のジョナサン・ハスケル委員がコメントを控えていますが、追加利上げの可能性を否定できないとも述べています。もう一人の重要人物であるジェレミー・ハント財務大臣も経済に悪影響を与えるとしても金融引き締め政策への支持を表明しています。Sky News のインタビューでは、"インフレへ対策と景気後退はトレードオフの関係ではありません; 最終的に、持続可能な成長への唯一の道は、インフレ率の抑制です" と述べています。多くのアナリストは、イングランド銀行が実際に1.0%の追加利上げをすれば、イギリス経済は景気後退に陥り、ポンドに大きな圧力がかかると見ています。

    このレビューの筆時点では、GBP/USDは1.2350前後で取引されています。現在のアナリストのコンセンサスはほぼ中立で、強気40%、弱気30%、さらに30%がコメントを控えています。D1 のタイムフレームでのオシレーター系では、100%が売り推奨です (20% が売り過ぎの状況を示しています)。トレンド系では、赤と緑の比率は、65%対35%です。下落した場合、 1.2300-1.2330、1.2275、1.2200、1.2145、1.2075-1.2085、 1.2000-1.2025、1.1960、1.1900-1.1920がサポートになります。上昇すれば、1.2390、1.2480、 1.2510、1.2540、1.2570、1.2610-1.2635、1.2675-1.2700、1.2820、 1.2940でレジスタンスに直面するでしょう。

    来週のイベントについては、5月29日(月)がイギリスとアメリカで祝日のためトレーダーは休日を楽しむことができます。しかし、6月1日(木)は、イギリスの製造業購買担当者指数(PMI)が発表されるため注目です。

USD/JPY: 円が"月へのチケット"を手にする

2023年5月29日‐6月2日のFXと暗号資産の予想1

  • 日本銀行(日銀)の超緩和政策の続行と植田和男総裁の発言により、4月のDXYバスケットでは円が最も安い通貨でした。おそらく、高い確率で、5月も同じでしょう。先週のUSD/JPY は、月旅行を続けています。月曜日の始値は137.93 、金曜日の夕方は140.70を超え、やや低い140.60 圏内で終了しました。

    多くのアナリストによれば、日本銀行のハト派的姿勢が円安を進める可能性があり、USD/JPY の上昇へのレジスタンスが少ないことを示唆しています。これは、米ドルの追加利上げの見通しや国債利回りの新たな上昇で日米の金利差が拡大したことにより、円からドルへの資金流入が促されたことによります。

    USD/JPYの短期的見通しについては、アナリスト意見は次のように分かれています。現在、アナリストの75%は、短期的な円高と下方調整を少なくても期待しています。さらなる上昇を支持しているアナリストは25%に過ぎません。日足チャートでは、米ドルが完全に優勢で、トレンド系、オシレータ系共に100%が上向きです (オシレーター系の25%はこのペアの買われ過ぎの状況を示しています)。 直近のサポートは、139.85に続いて、138.75-139.05、137.50、135.90-136.10、134.85-135.15、134.40、133.60、132.80-133.00、132.00、 131.25、130.50-130.60、129.65です。最も近いレジスタンスは141.40、そして、強気筋には、142.20、143.50、144.90-145.10を突破しなければならなくなるでしょう。 2022 年10月の高値151.95は、そう遠くありません。

    来週は、日本経済に関する重要な経済情報の予定はありません。

暗号資産: ビットコインには引き金が必要

  • ビットコインには10週連続の売り圧力が続いています。しかし、もみ合いながらも、$26,500前後の強いサポート/レジスタンスを維持しています。5月25日(木)は、ドル高が進行する中で弱気筋の圧力があり、BTC/USDは、 $25,860水準まで押し下げられました。同じようなことが5月12日にも見られた時は、 $25,799まで下落しました。しかし、 どちらも跳ね返され、嵐が起きることはありませんでした。

    投資家は、今年の第1四半期のビットコインの好スタートを懐かしんでいます。しかし、その後は、3年ぶり低水準の落ち着いた取引が続いています。一部のアナリストは、現在の価格は売り手と買い手の両方の熱意がわかないと考えています。このような状況では、投資家が資金を使うことにためらってしまいます。分析会社のグラスノードは、長期ホルダー(155日以上)が 1450万BTCを保有しているとのことです。この数字に暗号資産取引所やほかの保有者を加えた場合、その数はさらに大きくなります。市場には引き金が必要であり、おそらく、それは連邦準備制度理事会の金融政策に関する決定、もしくは、米国の債務不履行の発表でしょう。

    シナリオは2つあります: 債務不履行を発表(可能性は引くですが)するか、しないかです。まず、最初のシナリオの場合、債務不履行となれば、投資家のドルに対する信頼は急激に下がり、安全資産としてビットコインが恩恵を受けることになります。 次のシナリオ、債務不履行とならない場合は、暗号資産にとっては、より厳しい状況となります。資金準備の補填のために、米国債が大量に発行され、利回りが上昇、投資家はBTCよりも国債を選好します。

    しかし、債務不履行の発表がある場合は、ステーブルコインに大きな影響が及ぶ可能性があるので注意が必要です。USDTの発行元であるテザーがタイやイスラエルといった国を上回るほどの米国債を大量に保有している一つであることを知っておく必要があります。テザー社のバランスシートにある社債総額は530億ドルであり、準備金の64% に相当します。USDTの流動性を支えているのがこの準備金です。債務不履行となれば、1ステーブルコインの価値は$1ではなく、36 セントにすぎません。あるいは、テザーと共に単に消滅してしまうかもしれません。

    実際、この状況は非常にあやふやです。さらに、業界参加者は、政府の規制圧力が強まることに懸念しています。2023年だけでも、米国証券取引委員会(SEC)が暗号通貨取引所Bittrex、Coinbase、Kraken、Gemini、Genesisに対して提訴していることは注目です。さらに、商品先物取引委員会(CFTC)は、BinanceとそのCEOであるチャンポン・ジャオ氏を提訴しています。ARK Investのアナリストであるヤシン・エルマンジラ氏によると、この状況は新規参入者の意欲を失わせ、既存の企業に悪影響を及ぼし、米国から暗号資産に理解のあるUAE、韓国、オーストラリア、スイスに移るように促しています(Coin Metricsによると、米国でのビットコイン取引量はこの2ヶ月で75%減少しており、3月の一日当たりの取引量が2000万ドルだったものが、5月には400万ドルになっています)。

    マイクロストラテジーのマイケル・セイラーCEOは、積極的な規制介入が競合相手との問題を引き起こすため実際にはビットコインには有益であると考えています。 セイラー氏は、投資家の関心が他のトークンからビットコインに移っていることを指摘しました。同氏によれば、業界への規制が強まれば、BTCの競合相手は自然と離れていくといいます。特に、SECのゲーリー・ゲンスラー委員長が"ビットコイン以外のすべて" が証券取引法に該当と発言したことが注目されました。セイラー氏は、"暗号資産のトークンや暗号資産の規制は、おそらくなくなるでしょう。SECが唯一規制しようとないのは、ビットコインだけです。ビットコインが一番安全で、一番安全な資産なのです"と見解しています。同氏は、ほかの暗号資産からのビットコインの資金流入が続くことを予想しており、既に強気サイクルのはじめに突入していると見ています(2023年4月4日現在、マイクロストラテジーと系列会社は、約140,000 BTCを保有しており、暗号資産の最大保有をしている企業の一つです。同社は、購入に合計41億7,000万ドルを支払っています。つまり、1ビットコイン当たりの平均購入金額は、$29,803です)。

    ブルームバーグのアナリストであるマイク・マクグローン氏は反対の意見で、ビットコインは$7,366のサポートレベルを突破すると予想しています。 この予想は、BTCチャートの52週移動平均線(MA)の下落推移が基になっています。マクグローン氏は2020年の強力なパンプ前と対照的に、この線が上方推移していたと述べています。同氏によれば、マイナストレンドが続いて、暗号資産は困難な状態に直面することになります (少し前の昨年の年末のマクグローン氏の予想は真逆だったことに注目すべきでしょう。当時の同氏の見解では、ビットコインは$100,000に上昇するはずでした)。

    ファンダメンタルでは引き金となるものがないため、アナリストはテクニカル分析により注意を払っています。例えば、 何度も予想どおりとなったDave the Waveとして知られているトレーダーは、現在、ビットコインが対数関数的成長曲線の"買いゾーン" で定着していると考えています。この曲線はビットコインのライフサイクルを通じて、長期的な高値と安値を評価するもので、短期的なボラタリティは考慮していません。現在のマーケットの構造上から、調整からのシグナルの突破は$32,000を上回る上昇になると述べています。つまり、Dave the Waveは、$31,000以下の購入は、未だに、いい取引だといいます。同氏の保守的な予想では、年末までのビットコインの目標価格は$40,000付近です。

    アナリストでトレーダー、そして、コンサルティングプラットフォームEightGlobalの創設者であるマイケル・ファン・デ・ポッペ氏は、$26,280 水準(MA200) のサポートを克服すれば、ビットコインの調整と固定が完了するとツイッターで知らせています。つまり、このようなレベルでのビットコインの購入を勧めています。"過去の期間を見てみると、200-日移動平均線の再試行がビットコインを蓄積するには、ふさわしいタイミングだといいます。この6ヶ月、ビットコインは、長らくこの指標を下回って [BTC]は過小評価されています。来週は、重要です- 素早く再トライして、反発すれば、ビットコインの調整が終了したことを意味します" と同アナリストは説明しています。マイケル・ファン・デ・ポッペ氏は、ビットコインの上昇を確実なものにするには、$27,000を上回って足元を固める必要があると確信しています。

    "十人十色" というよく知られている言葉があります。この場合、"アナリストが違えば、予想も違う" と言い換えることができるでしょう。オンライン出版 BeInCryptoが実施した調査では、暗号資産コミュニティの代表の意見もかなり違っていることが明らかになりました。 例えば、人気ブロガーCryptoKaleo の予想では、ビットコインの部分高値更新の可能性を排除していません。コインの上昇に賭けることを示すシグナルはDaanCryptoで知られるトレーダーからも注目されています。同氏は、 MA200移動平均線からのBTCの反発に注視しています。このような暗号資産の動きはテクニカル分析の観点から買いの勢いが強いことを示しています。

    一方、暗号資産ブロガーのネブラスカン・グーナー氏は、チャートに下落の兆候があると見ています。同氏の予想では、$25,500のビットコインの下落も否定していません。こちらのブロガーによれば、チャートにあるシンメントリカル・トライアングルからコインが抜け出そうとしていることが示されています。通常は楽観的なアナリストであるInmortalから悲観的なビットコイン予想で$22,000水準の目標が示されています。しかし、Inmortal は、ビットコインがすぐにポジションを回復すると確信しています。

    5月26日(金)の夕方、BTC/USD は$26,755で取引されています。 暗号資産市場の時価総額は1兆1230億ドル(1週間前は1兆1260億ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスは、この7日間で比較的変わらず、現在、49 (一週間前は48ポイント) で中立圏内です。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。


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