July 8, 2023

EUR/USD: CPIに大きく左右される

2023年7月10日‐14日のFXと暗号資産の予想1

  • ドルインデックス(DXY)の先週は、7月6日まで安定した上昇でした。つまり、EUR/USD は米ドルに傾き、1.0833の今週の安値をつけました。 6月14日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録公表によるドル高でした。議事録は、委員会メンバーがインフレ圧力のリスクを強調して目標のインフレ水準2.0%を速やかに達成する決意を表明したものでした。また、7月の利上げに加えて、少なくとももう1回の利上げが適切であるとの見解も示され、DXY強気筋の確信を高めました。ジェローム・パウエルFRB議長も6月末に"連邦準備制度理事会のリーダーの大半が年末までに2回以上の利上げを想定している"と述べていました。

    ドルにはすべてが順調のようでした。しかし、先週発表された統計では、かなりバラつきがあり、FRBの揺るぎないタカ派的政策に関する懸念が深まりました。その一方、ADPレポートですが、6月の米国の民間部門の雇用者数の予想は22万8000人 でしたが、実際は、49万7000人の増加で5月の26万7000人を大幅に上回りました。他方では、5月のJOLTS求人指数は982万人で、前月の1,030万人と予想の993万5,000人を下回りました。米国製造業PMIは 期待外れで6月は46.0で2020年5月以来の低水準です。この数字について、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのチーフ・ビジネス・エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は、"米国の製造業の健全性は6月に急激に悪化しており、これが今年後半に経済景気が落ち込むのではないかという懸念を高めている"と述べています。

    こうした懸念は、米中貿易摩擦の再燃でさらに悪化しました。こうした状況で、市場関係者は、FRBが7月の利上げ後に追加利上げの勇気があるのかという疑念を抱いています(市場は長い間、7月27日の5.25%から5.50%への利上げを相場に織り込んできました) 。もしくは、FRBは現在の金融引き締めサイクルの終了を発表するのでしょうか? 7月7日(金)に発表の最新の労働市場データが、この疑問の答えになります。

    DXY強気筋にとっては残念な数字でした。米国経済の冷え込みの可能性の重要なバロメーターである6月の非農業部門雇用者数 (NFP)は20万9000人に減少でした。この数字は、5月の30万6,000人と予想の22万5,000人を下回ったことを示しています。アメリカの米国労働統計局によると、平均時給の伸び率については、前年同月比4.4%、前月比0.4%と前回水準のままです。市場予想どおりとなったのは、失業率だけで前月の3.7% から 3.6% へ減少でした。

    このようなデータの発表後、市場ではドル売りが戻り、今週のEUR/USDは1.0968 のレベルで終わりました。直近の見通しに関しては、このレビュー執筆時の7月7日の夕方、アナリストの35%がこのペアのさらなる上昇、 45%が下落を予想、残り20%が中立の立場です。D1のオシレータ系では、 80% が強気、20%が弱気、トレンド系ではすべてが強気です。直近のサポートは、1.0895-1.0925付近、続いて、1.0835-1.0865、 1.0790-1.0800、1.0740、1.0670、そして、最後に5月31日の安値1.0635になります。強気筋は、1.0975-1.0985付近、その後は、1.1010、1.1045、1.1090-1.1110でレジスタンスに直面するでしょう。

    来週は、連邦準備理事会の今後の金融政策に最も大きな影響を与えそうな米国の消費者インフレ・データがまとめて発表されます。コアを含めた消費者物価指数 (CPI) は、7月12日(水)に発表です。翌日の7月13日(木)は、失業保険の新規給付申請件数や米国の生産者物価指数(PPI)といった重要な指数の発表があります。'最終日'の金曜日は、ミシガン大学の消費者信頼感指数の発表があります。重要な欧州の統計では、ドイツの消費者物価指数(CPI)が火曜日に公表されます。

GBP/USD: 強気トレンドの見通し

  • 先週のポンドは、明らかにGBP/USDにとって有利でした。6月29日時点の英ポンドは、1.2600の水準で取引されていましたが、7月7日までには、既に1.2848の高値となりました。

    ポンドは弱い米国の製造業や労働市場のデータ、そして、FRBのタカ派的立場の継続に対する懸念から買われました。また、6月のイギリスの製造業購買担当者景気指数(PMI)が46.5となり、前回の47.1を下回ったものの市場予想の46.2を上回ったことが支援材料でした。このような背景の中、イングランド銀行(BoE)のさらなる積極的な金融引き締めの可能性に疑いの余地はありません。5月と6月の会合後、イングランド銀行は 25ベーシスポイントと 50 ベーシスポイントの利上げで5.00%にしました。多くのアナリストは、景気後退の恐れがあるにもかかわらず、規制当局が今後の2回の会合で5.50%、さらには6.25%まで引き上げる可能性があると考えています。このような状況で、ポンドはかなり有利となりました。例えば、クレディスイスではGBP/USD に1.3000の上昇見込みがあると分析しています。

    先週のこのペアは、1.2838 で終了でした。"トレンド系は、オシレーター系の短期、中期、長期で強気のままであり、1.2850 (やその上)まで押し上げそうな勢いです " とスコシアバンクのエコノミストは記述しています。理論的には、現在のボラティリティがあれば、GBP/USD は1.3000 まで、わずか数週間、もしくは、数日間で達成する可能性があります。しかし、現在の時点では、このシナリオを支持するアナリストは25%だけです。逆が45%、中立が30%にとどまっています。

    テクニカル分析については、D1のオシレーター系の90%が上向き(4分の1が買われ過ぎ)を示しており、10%が横ばいです。トレンド系の100% は買い推奨です。このペアは下落すれば、1.2755、1.2680-1.2700、1.2590-1.2625、1.2480-1.2510、1.2330-1.2350、1.2275, 1.2200-1.2210がサポートになります。上昇すれば、1.2850、1.2940、1.3000、1.3050 、1.3185-1.321がレジスタンスです。

    来週の注目イベントは、7月10日(月)のイングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁の発言と7月11日(火)のイギリスの労働市場のデータの発表です。

USD/JPY: このペアは飛行中断で弱気筋の勝利

  • アナリストが長く待ち望んでいたことが遂に叶いました: USD/JPY は"月への飛行" を邪魔され、緊急、落下に転じました。正確にはただの落下ではなく、クラッシュです。もちろん、その理由は、弱い米国のマクロ経済データで、日本側ではありません。日本銀行(日銀)の政策は変わらずのままです。日銀の内田真一副総裁は、超緩和金融政策の早期終了やマイナス金利からの脱却の可能性を再び否定しました。

    この数年間、政府と日本銀行が実施してきた金融政策は、CPIが前年比3.1%まで加速したとはいえ、円レートやインフレさえも最優先事項ではないことを明確に示しています。メインは経済指標であり、すべてが順調のようです。7月3日(月)に発表された大手製造業の短観指数は、1→5(予想は3)と見事に上向きになっており、国内の景況感が改善されたことを示しています。

    USD/JPY は、6月30日に145.06 で取引され、7月7日の安値は142.06となりました。つまり、わずか1週間で、円はドルから300ポイントを取り戻したことになります。このような弱気筋の勝利は日本円の売られ過ぎです。フランスの金融コングロマリット、ソシエテ・ジェネラルのストラテジストが指摘しているように、1970年代以降、円がこれほど安くなったことはありません。"今回のような価格のエラーは異常であり、私たちが想像していたより長くなる可能性があります" 、"しかし、これは例外的であり、再び金利変更があれば、すぐに、円は間違いなく上昇するでしょう"と記述しています。 ソシエテ・ジェネラルは、米国債5年利回りが1年後に2.66%まで下落して、USD/JPY は130を下回ると分析しています。日本国債(JGB)利回りが現在のレベルのままなら、125.00まで下落する可能性すらあります。

    前回のレビューでダンスク銀行のエコノミストが6-12ヶ月先のUSD/JPY は130.00 まで下回ると予想していうことをお伝えしました。BNPパリバのストラテジストも同様の予想で、年末までに130.00、2024年までは 123.00を ターゲットにしています。ウェルズ・ファーゴの予測は控えめで年末までは133.00までの下落と分析しています。

    先週のUSD/JPY は142.10で終えました。このレビュー執筆時では、アナリストの 60%が下落は短期的な保ち合いでしかなく、数日後には上昇すると予測しています。残りの40% はさらなる下落予想です。D1 のインジケーターでは、かなりバラつきがあります。オシレーター系では、25%が緑、 15%がグレー、 60%が赤(4分の1は売られ過ぎシグナル)です。トレンド系の比率では、緑と赤が50% 対 50%です。直近のサポートは、1.4140-141.60、続いて、140.45-140.60, 1.3875-1.3905、137.50、135.90-137.05です。直近のレジスタンスは、145.00-145.30、それから、146.85-147.15、148.85の壁をのりこえれば、2022年10月の高値まで151.95は、それほど、遠くありません。

    来週は、日本経済関連の重要な情報の発表予定はありません。

暗号資産: 3つの上昇きっかけ- FRB、半減期、女性

  • 初夏は、暗号資産業過にとっては、かなり熱くなりました。その一方、規制当局は、この業界の締め付けの強化を続けました。他方、機関投資家の関心の高まりも目の当たりにしています。何よりもまず、ブラックロック、インベスコ、フィデリティなどの大手がスポット ビットコイン ETFの申請をしました。

    規制当局の圧力については、1年以上も議論が続いています。このプロセスを温かく歓迎する人もいれば、反発する人もいます。前者は、業界からたちの悪い参加者を追い出し、数兆ドルとは言わないまでも数十億ドルの機関投資家を暗号資産業界に惹きつけると主張しています。後者は、米国証券取引委員会(SEC)の介入で-国家や政府からの独立という暗号資産の大原則が完全に崩れると主張しています。"法執行規制は我々の経済を殺している"とベンチャーキャピタル企業Draper Fisher Jurvetsonの共同創設者であるティム・ドレイパー氏が6月20日に記述しています。 "SECが恐怖の種をまいていることが本来の問題だと思っています... この強制規制は意味がありません"。

    なお、SECは以前にビットコインのスポットETFの申請を却下しています。今回、SECは、新たな申請書は明確で包括的ではないと示しました。しかし、各社は退かず、既に改正版を提出しています。マイクロストラテジーの共同設立者であるマイケル・セイラー氏は、"ビットコインのスポットETFの申請が承認されれば、投資家はビットコインが正規の資産であることを知ることになるでしょう" と説明しています。"SECが、この資産の申請を承認すれば、ユーザーはボタンを押して、30秒で 1000万ドル分のビットコインを購入することができます"。 "これは、機関に認められるまでの重要な過程です。ビットコインが一夜にして500万ドルに上昇するとは思いませんが、これは重要です"とこちらのビリオネアはまとめています。しかし、ヘッジファンド、Eclectica Asset Managementのマネージャのヒュー・ヘンドリー氏によると、ビットコインは中期的には3倍の資産となります。

    ちなみに、上述のティム・ドレイパー氏は以前、ビットコインの価格が2022年末までに$250,000に達すると予測していました。この予想は的中しなかったので、同氏は2023年中旬までと延長しました。現在、ドレイパー氏は、また、予想を調整しました- 同氏によれば、ビットコインは2025年6月末までに100%の確率で目標に到達することになります。また、上昇の誘因の一つは、女性にビットコインが受け入れられることです。

    主婦がビットコインで買い物をすることは、間違いなく大きな要因です。しかし、より"保守的"なアナリストはほかの2つの要因を示しています: 1) FRBの金融政策の緩和と2) 2024年4月に予定されているビットコインの半減期です。これら2つのイベントを見越して、暗号資産市場では供給量の減少が注目され、長期ホルダーのウォレットには記録的な数のビットコインが蓄積されています。:1340万ビットコイン。

    ポイント1について。FRBは6月の会合で政策金利の据え置きを決定しました。 しかし、1回、もしくは、2回の各25 b.p. の引き上げも否定できません。この後、金融引き締めのサイクルが終了して、2023年末 - 2024年の初めにかけて、市場は反転して、利下げがはじまると予想しています。これは、投資家のリスク選好にプラスの影響を及ぼし、デジタル資産を含めて資金流入を促進させるはずです。

    ポイント2について。半減期。このイベントも通常、ビットコイン相場にプラスの影響を与えます。4年ごとの半減期とコイン相場の推移に相関関係があることは長い間、注目されてきました。アナリストは、このトピックについて興味深い放射状の図を示しました。4年で円を描くと、価格は同じセクターでサイクルの頂点と底を形成します。そして、その図では、2023年に底を打った後、ビットコインは1コインあたり100万ドルに向かって、2026年には到達することを示しています。

    CoinDesk の専門家は、今後について市場関係者は、暗号資産取引の際には厳重に注意を払うべき必要があるといいます。実際、2022年の第4半期から法定通貨の流動性は広範囲にわたり、急激に低くなっており、このような状況でのBTC相場の上昇は異例です。BTC相場は、昨年11月に$15,500 の安値から、$31,000の2倍になっています。また、6月15日からだけでも、相場は20%以上に急騰しています。

    ディセントラル・パーク・キャピタルのポートフォリオマネージャー、ルイス・ハーランド氏によると、状況は依然として複雑のままだといいます。同氏は、FRBの純流動性や世界レベルの純流動性など最近、追跡した法定通貨が急激に低くなっていることを確認しました。"これが、楽観的な市場コンセンサスにもかかわらず、私たちがBTCに慎重になっている主な理由です。投資家はこのことを見落としていると思います"とハーランド氏 は付け加えています(世界の純流動性指数は、主要な国々の法定通貨の供給量を考慮したもので、26.5兆ドルまで低下しており、これは2022年11月以来の最低水準です。データ提供は TradingView やDecentral Park Capital)。

    複数の専門家の意見では、現物とデジタルの金の相関関係が弱くなっていることも異例です。ビットコインの価格が急騰する一方で、金の価値は徐々に下がっています。マイニング企業のMarathon Digital のフレッド・ティールCEOは、これはデジタル資産の優先順位の変化だけでなく、ビットコインがより幅広い投資家にとって利用しやすくなっていることを示していると述べています。

    Euro Pacific Capitalの代表、ピター・シフ氏は、このような意見と反対です。誰かが高値で買ってくれることを期待しているだけだといいます。"ビットコインの急落は単に時間の問題です。2021年のピーク時に見られた$70,000前後がそれです。最終的にビットコインは爆発するでしょう" とシフ氏は述べ、暗号資産で資金を失った人々の話が、暗号資産でリッチになった人々の話を覆い隠すようになると付け加えました。

    有名なアナリストのベンジャミン・コーウェン氏によると、法定通貨の流動性の低下は主にビットコインではなくアルトコインに悪影響を与えるといいます。"流動性が枯渇しているので、人々はアルトコイン市場と比較してビットコインに相対的な安全性を見出しています" と同氏は述べています。"しかし、それはビットコインが下落しないというわけではなく、少しだけ、より安全という意味です"。

    コーウェンの予測によると、ビットコインは現在の水準と比較して約14%上昇、2023年の高値は$35,000 です。"短期的には、ビットコインが再び、若干上昇するかどうかの判断は本当に難しいです。私自身は、$35,000をターゲットにしています" とアナリストは述べました。

    Altcoin Sherpaで知られる暗号資産トレーダーは、まず、 $32,000 まで上昇してから、2023年の新高値は$40,000になると分析しています。しかし、$40,000の高値については、あまり自身がありません。 その後は、大幅調整となるはずです。

    テクニカル分析では、BTC/USDの暗号資産ペアがチャートで新たな"強気フラッグ" のパターンを形成している可能性があります。こちらの意見は、Fairlead Strategiesのアナリストによるものです。同社では、"ビットコインは保ち合いの段階で利益の消化をしています。新たな強気フラッグの可能性は、週足の一目均衡表で$31,900付近を突破すると起きるでしょう"と述べています。

    アナリストは、このパターンはポールとフラッグで成り立つと説明しています。ポールが最初の価格上昇を表す一方、フラッグ"が強気感情の一時的枯渇"と売り圧力の欠如からのその後の調整を表しています。テクニカル分析の理論だと、このフラッグの境界線の価格を突破すると、ポールと同じ長さとほぼ同じだけ上昇します。

    ビットコインの場合は、2023年6月15日の安値$24,790から6月23日の$31,388への上昇推移がポールを表しており、その後の保ち合いがフラッグを形成しています。アナリストによると、BTCがこれを突破すれば、ビットコインの次の重要なレジスタンスは$35,900です

    2018年のビットコインの弱気市場の底値を的中させた暗号資産ストラテジストでトレーダーの Bluntzは、今度は、イーサリアムの予想を提供しています。同氏は、イーサリアムが今後数ヶ月の間に急騰する可能性があることを示しています。こちらの暗号資産ストラテジストによれば、2023年の残りの期間にイーサリアムはパラボリックな上昇を遂げて、ビットコインを大きく上回る可能性があります。

    Bluntzは、テクニカル分析、特にエリオット波動理論の経験豊かな実践者とされています。この理論によると、強気の資産は5つの波の上昇を示し、第3波は最も急な上昇を示しています。Bluntzによると、イーサリアムは既に最も急な上昇の第3波の初期段階で、2023年末までに$4,000近づく可能性があります。

    これとは反対でAltcoin Sherpa は逆の予想です。ETH/BTCを見ると、同氏はイーサリアムがビットコインに関連して下落する可能性が高く、0.053 BTCもしくは$1,614の安値を目指すことになると述べています。

    このレビュー執筆時、7月7日現在、BTC/USD は$30,200、 ETH/USD は$1,860で取引されています。暗号資産市場全体の時価総額は、 減少の1兆1,760億ドル(1週間前は1兆1,910億ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスは、強気と中央の境界で、現在は55 ポイント (1週間前は56ポイント)でした。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります


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