December 16, 2023

EUR/USD: FRBはハト派に移行

2023年12月18日-22日のFXと暗号資産の予想1

  • EUR/USD の先行きは、先週の二つのイベントによって決まりました: 米連邦準備制度理事会のFOMC (連邦公開市場委員会) の会合と翌日の欧州中央銀行(ECB)の会合です。これにより、11月29日以来のユーロ高で1.1000を超えました。

    米連邦準備制度理事会は政策金利を5.5%に据え置く一方で議長は金融緩和を検討していることを認めました。FOMCの当面の見通しは市場予想を大幅に下回りました。金利は2024年末までに少なくとも3回引き下げられ、4.6%(予想は5.1%)、2025年末までにさらに4回引き下げて借入コストを3.6%(予想は3.9%)にする計画です。3年間の見通しでは、2.9%に引き下げ後、2027年には2.0-2.25%となる一方で、インフレ率は目標の2.0%に安定するとのことです。この会合の後、市場は早ければ3月にFRBが金融緩和に踏み切るのではないかと予想しています。 FedWatch ツールによると、この確率は現在70%です。

    より大幅な利下げ予想に加え、米国債利回りの下落がドルへのさらなる圧力となり、これも米国の金融政策の方向転換が間近に迫っていることを示しています。ハト派的意向を裏付けるもう一つの材料が株式市場の反応です。低金利は株式にとっては朗報です。コストを抑え資金を調達につながり、経済緩和が国内需要の刺激となります。この結果、先週はS&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックの株価指数が再び急騰しました。

    ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁が以前シンクロナイズドスイミングしていたことは知られています。今回、ラガルド総裁はFRBと歩調を合わせました: 欧州中央銀行も前回の4.50%で金利据え置きです。しかし、ユーロ圏のGDP成長率は従来予想に対して2023年は0.7%から0.6%、2024年は1.0%から0.8%になると予想しています。インフレ率は2024年に5.4%が予想されていますが、2024年に2.7%、2025年ではほぼ目標の2.1%に達すると予想されています(米国より2年早い)。

    FRB会合に続いたECB総裁の発言では 利下げの開始時期については言及していませんでした。また、欧州中央銀行の目標はリセッションではなくインフレ抑制のため、借入コストは必要な限りピークのままであるということが述べられていました。こうしたスタンスがユーロに有利となり、ドルに対して上昇しました。

    FRBのハト派的言い回しとECBの緩やかなタカ派的スタンスを考慮すると、EUR/USD にはさらなる上昇の余地があります。注目なのがFRBの方針転換に驚いたのが市場だけでなないことです。フィナンシャル・タイムズ紙のインサイダーレポートによると、FOMC会合後のジェローム・パウエル議長の発言はECBを驚かせました。これを受けて、ラガルド総裁の発言中に、アメリカの庭にいくつかの石を投げこみました。

    現在のところ、まずFRBが金融緩和するように思われています。市場が逆のシグナルを受け取らなければ、ドルは押されたままになるでしょう。しかし、2024年の現実は2023年12月の発言と必ずしも一致しないかもしれないことを考慮する必要があります。客観的には、ECB が金融緩和をする理由が多くあります。欧州経済は高い金利水準の対応が不十分であり、米国経済よりも弱く、GDP は既に下方修正され、欧州のインフレ率は米国よりもかなり速いスピードで低下しています。これらを踏まえ、フィデリティ・インターナショナル、JPモルガン、HSBCのエコノミストは、すべてが変わる可能性を否定しておらず、ECBやイングランド銀行などが最初に規制緩和に踏み切る可能性があることを否定していません。しかし、そのシグナルは今日、明日ではなく、来年になるでしょう。

    先週については、12月15日に発表された購買担当者景気指数(PMI)が欧州では期待外れであり、米国ではまちまちであったことから、EUR/USD の終値は1.0894でした。

    MUFG 銀行のエコノミストによると、EUR/USD の急騰は不安定です。" EUR/USDの上昇の持続にはヨーロッパや世界情勢が不利のように見られる" と記述されています。"クリスマスから新年にかけての数週間で原動力となるファンダメンタル要因は決して当てにならないが、この上昇かこの間も続くようであれば来年の第1四半期に向け、反転が予想される"。

    現在、アナリストの直近の意見は次のとおり: 40% がドル高、30%がユーロ高、 30%が中立。 D1のトレンド系では、100% がユーロ支持でこのペアの上昇です。オシレーター系では、60%が上昇、30%が下落、10%が横ばいです。直近のサポートは、1.0800-1.0830付近、続いて、1.0770、1.0725-1.0740、1.0620-1.0640、1.0500-1.0520、 1.0450、1.0375、1.0200-1.0255、1.0130、1.0000です。強気筋は 1.0925付近、1.0965-1.0985、1.1020、1.1070-1.1110、1.1150、1.1230-1.1275、1.1350、1.1475でレジスタンスに直面するでしょう。

    来週はヨーロッパもアメリカも一年の総まとめとクリスマスを控えています。 注目の経済イベントには、12月19日(火)の欧州のインフレデータ (CPI) の発表があります。12月20日(水)は 米国の消費者信頼感指数が発表されます。翌日は、米国の第3四半期GDP や失業保険新規申請件数が明らかになります。週の終わりの12月22日(金)は米国の消費者市場に関する一連のデータが公表されます。

GBP/USD: イングランド銀行はハト派的移行を控える

  • FRB と ECB と同様に、FRB とイングランド銀行 (BoE) の状況も完全に同じです。上述の説明とここでも同じです。イングランド銀行も会合で5.25%の金利据え置きを決定しました。また、ECB同様、2024年ハト派移行への見通しについての発言はありませんでした。イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、イングランド銀行には進む道がまだあり、金融政策委員会のメンバー9人のうち3人が利上げに賛成したとまで述べました。.

    イギリスの経済指標はさまざまです。統計では、インフレ調整後の実質賃金の伸びは毎年伸び続けています。

    しかし、経済成長率は先月0.2%増に続いて0.1%増の予測に対して実際は0.3%減でした。また、10月の鉱工業生産は0.8%減で、年間ベースでは1.5%から0.4%の縮小で市場予想の1.1%を大幅に下回りました。12月15日(金)に発表されたデータは12月のサービス部門購買担当者景気指数が大幅に上向いたことを示しました。 PMI 指数は52.7で予想の51.0 を超え、この5ヶ月で最も高い数値でした。しかし、その一方で11月の製造部門購買担当者景気指数は47.5の上昇予想にもかかわらず、47.2から46.4へ落ち込みました。

    同時に"インフレの魔人がボトルからまだ出ない"。このことから、イングランド銀行がインフレの上昇を抑えている厳格な政策を放棄する見込みはありません。アナリストたちは、これについては同意です。唯一の疑問は、最終的に利下げがいつになるかということだけです。

    GBP/USD の先週の終値は1.2681でした。INGのエコノミストたちによれば、1.2820-1.2850付近がGBP/USDの強いレジスタンスです。もし、これを突破すれば、強気筋への大きなクリスマスプレゼントになる1.3000の高値の可能性もあります。しかし、日本の野村信託銀行では、このペアの上昇見通しについては否定的で、2024年の第1四半期と第2四半期も1.2700 から1.2800付近での取引になるとした見方です。

    この予想執筆時のアナリスト中央値予想はさまざまです: 25% がこのペアの上昇、さらに25% が下落、50%が予想を控えています。 D1のトレンド系では、上述の通貨ペアと同様、100%が上昇です。オシレーター系では 65% が上昇、30%が下落、残り 15% が中立です。この通貨ペアが下落すれば、1.2600-1.2625、1.2545-1.2575、1.2500-1.2515、1.2450、1.2370、1.2330、1.2210、1.2070-1.2085、1.2035がサポートになります。上昇すれば、1.2710-1.2535、そして、1.2790-1.2820、1.2940、1.3000、 1.3140がレジスタンスとなるでしょう。

    来週の経済指標カレンダーでは、12月20日(水)のイギリスの消費者物価指数(CPI)に注目が集まります。12月22日(金)はクリスマス準備のため取引時間が短くなりますが、朝には小売売上高やGDPなどの重要な経済マクロ統計の発表があります。

USD/JPY: 2024年に予定されている円高

  • 11月13日のUSD/JPY は151.90 の高値でした。しかし、わずか5週間で日本円はドルから1000 ポイント以上を取り戻しました。12月7日(木)に市場全体で円高が進み、ドルは225ポイント前後下げました。 この時の安値は141.62でした。先週は、FRBやドルインデックスにより、142.14で終了しました。

    円高の大きな理由は、日本銀行(日銀)が遂にマイナス金利を放棄、そして、これが予想よりも早まるといった予想が大きくなっているからです。噂によると、イールドカーブ・コントロール政策を止めるように地方銀行からの圧力がかかっているということです。この噂を裏付けるように、日銀は市場関係者に向けた超金融緩和政策からの脱却による影響などの特別な調査を12月の上旬に実施しました。

    また、最近のFRBとECBの会合の結果、ドルやユーロの金利は頭打ちとなり、今後は低下していくとの市場の見方が強まったことも円高要因となりました。この乖離で投資家はキャリートレード戦略を止め、日本国債と米国やユーロ圏の国債とのイールド・スプレッドを縮小するという予測になります。このような展開で資金は円に流れるはずです。

    日本銀行(日銀) の年内最後の金融政策決定会合は12月19日(火)です。しかし、今回の会合では金融政策要因を変更する予定はないと見られます。日本のMUFG銀行のエコノミストは、日銀が1月の会合でYCC(イールドカーブ・コントロール)とNIRP(マイナス金利政策)を終了すると予想しています。これは一部が既に相場に織り込まれていますが、日本銀行の12月会合の調子では2024年の引き締め策への期待がさらに高まる可能性があります。MUFG は来年のG10で円が一番上昇する見込みがあると見ています。"世界的なインフレショックが方向転換しつつあり、JPY によって最も重要な意味をもつことになる"と同行のストラテジストは述べています。

    直近については30%のアナリストが円高、10%がドル高予想で、大半(60%) が中立の立場です。D1のトレンド系では、赤がやはり圧倒的に多く、100%です。オシレーター系でも同じく、 100% が赤ですが、25%は売られ過ぎの状況です。直近のサポートは、141.35-141.60圏内、これに続いて、140.60-140.90、138.75-139.05、137.25-137.50、135.90、134.35、131.25です。レジスタンスは、143.75-144.05、145.30、146.55-146.90、147.65-147.85、148.40、149.20, 149.80-150.00、150.80、151.60、 151.90-152.15です。

    12月19日の日銀の金融政策決定会合とその後の総裁の記者会見以外は、日本経済に関する重要な予定はありません。

暗号資産: ビットコインETFは、バイナンスに取って代わるのか?

  • 12月8日(金)までのビットコインは$44,694の高値でした。前回の $40,000以上の取引は2022年4月でした。そのわずか2日後、12月11日の朝、$40,145台のビットコインが投資家たちの大きな失望感となりました。

    この急落は5分も続きませんでした。これには、いくつか理由があります。一つは、12月8日の米国の労働市場のデータが好調であったこと。もう一つ、考えられるのが、不安定な反応、もしくは、取引量のテクニカルエラーが取引ボットやトレーダーであった可能性があり、それが、先物市場でのストップ安を招いたというものです。コイングラスによれば、24 時間で8550万ドルのビットコインを含む 4 億ドル以上のロングポジションが清算されました。

    私たちの分析による最も現実的な説明は次のとおり:8月中旬以降、ビットコインは約85%、年初来では160%以上も上昇しました。年末を控え、一部の大手投資家が利確をしたように見られます。注目したいのは、この2日前にFibFilb として知られるDecenTraderの代表が警告していたことです: "今年はかなり上昇したので、調整が予想される [...] 長い間、待ち遠しかった" と12月9日に述べていました。

    仮想通貨取引所バイナンスが直面している問題が、43億ドルの罰金でも解決されなかったというニュースが、ネガティブな感情が増したのかもしれません。米国証券取引委員会(SEC)は、証券違法取引などの違反で取引所を告発中です。

    米司法省当局は、取引所の運営について徹底的に調査して法的に立件するつもりです。同取引所は、司法省、金融犯罪取締ネットワーク、その他すべての金融規制当局および法執行機関の代表者に対して、トレーダーだけでなく、同社の従業員、代理人、仲介者、コンサルタント、パートナー、請負業者に関する情報を含むすべての文書および記録への継続的なアクセスを許可するよう強制されます。

    先週、元SECの責任者であるジョン・リード・スターク氏は、バイナンス崩壊の可能性について、米国政府の取引所に対する公式な要求を参照して意見を公表しました。この要求はタイプスクリプトだけでも13ページあり、これまで企業に適用していなかったものまであります。スターク氏はこの状況について皮肉を込めて"金融大腸内視鏡検査"と呼びました。

    注目すべきは、2023年のバイナンスへの攻撃によって、スポット市場におけるバイナンスのシェアが55%から32%に低下したことです。デリバティブ市場でのシェアは47.7%で、2020年10月以降で最悪のパフォーマンスを示しています。

    JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEO は規制圧力の激化について自身が米国政府なら、"詐欺やテロリストを支援するデジタル通貨をすべて禁止するだろう" と述べています。しかし、米国当局はそのような措置をしていません。なぜでしょう?

    イタリアの思想家、政治家、哲学者であるニッコロ・マキャヴェッリの名言: "群衆に勝てないなら、導きなさい"。 この名言を残したのは約500年前ですが、現在でも通じるものがあります。例えば、あらゆる禁止事項にもかかわらず、中国人は暗号資産業界で重要かつ積極的な役割を果たし続けています。米国は、デジタル資産を禁止、インターネットを遮断、コンピューターやスマートフォンを没収するよりも、このプロセスを主導してコントロールする方が簡単だと考えいるようです。つまり、アナリストはビットコインETFの上場というアイデアが生まれたと専門家は見ているようです。このようなファンドは、暗号資産投資家を監視、取引を調査、税金を徴収するだけでなく、取引の合法性を判断することもできます。つまり、当局の論理は非常に明確です。そして、この稀なケースでは、多くの小口投資家が称賛しており、BTC-ETFや規制圧力による自分たちの資産が増えることを期待しています。

    2月11日の出来事に戻ると、トレーダー、アナリスト、そしてベンチャー企業Eightの創設者であるマイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏は、コミュニティに対して "心配しないように "と呼びかけました。特に流動性が低いアルトコイン市場では大きな調整があると説明しました。ポッペ氏は、今回の事態を踏まえ、ビットコインの価格推移について予測しました。同氏の分析だと、より長時間のタイムフレームでの重要なサポート圏内は現在、$36,500-38,000 です。"ビットコインの勢いは徐々に小さくなっていく、次の四半期はイーサリアムに簡単に主導権が移るだろう" と付け加えていました。

    暗号資産専門家であるウィリアム・クレメンテ氏も、ビットコイン価格の下落は避けられないと心配していません。同氏の見解だと、このような調整はレバレッジを利用している貪欲なトレーダーがロングポジションを清算したためであり、次の強気トレンドのスタート固めです。

    EQIバンクのディレクター、イーライ・タラント氏もヴァン・デ・ポッペ氏の意見と同じで、ビットコインの下落を予想しています。"トレーダーが利益を確定してETF申請の承認を待つ中、ビットコインの価格は、バタフライ効果[システム内の小さな変化が、全く別の場所であっても、予測不可能な大きな結果をもたらす現象の影響]により変化が続くだろう。$39,000 へのBTCの下落の可能性は明らかである" とタラント氏は述べています。

    確かに、EQI バンクのディレクターのとおりで、ビットコインは先週のFRB会合前後のBTC/USD でもわかるように"不安定な変動" をしています。その結果、ドル安に助けられ、このペアは再び上昇して、12月13日(水)は$43,440 の高値となりました。

    このレビュー執筆時の12月15日の晩では、$42,200前後で取引されています。暗号資産市場の時価総額は1兆6100億ドルで、1週間前の1兆6400億ドルから減少しました。 Crypto Fear & Greedインデックスは、72から70 ポイントで強欲圏内のままです。

    当面のビットコインについて、巨大投資銀行のゴールドマン・サックスのアナリストが短期的にビットコイン相場は、上昇を続けるとレポートで示唆しています。CryptoQuant のアナリストは、ビットコインが2024年の初めに$50,000 を突破する可能性を示唆しています。この予測は、BTCホルダーの取引分析が基礎となっており、取引量、市場時価総額、メトカーフの法則での変動も考慮されています。"ビットコインは$50,000-$53,000 圏内がターゲットだろう" とアナリストは述べています。

    しかし、CryptoQuant は現在、"過熱気味の強気局面" に近づいており、いままでを見ても横ばいや休止を伴っています。"イン・ザ・マネー" コイン供給量が88%を超えていることをアナリストは強調しています。これは、売り圧力の可能性を示しており、つまり、短期的な調整の可能性があります。CryptoQuant の観測によると、このような大きな未実現利益は、"歴史的に直近高値と一致"しています。

    最後に、ビットコインが$0.20で取引されていた時代を振り返ってみましょう。13年前の2010年12月12日にサトシ・ナカモトというペンネームで知られるビットコインの生みの親が公から姿を消す前にフォーラムに最後の投稿をしました。これが謎めいた人物の最後のメッセージになることをほのめかしていませんでした。メッセージは、サービス拒否 (DoS) 管理要素のアップデートとコードの説明のメッセージでした。一部の専門家は開発者たちの内部紛争や意見の相違、プロジェクトに対する過度な支配や一方的な意思決定に対する批判からブロックチェーンの開発者は去ることを予定していたと考えています。

    それにもかかわらず、 BitcoinTalk フォーラムのユーザーの1人は、暗号資産の開発者の最後の投稿を振り返りながら、"サトシの分散化への貢献と金融独裁に対する戦いは、単なる技術的な驚異以上のものだ。それは経済的自由と主権を求める運動である [...] 姿を見せなくなったのは、単に自己防衛だけでなく、人生のすべてが名声を中心に回っているわけではないということを思い出させてくれる"と述べています。

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります


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